Rapid ReviewとSystematic Review
Rapid Review (RR)が増えてきた.例えば以下のような論文である.
https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013600/full
Valk SJ, Piechotta V, Chai et al.
Convalescent plasma or hyperimmune immunoglobulin for people with COVID‐19: a rapid review.
Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 5. Art.
No.: CD013600. DOI: 10.1002/14651858.CD013600.
RRとはなんなのか?Systematic Review (SR)との違いをまとめてみる.
Rapid Reviewの定義
Rapid Review (RR)は,Systematic Reviewのプロセスの構成要素を簡略化または省略して、タイムリーに情報を生成する知識合成の一形態と定義されている (Tricco et al., 2015.)
RRの目的
RRは時間的制約のある臨床医,管理者,政策立案者がエビデンスに基づいた意思決定を行うために必要な情報をタイムリーに見つけることを可能にする.特にCOVID-19流行下ではこの方法によるレビューが多く行われ,エビデンスが臨床家に提供されていた.
RRの方法
RR作成者は臨床家の早くエビデンスをくれ,という時間的なニーズに答えなければならないが,同時に,方法論的な厳密さも要求される.これに対処するため方法論的研究と標準規格の開発の必要性が叫ばれており,Cochrane Rapid Reviews Methods Group (RRMG) というコクラン方法論グループも設立されている.
RRの実施に使用される方法は、システマティックレビューの実施時に使用される方法と基本的に同じである。RRは一般的に 1~6 ヶ月で実施され,研究者がRRの各ステップにかける時間は様々である.
RRではシステマティックレビューのプロセスから抽出された構成要素を,一般的には簡略化する事が多い(Dobbins, 2017)
Systematic review (SR)との違い
Systematic reviewの定義
Systematic Review (SR) は,関連する研究からデータを特定し、選択し、批判的に評価し、抽出し、分析するために、体系的かつ明示的な方法を用いている [Higgins & Green 2011]
SRの方法論
SRは以下の方法で行われる.
・事前にプロトコル登録を行う(PROSPEROが最多)
・包括的・体系的な文献検索(MEDLINE, CENTRAL, EMBASEなど複数の データベース)
・事前に定義された包含基準および除外基準(すなわち、試験適格性基準
・バイアス評価のリスク
・事前に定義されたデータの抽出
・エビデンス総体に基づく統合
・議論,研究の制限とレビュープロセス
・各ステップを二人以上のレビュワーが独立して行う
SRでは平均1139時間の労力を要し,そこそこの費用を要することがわかっている(Petticrew2006)
SRとRRのの違い
RRでは上記の方法のいくつかを省略することで行われる.例えば,データベースを限定することや結果の統合の省略,レビューワーを1人にするなどである.
これによりRRはLimitationを持つことになる.SRので本来対処していたバイアスを除去するためのプロセスを省略することでバイアスが発生するかもしれない(Tricco 2008]).また,RR自体がよく研究されているわけではないため,未知のバイアスがある可能性である.
RRとSRの違いのまとめ表
| |Rapid Review | Systematic Review |
|-------|-------------|-------------------|
|時間 |1から6ヶ月 |6ヶ月から2年 |
|疑問 |事前に特異的に決める|PICOに基づく臨床疑問|
|検索 |ソースを限定 |十分なソースと検索式 |
|選択 |設定した基準に従う|設定した基準に従う|
|批判的吟味|厳格な、批判的吟味|厳格な、批判的吟味|
|統合 |記述的に行うもしくはカテゴリ化|質的サマリー±メタ解析|
|推論 |限定される,結果の解釈に注意| EBM |
まとめ
時間的制約に対処するためにRRは存在する.RRがSRの代替隣うるかに関しては議論されているところであり,現時点ではRRのみで良いとは言えないだろう.COVID-19パンデミックのように,最新のエビデンスがオンタイムで必要な環境であればRRが優先されるが,落ち着いた環境ではSRのほうが良いと思われる.
今後の学習のために実推論施プロセスに関する詳細は、以下のリンクから見れる.
Author: Y