Dancemania SPEEDの歴史15~SPEED G~
Dancemania SPEED SUPER BEST "SPEED G"
SPEEDリスナーのための聖典
2003年3月21日発売
BEST 2001から数えて3年ぶりとなるベスト盤が今作SPEED Gです。立ち位置で見れば中期ベストですが、シリーズ全曲からのリスナーリクエストというテイを取っていたため、初期の曲もいくつか収録されました。新規収録は5曲あり、全SPEEDシリーズ通しても最多タイ35曲の超ボリュームアルバムです。
実を言うと、ほぼ手放しで絶賛されているBEST 2001と比べると、今作はある程度不満の声もあったりします。
「SPEED中期ベストとして6以降の曲だけで構成して欲しかった」
「あのアーティストならあっちの曲が収録されて欲しかった」
などがそういった意見ですが、言ってみればSPEEDリスナー受けの良い曲が多い中期ならではの贅沢な悩みに近いので、そういった不満含め、SPEEDリスナーにとって聖典と呼べるレベルの名盤ではないかと。
……ただ、予算削減の一環と思われるライナーノーツ使い回しは普通の不満点です。
今回も曲順はDiscogsで調べてもらうとして、こちらではリスナーリクエスト順に書き出します。まずは1位から10位まで。
1位:Complicated(SPEED 10)
2位:B4U(B4 ZA BEAT Mix)(SPEED 7)
3位:SENORITA(Speedy Mix)(SPEED 9)
4位:CANDY☆(Planet Mix)(10)
5位:SEPTEMBER(10)
6位:Heaven Is A Place On Earth(10)
7位:I Do I Do I Do(KCP Remix)(10)
8位:Queen Of Love(7)
9位:Survivor(7)
10位:IRRESISTIBLEMENT(9)
新規リミックス枠からは3曲がランクインしていますが、2つはNAOKI曲なので、純粋な「Dancemania曲」となるとI Do I Do I Doのみ。この時点で前作BEST 2001とは大分傾向が異なります。
その代わり上位に名を連ねるのはSAIFAM、Runawayの楽曲。しかもComplicatedやSEPTEMBERのような有名曲カバーだけでなく、オリジナル曲SENORITAや(原曲知名度的にほぼオリジナルと言っていい)Queen Of Loveなども入り、前作と比べよりSPEEDヘビーリスナーの意向が反映されたベスト盤であることがわかります。
(ちなみにQueen Of Loveは何故かSPEED 7よりキックが主張しすぎており、このアレンジに関しては賛否両論の声が)
また面白いことに、前作BEST 2001と今作SPEED Gのベスト5にはそれぞれ共通点があります。
1位:Rhythm And Police/Complicated(Runaway)
2位:DYNAMITE RAVE/B4U(NAOKI)
3位:CAPTAIN JACK/SENORITA(オリジナル曲のリミックス)
4位:Eyes On Me/CANDY☆(ゲームに収録された曲)
5位:Boom Boom Dollar/SEPTEMBER(SAIFAM)
……まあ3位4位あたりは苦しい部分もあるものの、とりあえずダブルで1位を取ったRunawayの凄さを再認識しておきましょう。
11位:I Want It That Way(SPEED 6)
12位:STILL IN MY HEART(Momo Mix)(SPEED 8)
13位:IKA UKA(E=MC2 Mix)(10)
14位:Vortex(7)
15位:CARTOON HEROES(Speedy Mix)(9)
16位:Max Don't Have Sex With Your Ex(Grandale Mix)(9)
17位:Last Nite Kambel Saved My Life(8)
18位:Butterfly(Upswing Mix)(SPEED 2)
19位:Happiness(Speed Mix)(8)
20位:SKY HIGH(Speed Remix)(8)
11位から20位まで。ここでようやくSPEED 6、8の曲もランクインしました。
そしてそれと同時にまさかのButterflyがランクイン。
Butterfly収録が判明した当時、ファンサイトでは「聴き飽きたし今更……」という意見もありました。ただやはりこの曲があるとライトリスナーに対する訴求力が段違いで、文句を言う人も嫌いな訳では全くないでしょうし、改めてこの曲の人気っぷりに敬服するばかりです。
またハピコア系統の楽曲からVortexとLast Nite Kambel Saved My Lifeがランクイン。Vortexはリミックスやカバーやセルフアレンジではない純正オリジナル楽曲の最高位を記録し、トランスコアの伝道師たる実績に新たな一ページを刻みました。
