質的研究の評価 その1

質的研究の質の評価方法を確立しないといけない

質的研究はすべての研究と同様に、実臨床に応用される前にその研究結果を信頼できるか評価し,批判的な目で読みその厳密性(量的研究で言う妥当性)を判断しなければならない。したがって、批判的吟味は、研究をヘルスケア政策や実臨床に落とし込む上で不可欠なプロセスである(Hill and Spittlehouse 2003)。研究者は研究の方法を十分詳細に報告し、研究結果の妥当性と関連性に影響を与える可能性のある限界を強調しなければならない(Patton 1999)。
ヘルスケア研究には、研究方法についての専門知識が乏しい利害関係者を含む幅広い対象者がいる。さまざまなタイプの量的研究を評価するための標準的なチェックリストやツールは、例えばコクラン共同研究の臨床試験のためのバイアスの リスクツール(Higgins et al)のようなものがある. 質的研究を評価するための様々なアプローチが開発されてきたが、研究者の間では、質的研究を実施するための標準的な基準や金字塔的なアプローチについての合意はほとんど得られていない。なぜかというと,方法論が煩雑であるからだ.質的研究で使用される多様なアプローチ、例えば現象学、エスノグラフィー、グラウンデッド・セオリーは、現実と知識の性質に関する様々な理論的枠組みと哲学的仮定に基づいている(Patton 2015)。このためBarbourらは質的アプローチの全範囲に適用できるような、質的研究のための一つの標準的な基準が開発される可能性は低いという(Barbour 2001)。

それでも質的研究は必要

医学研究では、質的研究への需要と関心が高まっている。これは、患者中心のケアへのパラダイムシフトを反映していると考えられ、患者の価値観、目標、信念、態度の理解を必要としている。

質的研究を評価,翻訳する枠組みを作っていかなければならない

このため質的研究への理解の普及が急務である.英国医学雑誌とオーストラリア医学雑誌は、質的研究の評価基準を提供する教育論文を発表している(Kitto et al. 2008; Kuper et al. 2008; Mays and Pope 2000)。しかしながら,生物医学雑誌の読者は、科学的方法を通して客観的な現実を明らかにしようとする実証主義的な科学の伝統の中で大部分を訓練されている(Meyrick 2006)。質的研究は解釈的で自然主義的であり、現象を説明・記述するために異なる方法を用いている(Liamputtong 2013; Patton 2015)。このため,質的研究に馴染みのない読者は、一般的に量的方法に関連した厳密性の側面に注目している(Meyrick 2006)。

しかしながら質的研究は、不適切な基準や不明確な基準によって判断されることが多く(Tong and Dew 2016),質的研究の知見をどのように解釈し評価すればよいのかが不明瞭である.このため,質的研究自体が懐疑的に見られ、資金提供機関、臨床医、政策立案者からは「二流」の研究と揶揄されることさえある(Tong et al). 

したがって、質的研究の評価は、健康を改善する方法を知らせることができる詳細で意味のあるエビデンスを生み出すことを目的とすべきである.特に質的研究の強みとその知見が受け入れられ、認識されるように評価することが重要である(Patton 2015)。現在利用可能なツールの多くは、質的研究の方法や原則について相当な理解と経験を必要とする(Mays and Pope 2007)。

つづく

Author Y

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