Dancemania SPEEDの歴史17~SPEED G2~

Dancemania SPEED EVOLUTION "SPEED G2"
到達点を越えた先にあるもの

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2003年11月27日発売

中期ベストSPEED GとサブシリーズSFXChristmasを経て、後期最初の本編シリーズ11作目です。後期に入りシリーズ名が「Dancemania SPEED EVOLUTION」となり、それに伴ってナンバリングがSPEED Gを起点に「G○」形式となりました。

中期以降の本編やサブシリーズ全てに参加しているSAIFAMRunawayLED。後期はこの海外レーベル3本柱の比重が特に大きくなり、反対に今までSPEEDシリーズを支えてきたKCPがほぼ表に出てこなくなります。今作の新規リミックスも歴代最少の3曲ですが、これでもまだ恵まれている方で、次作G3以降はDancemania曲リミックス自体が無くなってしまいます

いわゆる「予算削減」による人件費、版権料等の節約が一因と思われますが、DDRアーケードの制作休止も向かい風となり、Dancemania曲そのものの需要が減少してしまったことも要因でしょう。

「知ってるあの曲が」の知ってる曲がDancemania内に少なくなり、それ以上に知名度の高い洋楽曲を3本柱がアレンジ出来てしまうとなると、リスナーの意識もそちらへ向いてしまうのは致し方ないことかもしれません。大多数のリスナーがSAIFAMやRunawayの洋楽アレンジを求めていたことは、SPEED Gで既に証明されています。

曲の知名度に関わらず、KCPリミキサー陣のアレンジもSPEEDシリーズの魅力の一つではありましたが、ともかくも後期でKCPが担当した(とはっきりとわかる)ものは以下の3曲のみです。


03.GIVE ME UP(Happy Grandale Remix) / Michael Fortunati
06.Domo Domo Domo(KCP Remix) / SMILE.dk
17.CELEBRATE NITE(Planet Lution Remix) / N.M.R


KCP新規リミックスが今作で打ち止めとなることを知ってか知らずか、たった3曲ではありますが、そんなKCPの矜持が垣間見える珠玉のアレンジが並びます。後期ベストHAPPY SPEEDにも全て収録されました。


筆者としてはとにかく3曲目GIVE ME UPのリミックスが好きで好きでたまりません。なんなら全SPEEDリミックスの中でもトップクラスに好きです。

ユーロビートの草分け的存在Michael Fortunatiが歌い、J-POPでも度々カバーされる80'sディスコミュージックの傑作。そんな原曲のパワーを最大限までSPEEDナイズしたK.O.G森田氏のサウンドが、絶え間なく耳を襲います。

リフはもちろんのこと曲中の印象的なサウンドを事細かに再現し、かつSPEEDシリーズ屈指のハッピーなユーロアレンジでまとめあげた当曲。個人的にはその圧倒的多幸感をずっと味わいたく、ずっと曲が終わらないでくれとすら思ってしまえるほどです。



SPEED Gの選曲傾向から見るに、恐らくこの時期にはメインシリーズ等を全く追わず、SPEEDシリーズばかり精力的に追いかけるリスナーも相当数いたことでしょう。

そんなDomo Domo Domo原曲を知らない彼らにお見舞いされる「日本語」の洗礼。アレンジとしてはオーソドックスなKCPリミックスですが、SPEEDシリーズで初めて味わう、「キモノ」や「サムライ」程度の一単語ではないガッツリ日本語のサビは中々の衝撃だったのでは。



毎作恒例のNAOKI曲リミックスは、今回CELEBRATE NITEが選ばれました。原曲より悲壮感の強まったDDRMAX2のEURO TRANCEバージョンを基とし、いつものNAOKIリミックスとは違うトランシーで大人な雰囲気の出来栄えに。


今作を最後にNAOKI曲も新規リミックスが無くなり、またDDR自体もEXT以降しばらくの間アーケード版制作休止に。D2RDESTINYHYPER EUROBEAT等がSPEEDリミックスされなかったことを惜しむ声は多く、このリミックスがなまじ良いだけに、DDRとDancemaniaとの相互作用が無くなってしまった寂しさをただただ感じるばかりです。