21位:Smile(Speedy Mix)(9)
22位:There You'll Be(8)
23位:BLUE FEVER(6)
24位:CAPTAIN JACK(Grandale Mix)(2)
25位:Let The Beat Control Your Body(B4 ZA BEAT Mix)(7)
26位:Boom Boom Dollar(K.O.G G3 Mix)(SPEED 3)
27位:Love,Life & Happiness(Ham Mix)(SPEED 5)
28位:LUPIN THE 3RD '78(Speed K Mix)(6)
29位:Speed Over Beethoven(9)
30位:Rise To The Occasion(8)
21位から30位まで。ここでは先程のButterfly同様、CAPTAIN JACKとBoom Boom Dollarが再ランクイン。
そしてまさかのLove,Life & Happinessが初ランクイン。
当時からLove,Life & HappinessがBEST 2001に収録されなかったことを惜しむ声は多数有りましたし、HAPPY RAVERSの影響もあってか後追いファンをどんどんと増やしてはいました。しかし人気の高い中期曲がひしめく中、SPEED 6以前の曲から今回初収録となるのは正に快挙。
そして同じく快挙と言えば、30位にランクインしたRise To The Occasion。Jenny Romのような人気アーティストではなく(そもそもこの曲でしか使われていない名義で)、Happinessのようにキャッチーな曲調でもなく、Vortexのようにシーンを牽引した実績もない。そんな完全オリジナル曲が、30位とはいえ並み居る強豪を抑えランクインするのですから、快挙としか言い様がありません。
リスナーリクエスト上位30曲は以上のランナップに。中期は各リスナーによって好みの差も激しいため、特定の曲の選出漏れを嘆く声もBEST 2001以上に大きいものでした。ただしLove,Life & Happiness筆頭に「あの曲が入ってくれて嬉しい!」という喜びの声ももちろんありました。
30曲をカテゴリ別で表すと
Dancemania曲:7曲
DDR曲:3曲
SAIFAM:11曲
Runaway:4曲
LED:1曲
ハピコア:4曲
SAIFAMがベスト10内だけでも5曲ランクインし、新規収録曲も合わせて最終的に13曲収録という圧巻の人気っぷりを見せつけます。身も蓋もない言い方をすると、このCDの約1/3はSAIFAMです。
Jenny Romのようなオリジナル曲、DJ SPEEDO名義のようなカバー曲、どちらとも高クオリティで支持層が広く、それが今回の結果に繋がったものと思われます。BEST 2001で1曲しか入らなかったレーベルとは思えない大躍進を見せました。
Runawayは4曲ランクインですが、それぞれ1位・9位・11位・30位という少数精鋭。カバー曲だけでなくオリジナル曲もランクインさせ、前作から変わらぬ人気と実力を証明してみせました。
LEDは残念ながら1曲のみ、しかも29位とギリギリにランクイン。LEDのユーロビートはキンキンしたシンセが特徴的で、受け付けない人や聴き飽きやすい人もいるため、そこまで票が伸びなかったものと思われます。
前作では17曲もランクインしたDancemaniaリミックスは今作では7曲、しかも内3曲は再収録のため、中期からは実質4曲のみのランクインでした。
SPEED 6~10の新規リミックスの人気が無い……と言うよりかは、単純にDancemania曲以上にJenny Romや有名洋楽カバーにリスナーの支持が集まったのでしょう。そういう意味では、SPEEDシリーズそのものが「Dancemaniaの一シリーズ」として以上の独自性で成長していることがわかるリスナーリクエストでもありました。
ハピコア楽曲もあまり多くない4曲収録ですが、こちらはRAVERSシリーズ(特にBEST OF HARDCORE)である程度フォロー出来ていたため、不満の声は多くなかったと記憶しています。……というより、当時のファンサイトではLove,Life & Happiness奇跡の収録によって、他のハピコアの話題が全て吹き飛んでいた記憶しかありません。
シリーズ別で見ると
SPEED 5以前:4曲(新規1曲)
SPEED 6:3曲
SPEED 7:5曲
SPEED 8:6曲
SPEED 9:6曲
SPEDD 10:6曲
「あっさり」な曲が多く熱烈なファンの少なかったSPEED 6が、SPEED 5以前の曲収録によって割を食う形に。しかしとりあえずは中期シリーズ全体からバランスよく選出されています。
