Dancemania SPEEDの歴史5~SPEED 4~
Dancemania SPEED 4
人気爆発
2000年3月8日発売
SPEEDシリーズも4作目を迎え、この辺りで名実ともに「Dancemaniaシリーズのエース」の地位を確立していきます。
クオリティが更に上がった新規リミックスや、ハピコア以外で初めて収録されたカバー楽曲たち、そして忘れてはならない時代を彩ったハッピーハードコア楽曲などなど。SPEEDシリーズ全体でCDの人気投票を行った場合、初期作品の中でも今作は特に上位にランクインする、という人も多いのではないでしょうか。
そんな正当進化を見せるSPEEDシリーズですが、今作ではSPEED 1~3では起こり得なかった、様々な「革命」が起きました。
まずは恒例の新規リミックス曲。
01.BRILLIANT 2U(K.O.G G3 MIX) / NAOKI
02.HERO(Happy Grandale Mix) / PAPAYA
04.IF YOU WERE HERE(B4 ZA BEAT Mix) / Jennifer
06.Eyes On Me(Super Planet Mix) / Faye Wong
16.DAM DARIRAM(KCP Mix) / JOGA
19.DYNAMITE RAVE(B4 ZA BEAT Mix) / NAOKI
22.Have You Never Been Mellow(MM Groovin Mix) / The Olivia Project
26.Gimme Gimme Gimme(Hardcore Mix) / E-ROTIC
今回の新規リミックスは8曲中6曲がBEST 2001に収録され、DDRにも(曲目は微妙に違いますが)同じく8曲中6曲が収録されるという、SPEEDシリーズ随一の人気と知名度の高さを誇ります。
今作1つ目の革命として、初めてDancemania以外から……DanceDanceRevolutionのオリジナル楽曲がリミックスに選ばれました。
BRILLIANT 2UとDYNAMITE RAVEというDDR初期を大きく支えたNAOKI曲が、言わば逆輸入の形でDancemaniaシリーズに収録されることに。
元はDancemania人気に乗じて流行した面も大きかったDDRですが、DDRサントラの大ヒットやこうした楽曲逆輸入によって、お互いの良い所を吸収し成長していく、そんな相互作用が生まれました。
Orchestra Grooveバージョンの要素も盛り込むK.O.G森田氏の遊び心が爆発するBRILLIANT 2Uのリミックスは、個人的に今作で特にお気に入りの一曲です。
そしてそれと同時に2つ目の革命、初めてKCP以外のリミキサーが参加しました。当時既にユーロビート界で人気を博していたDJ集団B4 ZA BEATが、IF YOU WERE HEREとDYNAMITE RAVEの2曲をリミックスし、BEST 2001でリクエスト17位と2位の結果を残しました。
……と言うよりBEST 2001、SPEED Gと合わせて「B4 ZA BEAT Mix」の名を冠したリミックス曲は全てがベスト盤入りしています。もちろんDYNAMITE RAVEやB4Uなどは元から大人気だった影響もありますが、それにしてもこの打率の高さは流石の一言です。
またDancemaniaメインシリーズに収録されていたとは言え、
DDR(KONAMI)曲が入っているCDの同じリミックス枠で
FF8(SQUARE)のEyes On Meが入っているのも、冷静に考えると中々面白いのでは。
Eyes On Meは感動的な原曲を引き立たせるエモーショナルなアレンジに仕上がっており、BEST 2001でもリクエスト4位のトップ層に入る人気を獲得しました。ボーカルをSPEED用に新録する訳にも行かないので原曲のビブラートまで超高速になっていますが、そこはご愛嬌ということで。
あともう一つ新規リミックスで取り上げたい曲がHave You Never Been Mellowこと通称「ハブネバ」のリミックス。
このリミックス自体、清涼感溢れる爽やかなSPEEDアレンジで、BEST盤に収録されていないのが不思議なほどの完成度の高さなのですが、注目したいのは「MM Groovin Mix」というリミックス表記の方。
現在に至るまで明言されてはいないものの、この「MM」は恐らくKCPメンバー「MOMO」金沢氏のことだと思われます。正式に「Momo Mix」表記が現れるのは次作SPEED 5からですが、5に収録のBlonde Girlリミックスともアレンジ傾向がそっくりで、ハブネバリミの「MM」が本当にMOMO氏を指しているのだとすれば、SPEED 4時点で既にMOMO氏は単独リミックスを制作していたことになります。
「だから何だ」と言われればそれまでな話ですが、SPEEDシリーズの歴史を辿る目的で始めたnoteのため、こういった小さな気付きも記載しておきたく敢えて取り上げました。(全て推測なので間違っている場合もありますが、あくまでSPEEDリスナーの一説として捉えていただければ)
続いてはハピコアの紹介……ではなく、ここで第3の革命です。
今まで「Dancemaniaリミックス」と「ハピコア」の2パターンのみで構成されていたSPEEDシリーズに、海外レーベルが新たに2つ参加することになりました。