続いては海外レーベル、まずはLEDから。

09.Last Christmas / ROSE
10.Up Where We Belong / JUDY CRYSTAL & Frog
18.Gonna Fly Now / Hardcore Synth Orchestra


Last Christmasはこの直前に出たChristmas SPEEDからの移植曲。今作も11月末発売のため季節感があり、またChristmas SPEEDの宣伝にもなる良い選曲となりました。

残りは恐らくSPEED SFX用にオファーを受けたもののSFXの選出から漏れたと思われる2つ。愛と青春の旅だちロッキーの映画主題歌でお馴染みの有名曲です。

Up Where We Belongは感動的な原曲をピアノやボーカルで表現しつつ、LEDらしい派手なユーロビートでSPEEDリスナーに焦点を合わせたアレンジに。駆け上がるようなシンセリフの雄大さは、まさに映画「愛と青春の旅だち」のエンディングのようです。



Gonna Fly Nowは初聴時の衝撃がかなり大きい曲かもしれません。なにせ原曲はロッキーのテーマとして誰もが知るものの、そもそもタイトルのどこにもロッキーのロの字も見えないのです。ライナーノーツ未見で聴くと「ロッキーの曲ってこんなタイトルだったの!?」となること請け合いです。

そしてアレンジがLEDらしいクセの強いユーロビートながらもまた良く合っており、原曲の興奮とLEDシンセとが絡んで、ボクシング映画さながらの昂ぶりをリスナーに抱かせることでしょう。



続いてはSPEED Gでも圧倒的支持を集めたSAIFAM。今作もハイクオリティな楽曲だらけです。

02.Sir Duke / Capitan Go!!
08.Joe Joe(Speedy Mix) / Jenny Rom
15.Bring Me To Life / Hanna
19.Love's theme from the Godfather / DJ Jaxx
25.Layla(Speedo Remix) / TOMMY B.
28.The Terminator / DJ Terminator
29.A Thousand Miles(Speedo Mix) / DJ SPEEDO feat.WILDSIDE
30.CRAZY IN LOVE / BEAT BOX feat.DJ SPEEDO


SPEED 10からまたも記録更新し8曲収録。この内The TerminatorはSPEED SFXからの移植曲。TerminatorはそのBPMの速さとトランスコア調のアレンジを活かし、Kambel曲からA Thousand Milesへの橋渡しを可能にしました。

まずは後にSPEED TVSPEEDRIVEにも収録される2曲から。

Sir Dukeはスティービー・ワンダーの原曲が車のCMに使われ、タイトルを知らなくてもリフやサビで「この曲は!」と気付ける普遍的名曲。アレンジの結果、シンセリフがきちんと原曲を踏襲しそれでいてオリジナリティ溢れる、SAIFAMのカバースキルが輝く一曲に。相方Laylaと違いHAPPY SPEEDには収録されませんでしたが、こちらもファンの多い人気曲となっています。


そしてSir Dukeと一緒に今作初登場、その後Sir Dukeとともにサブシリーズ2枚に収録され、Sir Dukeと同じく原曲が車のCMに使われた、Speed RecordsにおけるSir Dukeの相方ことLaylaです。こちらの原曲はギターリフを聴いた瞬間に多くの人がドライブの映像(もしくは船に乗るTOKIO長瀬)を想起することでしょう。当然アレンジでもギターリフのメロディーは活かされ、パワフルなユーロダンスカバーで今作のキラーチューン筆頭に。



Bring Me To Lifeゴッドファーザー愛のテーマはSPEED SFXからの収録漏れと思われる2曲。デアデビルの主題歌で世界的にヒットしたBring Me To Lifeをカバーするのは、初登場のボーカル名義となったHanna。SAIFAMとしても手応えのある会心作だったようで、当曲がHAPPY SPEEDに収録されただけでなく、以降SAIFAMはHanna名義をよく使うようになります。


ゴッドファーザー愛のテーマは当時めちゃイケ数取団で使われていた他、この数年後にデ・ニーロのモノマネ芸人がプチブレイクしたため、映画未視聴でも知っている人の多い、お茶の間で聴き馴染みのある曲でした。荘厳な原曲とは違いシリアスながらもノリの良いアレンジで、前曲Gonna Fly Nowからの映画曲ゾーンを勢いそのままに突っ走ってくれています。