SPEED 10の6曲はそれぞれ1位・4位・5位・6位・7位・13位という信じられないレベルのエリート集団。この下にGIVE IT UP、L.O.V.E.、DROPTOP、Joy To The Worldあたりも入っていて何らおかしくないくらい人気がありましたが、こうなると正直、偏りを防ぐために曲数調整したと言われても信じてしまいます(当然憶測なので事実ではありません)。
SPEED 6こそ少なめですが、7~9はそれぞれ「濃厚」「華」「意外性」のある各アルバムを代表する曲が選ばれ、SPEED 5以前の人気曲も含め、ベスト盤として「集大成」と呼ぶに相応しい曲目になりました。
最後に新規収録の5曲を紹介。
03.Mr.Dabada(Skyrock Speed Mix) / Carlos Jean
28.CENTERFOLD(Speed Mix) / CAPTAIN JACK
30.Moonlight Shadow(KCP Remix) / Missing Heart
31.HAPPY TOYBOYS(Speed Mix) / SPEEDMASTER feat. Jenny Rom
35.Asereje(Speed Mix) / DJ SPEEDO feat.WILDSIDE
Mr.DabadaはスペインのDJカルロス・ジーンによる、当時話題となっていた中毒性のあるファンク曲。「ベスト盤にその時話題の曲を」という流れは前作と同じですが、このリミックスがとにかく曲者。
VenturaメンバーでもあったQuiqmanこと柴田晃一氏の手腕による素材の味を活かしたアレンジで、「ハイスピードファンクダンス」な唯一無二の曲調に。サビのダバダバも高速ラップというか高速スキャットと化し、原曲の持つ中毒性をより強化してSPEEDリスナーにお届けしました。
Mr.Dabada(DDRに収録されたGroove Wonder Remix)
堕ちた天使は誰しもCM等で一度は聴いたことがある一曲。CAPTAIN JACK両名のボーカルがこの上なくハマる適材適所なカバーとベスト盤らしいノれるアレンジで、新規アレンジ目当てに今作を買うリスナーにも損をさせません。
CENTERFOLD(CAPTAIN JACK版原曲)
そしてMoonlight ShadowとHAPPY TOYBOYSについてですが……実は当時ファンサイトに足繁く通っていた(筆者含む)リスナーにとっては待望の2曲でもありました。
当時のファンサイトユーザーの中に、CDショップへいち早く知らされる「仮トラックリスト」を定期的に投稿していた方がおり、その仮リストによれば、Moonlight Shadowは実はSPEED 9に収録が予定されていました。どういった事情なのかSPEED 9にはMissing Heartの別曲が収録され、仮情報からの変更でやきもきしていたリスナーも居た中、今作で念願のリミックス収録が実現したわけです。
Moonlight Shadow(Missing Heart版原曲)
HAPPY TOYBOYSも、同じく当時のファンサイトに「未発表のJenny Rom曲がある」と音源を提供したリスナーがいたため、ある程度ディープなファンサイトユーザーには既に知れ渡っている曲でした。
……が、ひょっとしたらそれを踏まえた上で、東芝EMIかSAIFAM側かがアクションを起こしたのかもしれません。交響曲第9をモチーフとした原曲が、今回の収録でウィリアムテルをモチーフとした曲に変貌していたのです。
熱心なリスナーである程「知ってたのと違う!?」と驚愕するまさかの仕掛け。初めて聴く人にも親しみやすいウィリアムテル+Jenny Romのコンビネーションは、ヘビーリスナーであればより驚きより楽しめた一曲となり、ベスト盤の話題を更に盛り上げてくれました。
HAPPY TOYBOYS(第9版Speed Mix)
ラストナンバーで新規収録曲となったのは、ラス・ケチャップのヒット曲をSAIFAMがアレンジしたAsereje。疾走感のあるカッコいいユーロアレンジで、ベスト盤の締めを華麗に飾ってくれています。
Asereje(原曲)
以上の35曲が全て入った中期ベストSPEED G。紹介していませんでしたが、今作ではI Do I Do I Do、Smile、CANDY☆など、既存曲でも本編シリーズには無かった展開や新しいアレンジが聴けます。
前述のHAPPY TOYBOYSの件も含めSPEEDリスナーへのサプライズのような構成が随所に見られ、ひょっとすればKCPはリスナーに対して恩返しの意も込めて制作してくれていたのかもしれません。
これ以降、SPEEDシリーズは後期に入ります。後期は後期で良さも楽しみもたくさんありますが、やはりSPEEDシリーズのピークとなるとSPEED Gまでの中期であると考えるリスナーは多いです。
Dancemaniaリミックスが少なくSPEED独自の人気曲を多数味わえるという意味でも、今作はBEST 2001以上に「Dancemania "SPEED"の真髄」を見せてくれることでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?