それが「SAIFAM」と「Runaway」の2社です。
SAIFAMはイタリアのダンスミュージックレーベルで、音楽プロデューサーMauro Farinaを中心に、現在でもオリジナル楽曲やフィットネス用ダンスカバー等を制作しています。初参加となる今作には2曲を提供。
13.Go West(Remix) / Kama-Sutra's Gang
27.I Wanna See The Sun(Speed Mix) / WILDSIDE
ブックレットのクレジットにはどちらにも「Speed Records」の表記が。これはSAIFAMが高速BPM曲(主に有名楽曲のカバー)を発表する際の独自レーベルです。
(余談ですがJuno Downloadという海外音楽配信サイトだと、何故か「Speed Italy」というレーベル名で登録されています。このレーベル名や各楽曲名等で検索すると、SAIFAMのSPEEDシリーズ収録曲のフル音源を購入出来るので、興味が有る方は利用してみてください)
SAIFAM……特にSpeed Recordsは、以降のSPEEDシリーズにとって無くてはならない存在で、多くの中期~後期ファンにとって「SPEEDシリーズを聴き続ける動機」ですらあった程の人気レーベルです。ですが今作ではまだ上記の2曲で、その片鱗を見せるのみに留まっています。
ただ個人的には、この時点でもI Wanna See The Sunのスピードダンスとしての完成度の高さは既に目を見張るものがあります。
I Wanna See The Sun(原曲)
Runawayはイギリスの音楽プロデューサーChris Bucknallが率いる楽曲制作プロダクション。今作では
03.Change The World / CJ CREW feat.BLUEMAN
05.S.O.S / Nancy and the Boys
30.Livin' La Vida Loca / CJ CREW feat.GIORGIO
こちらの3曲を提供。この内Livin' La Vida LocaはBEST 2001に収録され、ロケテのみですがDDRにも収録予定でした。
まだ本領発揮していないSAIFAMと比べると、今作のRunawayは3曲ともが原曲の雰囲気を保ったまま見事に高速ダンスポップとしてアレンジされ、初参加とは思えないほどSPEEDシリーズの空気に馴染んでいました。
特に前述のLivin' La Vida LocaはBPM200のダンスポップという、現在で見ても珍しい、当時で言えばもちろん皆無に近い曲でした。BPM200にも関わらず「速すぎて訳がわからない」という感覚を抱かせることもなく、原曲のアツさを見事に再現したカバー曲に仕上がっています。
SAIFAMとRunawayが今作から参加し、
「ユーロビートやダンスポップを基調とした高速カバー楽曲」
という全く新しい選択肢が入ることで、SPEEDシリーズにはよりバラエティ豊かな曲目が増えていくことになります。
そして当然、肝心のハッピーハードコアも忘れてはいけません。
今作の特に有名なハピコア曲として、以下の5曲をピックアップ。
08.FOREVER / DJ HIXXY & BANANAMAN
09.I Believe / DJ Stompy
14.Big Air Head / DJ Brisk(※Airhead(SMD Remix)とも表記)
25.So Real / DJ Vinylgroover
28.Run To Me / E-LOGIK
4作目ともなると各ハピコアDJに付いたファンの数も相当多くなっており、SPEED 1時点では新人だったBriskも、この時点ですっかり人気ハードコアDJの仲間入りを果たしています。
そんなBriskの、後に更なるアンセムリミックスとして帰ってくるAirhead以外にも
泣きメロと激しいシンセリフの融合が気持ち良いFOREVER
Take On MeのイントロをサンプリングしたStompyの代表作I Believe
初期の「ザ・オールドスクールスタイル」なハピコアを代表する傑作So Real
一瞬でハイになれるサビからレゲエパートへの変化も面白いRun To Me
など、往年のハピコアファン感涙ものの名曲がズラズラと並びます。
また今作のハピコアは非常に幅が広いです。
上記4曲以外にも、DJ Kaosのメロディーセンスが光る
10.Sweet Desire / DJ Kaos
18.Sincerely Yours / DJ Kaos
この2曲も上記アンセムに負けず劣らずの名トラックですし、
笑える系統の「もはやギャグ」なハピコアアレンジも
11.SAINT GOES MARCHING / The Saint(聖者の行進)
12.SUPERMAN / DNA & Simon Apex(スーパーマンのテーマ)
29.Oh My God / DJ Wyle(SMOKE ON THE WATER)
これら3曲を取り揃え、ハピコアかじりたてな人でも最後まで飽きさせない構成で楽しむことが出来ます。
Sincerely Yours
SAINT GOES MARCHING
「SPEEDシリーズをBEST盤以外で初めて聴くなら」という質問に対しては、
私は5、10、G2と並び今作をおすすめします。
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