SPEEDシリーズのアイドルJenny Romの新曲Joe Joeは、前作IKA UKAには及ばずともキッズソング一歩手前レベルの大衆性を持つ可愛らしい曲。ただ方向性が「いつもの」過ぎてリスナーも若干食傷気味になったのか、他のジェニロム曲と比べるとそこまで熱狂的な人気ではありませんでした。



そしてラスト前とラストにそれぞれ鎮座するA Thousand MilesCRAZY IN LOVE。どちらもHAPPY SPEEDに収録され、また当時から多くのリスナーに支持された人気曲です。

A Thousand Miles原曲は化粧品ノエビアのCMに使われましたが、正直このアレンジの仕上がりっぷりは、CM曲だから受けがいいとかのレベルをとうに超えているのでは。ピアノの旋律をSAIFAMの爽やかなシンセで再現し、「BPM200近い清涼感のあるユーロダンスナンバー」という、成立していることが奇跡のような一曲が生まれました。


CRAZY IN LOVEはそのサウザンド・マイルズの清涼感を直後に黒く染め上げるようなダークなサウンドに。ほぼBPM倍取りでビヨンセの代表曲を超高速ダンスチューンへと変貌させ、BPM205とSPEEDシリーズの最高速も更新しました。数年後の渡辺直美のブレイクによって原曲を知る方も多いでしょう。



そしてSPEED Gで堂々のリクエスト1位を獲得したRunaway

01.All The Things She Said / Muff and the Munchers
04.Sk8er Boi / Nancy and the Boys
05.Oh Pretty Woman / Big Vin and Hugh Jardon
07.All About You / CJ CREW feat.Ellie
12.Lose Yourself / CJ CREW feat.SAMI
14.All I Have / Chi K Monkey
20.Batman Theme / CJ CREW feat.Robin

SAIFAM同様に提供数最多を更新し7曲に。


まずは映画主題歌としても使用された、ひょっとすればSFXからの収録漏れかもしれない3曲から。

Oh Pretty Womanはタイトル通り映画プリティー・ウーマンに使用された60'sソング。あの印象的なイントロとサビで誰でも元ネタを瞬時に理解出来、Runawayの原曲に忠実なアレンジのお陰で、普遍性もそのままに踊れる一曲に仕上がっています。


Lose Yourselfは原曲を歌っているエミネム自身が主演する映画の主題歌でしたが、当曲はきっとRunaway史上一番リスナーの度肝を抜いたアレンジだったのではないかと。原曲のダウナーな雰囲気はそのまま漂わせつつ、ラップが単語として認識される前に音として耳に叩きつけられる状態で、歌詞カードを追おうとしても途中で振り落とされるほど。

SPEEDシリーズにおける「高速歌詞」の頂点に立つ存在であり、あまりにアレンジが尖りすぎた結果かHAPPY SPEEDには選ばれませんでしたが、間違いなくRunawayの代表作と言っていいだけのインパクトを残しました。


上記2曲は単純に有名洋楽曲のカバーでオファーされた可能性もある中、バットマンのテーマは元々はSPEED SFXへの収録が決まりかけていた一曲。仮トラックリストに情報こそありましたが、紆余曲折あったのか今作へ収録されました。ニール・ヘフティのコミカルな原曲を基に、グルーヴィーなアレンジで面白くまとまっています。


またAll I Haveはジェニファーロペス原曲のMVがクリスマスっぽい雰囲気のため、ひょっとすればこちらはこちらでChristmas SPEEDからの選出漏れだったりするのかもしれません。



同じくAllから始まるAll About Youは、Runawayでは希少なオリジナル楽曲。癒し系ナンバーRise To The Occasionを思い出す優しい曲調で、やはり地味ながらも心に染み入り「聴ける」一曲です。

そしてHAPPY SPEEDに収録された2曲、All The Things She SaidSk8er Boi。All3曲目でもあるAll The Things She Saidは、お騒がせデュオt.A.T.uが原曲。話題の楽曲がRunaway得意の高速歌詞アレンジとなり、オープニングトラックに相応しいスタートダッシュを見事に決める結果に。


