日本アジアグループ(3751)のMBO

日本アジアグループ(3751)のMBOが2020年11月5日に公表されました。

■概要
・TOB価格1株600円(公表日である11月5日の終値は352円)
・下限66.67%、上限なし
・TOB期間11月6日~12月21日(31営業日)、決済日12月28日
・買付者 グリーン ホールディングス エルピー(ケイマン籍)
・応募合意は対象者の代表取締役会長兼社長の山下氏(1.79%)、JA Holdings(9.56%)、JA Partners(2.45%)、藍沢証券(12.56%)の4社で合計26.37%
・藍沢証券の応募契約については、公開買付者のTOB価格を5%以上上回る買い付け価格の対抗TOBがでた場合は、当該対抗TOBに応募することが許容されている

■関係者
・買付者側:リーガルはN&A、公開買付代理人は野村証券、算定書・FOの取得なし
・対象者側:リーガルはAMT、FAはプルータス、プルータスから算定書及びFOの取得

■資金調達
・カーライルがスポンサーで全額エクイティ出資で167億円の資金証明を提示

■バリュエーション
・公表日の前営業日である11月4日の終値342円に対して75.44%、
・過去1か月、3か月、6か月平均に対してそれぞれ86.92%、95.44%、101.34%
・過去の株価、終値平均に対しては一般的なプレミアム水準である40%前後を踏まえると相応のプレミアム水準が付与されている状況
・対象者サイドであるプルータスの算定レンジは市場株価法で298円から342円、DCF法で440円から723円(DCFの中心値は581.5円)
・DCF法の中心値581.5円を上回る価格設定
・一方でBPS840円(20/3末)対比では修正PBRは0.71倍の水準
・この点、開示書類上では、対象者としては純資産額は、会社の清算価値を示すものであり、将来の収益性を反映するものではないため、継続企業である対象者の企業価値の算定においては重視することは合理的ではないと考えているとのこと

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■スキーム
・カーライルのケイマン籍の買収ビークルによりTOB+SQOで対象会社を100%化
・その後、対象会社が山下氏及びグリーンプロジェクト社を引受先とする第三者割当増資を実施
・対象会社が自己株取得により公開買付者の持ち分を約164億円で全て取得し、対象会社の株式を山下氏及びグリーンプロジェクト社にする
・対象会社は公開買付者に子会社の国際航業株式の80%とJAG国際エナジー株式70%を205億円で譲渡

■考察
・164億円で買っておきながら、それよりも高い205億円で子会社株式を取得する想定
・日本アジアグループの開示資料をみると、日本アジアグループ単体では15億円の経常損失、連結では5億円の経常利益を計上しています。
・つまり連結子会社では黒字を計上しているにも関わらず、親会社の事業で赤字状態の為、連結ベースでみると価値が既存している状態
・従って、子会社だけでみると価値が高くなるという状況
・この辺は、資金調達とも連動しているのではないかと思われます。
・つまり、赤字の親会社も含めて買う分にはリスクがあるので、レンダーも金を貸せないが、利益計上している子会社だけになればレンダーも資金提供が可能になるので、まずはフルエクイティで調達し、後でローンを引っ張ってきてレバレッジをかけるスキームを想定しているのではないかと思われます。
・ただ、子会社株式はいずれも100%取得ではないので、ローンを調達してもどう返済するかというのは工夫が必要そうです。

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