Dancemania SPEEDの歴史2~SPEED 1~
Dancemania SPEED 1
オールドスクール乱れ打ち
1998年9月22日発売
記念すべきシリーズ1作目……なのですが、
どうしてもSPEED 2以降と比べ、地味と言わざるを得ません。
・専属リミキサーKCPのリミックスが若干期待外れ気味
・ハピコアかDancemania曲リミックスかの2択で曲調の偏りが激しい
・一部の大アンセムを除き、ハピコア各曲の差別化が難しい
主にこの三つの理由で、全体通してどうにも印象に残りにくいアルバムになってしまっています。
とは言え、区別がつきにくいハピコア楽曲たちももちろん十分に楽しめるものばかりですし、SPEEDシリーズがDancemaniaを代表するシリーズになった理由の一つは、間違いなくこの1作目がある程度の人気を獲得できたことが一因のはずです。
HAPPY SPEEDまでのSPEEDシリーズアルバムをランク付けしようとすると、恐らく多くのSPEEDリスナーから下位にされてしまう今作ではありますが、シリーズの始祖として、ハードコア史に残した影響力が計り知れない1枚であることは間違いないでしょう。
(手探り状態の1作目が人気で後作に劣ってしまうのはドラクエやFFも一緒……と思えば、むしろ誇らしいことのような気もします)
01.TUBTHUMPING(KCP Remix) / Chumbawamba
02.SAMBA DE JANEIRO(KCP Remix) / BELLINI
05.TOGETHER & FOREVER(KCP Remix) / CAPTAIN JACK
08.DUB-I-DUB(KCP Remix) / Me & My
11.WILLY USE A BILLY...BOY(KCP Remix) / E-ROTIC
今作用に新規でリミックスされたDancemania曲たち。
メインシリーズBEST盤の「Dancemania EXTRA」に原曲5つ全て収録されており、メインシリーズ常連のE-ROTICやCAPTAIN JACK、前述のEXTRAでリスナーリクエスト1位を獲得したSAMBA DE JANEIRO、CMやDDRでも聞き馴染みのあったDUB-I-DUBにTUBTHUMPINGと、リミックス枠としては堅実なラインナップという感じです。
ただ、原曲の強烈なメロディーラインのおかげで有無を言わせぬ勢いを生み出したSAMBA DE JANEIRO以外は、今聴くと前述の「期待外れ気味」なリミックスに感じてしまうかもしれません。
SAMBA DE JANEIRO(原曲)
特にミッキーマウスマーチという大ネタを使っているTOGETHER & FOREVERと、原曲がガッツリユーロビートなBILLY BOYは、今作のあっさり目なリミックスとの相性があまり良くありません。
Grandale(K.O.G)やB4 ZA BEATなど派手めなリミキサーとの相性が特に良さそうな2曲だけに、リスナーも制作側もSPEED慣れしていないここでリミックスしてしまったのが惜しまれます。
TOGETHER & FOREVER、WILLY USE A BILLY...BOY(原曲)
……とは言うものの、期待値の落差が大きい人が多いのではないかというだけで、聴き込めばこの「あっさり感」もスルメのように良さとして染み出してくる……かもしれません。
筆者もDUB-I-DUBリミックスは最初そこまで好きではなかったのですが、原曲のキャッチーなメロディとリミックスの無機質なシンセリフとの組み合わせが、今では結構好きだったりします。
DUB-I-DUB(原曲)
03.Time After Time / Vinyl Groover
07.Shooting Star / Bang!
18.Eye Opener / Brisk & Trixxy
22.Come And Follow Me / DJ Stompy
今作のハッピーハードコア界における大アンセムたち。
「いや他にもアンセムあるだろうがボケぇ!」
と生粋のハードコア星人の皆様からお叱りを受けそうですが、(筆者含め当時のDDRキッズの多くがそうだったであろう)Dancemania SPEEDや音楽ゲームでハッピーハードコアの造詣を深めた人にとっても「この曲は知っておいて欲しい」という意味でマストな4曲です。
「有名曲の高速アレンジ」というハピコアの基本を抑えたTime After Time
純粋に曲としての完成度が高い、哀愁感溢れるボーカル曲Shooting Star
苛烈で印象的なシンセリフが際立つ、当時新人DJだったBriskのEye Opener
美しいメロディーをハピコア向けによりキャッチーに洗練させたCome And Follow Me
今やYouTubeでどれもフルバージョンを簡単に聴ける良い時代になりました。しかし1998年前後の日本で、上記4曲を含む海外のハッピーハードコアを日本全国どこのCDショップでも簡単に手に入れて聴くことが出来た……そういう意味でも、SPEEDシリーズがもたらした影響力は計り知れないでしょう。
21年前のコンピレーションアルバムということもあり、もはや収録されている全曲をオールドスクールと言ってしまっても過言ではありません。
上記4曲以外でも
04.THE KEY / DOUGAL & SKEEDALE
09.Is Anybody Out There / DJ Ham
13.FLYING (Dougal Remix) / DJ Dream & DJ Ell
14.HEY YEAH / DJ Seduction
16.On & On(Slipmatt Remix) / DJ Brisk(実際はBrisk & Ham名義)
などの昔懐かしいRAVEサウンドやピアノブレイクを使用した曲ばかりなため、最新のUK HARDCOREを聴き慣れたハピコアリスナーが今聴くと、逆にどれも新鮮に感じられるかもしれません。
THE KEY
HEY YEAH
後のSPEEDシリーズの隆盛を知っているからこそ物足りない部分の多いCDではありますが、1998年当時のハピコアシーンを当時の空気感のまま楽しみたい人には最適な1枚ではないでしょうか。
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