Sk8er Boiは前作Complicatedに続きアヴリルのロックナンバーのアレンジ。こちらは原曲がそこそこハイテンポなため高速歌詞にはなりませんでしたが、その分ロックテイスト強めのハイスピードダンスミュージックとして、序盤の盛り上げ役を担ってくれました。


アルバム残り9曲は、もちろんハードコア系統の楽曲。
こちらがまた相当なツワモノ揃いで、3本柱のインパクトに全く負けず、ハピコア好きの需要も完璧に満たしてくれています。


ドゥッドゥビドゥーと繰り返される中毒性のあるボーカルが印象的なDubey Doo



非4つ打ちパートの圧倒的カッコよさが鮮烈な体験をさせてくれるEnraptured Soulz



日本人DJのタッグにより生まれた最高にエモーショナルなハードコアMUSIC



哀愁感あるボーカルとハードなサウンドが高次元で融合した新たなるアンセム24-7



エッジの効いた、それでいてとっつきやすいニュースタイルガバが魅力的なDon't Even Try It



シンセリフを聴いた瞬間誰しもがアンセムであることを確信するAngel Eyes


Angel Eyes以上にヘビーなレイヴサウンドでコアリスナーを満足させるTaste The Rainbow



シャープなシンセの刻みで自然と身体が縦ノリを始めてしまうTo The Moon



Kambelの普段の暴れっぷりが鳴りを潜め、より繊細な曲調が楽しめるGod Look Down


この中でもとりわけ人気が高いのはAngel Eyes24-7でしょう。Angel EyesはHAPPY SPEEDにも収録されました。どちらもトランスコアの発展形となるUK HARDCOREの要素を兼ね備えた、BEST OF HARDCOREやSPEED Gからのハードコア楽曲のさらなる進化を感じさせてくれる大アンセムです。

24-7のEclipseはHamの別名義のため、上記2曲ともに関わっていることになります。その24-7は後にBreeze & StylesFracus & Darwinなど、様々な人気DJによっていくつものリミックスが生まれ、そしてその度に新たなアンセムとしてハードコアの歴史に名を刻むことに。

またハードコア系統がサウンドの面でより洗練されてきたこともあり、曲調としてとっつきやすいとは言えないジャンルでもある中、とにかく聴きやすい曲が増えました。

Deliriousが自分には合わなかったという人でも、Don't Even Try Itはキックがそこまで主張せずとっつきやすいので気に入る可能性も高く、またEVIL氏とShimamura氏の合作MUSICは日本人向けのエモいハードコアになっています。Enraptured Soulzのブレイクのカッコよさは、ハードコア好きだけでなく、SPEEDシリーズ未聴の音ゲーマーにも気に入ってもらいやすいことでしょう。

それぞれが曲調として決して初心者向きでないにも関わらず、そのポテンシャルとクオリティでもって、ハードコア楽曲の「入り口」になってしまっている、力づくで機能してしまっている、今作にはそんな恐ろしく優秀な楽曲ばかりが収録されています。


……というわけで、敢えて最初には何も言いませんでしたが、今回はSPEED 5、10と同じく全曲書き出し、全曲解説を行いました。

今作を後期最高傑作SPEEDシリーズ最高傑作に挙げる人も5や10同様に多く、何なら「SPEED GよりG2の方が好き」とまで言ってのける人も居る程です。そしてその意見が(賛同するかはともかく)言い過ぎではないということは、聴いた方ならきっとわかるはず。

後期の各アルバムに中期のようなテーマ等を掲げるつもりは本来無かったのですが、今作の特徴をテーマとして掲げるならば……

3曲ながらも既存作品に全く見劣りしないKCPリミックス、Gonna Fly Now・CRAZY IN LOVE・Lose Yourself等の3本柱のインパクト大なアレンジ、SPEED 10で感じさせた「未来」をすぐさま体現してみせたハードコア楽曲たち、何よりもベスト盤後の本編シリーズとして、そのベスト盤をも喰らう勢いの異常すぎる完成度

SPEED 10とGという「集大成」を超えた先でここまでリスナーの想像を上回るアレンジを、そしてアルバムを出して来た……そういう意味で、今作の特徴を表す言葉としては「限界突破」が一番似合うのではないでしょうか。

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