デジタル広告で成果指標だけを追うのはもったいない気がする、という話
こちらの企画での記事投稿となります。
私は事業会社でデジタルマーケティングを担当しているため、ときどき広告代理店さんから提案を受けることがあります。
おそらく多くの企業では、あらゆるターゲティング設定を施してデジタル広告を実施していると思います。(私は素人なので、デジタル広告の用語などが間違っていたらごめんなさいm(_ _)m)
メンバーズ社のブログより画像を引用いたしますが、デジタル広告でのターゲティングは、よく効果階層モデル(認知→心理的変化→行動)に合わせてそれぞれの段階に合った広告ターゲティングとそれぞれの目的指標でその網羅性が解説されます。
代理店さん(注:メンバーズさんがというわけではございません)から提案を受けていて不思議だと感じるのが、商談で広告主がある程度網羅的にデジタル広告のターゲティング設定を階層モデルに沿った形で行っていると、「当社ではお手伝いできることがなさそうですね」といって、商談を終えてしまうことが多いということです。内心残念に感じ、クリエイティブやメッセージの見直しに関して、何か他の代理店さんとの差別化ポイントが無いかを聞くのですが、ほぼすべてのケースで広告の指標管理等への強みを述べられます。もちろん、デジタル広告における指標管理は重要事項の一つで払います。
広告は売り込みだけのためにあるのでなく、ユーザーとのコミュニケーションに使われます。そうした意味ではデジタル広告でターゲティング設定を行うのは、コミュニケーションのための一部の作業でしかないと考えます。書籍「広告の理論と戦略」の中で清水先生も、広告のマーケティング・コミュニケーションとしての意味合いの重要性を強調されています。
重要なのはターゲット・セグメントの中の具体的なユーザー群に何を伝え、どういった印象を持たれたいか、心理的にはどういった変化を及ぼしたいか、結果的にどういった行動を促したいかということだと思います。同書の中で清水先生は、そうした文脈でコミュニケーションの段階ごとに計測を行うことを推奨し、DAGMARモデルを引き合いに出しています。DAGMARモデルとは、効果階層モデルの一種で他にAIDAやAIDMAモデルなどがこれに当たります。DAGMARモデルでは、広告の影響により消費者がAwareness(ブランド認知)→Comprehension(理解)→Convition(信念)→Action(アクション)の順で変容する前提で考えられたモデルです。
デジタル広告はその名の通り数値の管理に長けた広告という理解をされています。私の周りでも、ユーザーにどういった印象を与えたか、どういった変容を起こしたかというよりもクリック単価(1クリックあたりの費用)や獲得単価(サイトで目的行動の単価)などの成果指標のみが管理されていることが多いです。
しかし、オンライン上でもユーザーに対しての印象づけや態度変容を起こすことができる可能性を考えると、成果指標のみに寄った広告運用というのももったいないのではないかと考えるようになりました。ここで問題となるのは、デジタル広告では一応は広告の表示回数からクリック、サイト上の目的行動までの指標を取得できるにもかかわらず、それらの指標が取れるからと言ってデジタル広告がユーザーの態度変容に関わったとは言い切れない点です。なぜならユーザーは、デジタル広告以外にも様々な広告や口コミなどの影響を受けているからです。結局はデジタルで取得できる指標ではなく、アンケート調査やユーザー調査などでユーザーへの印象への影響度を計測しなければ、私がいうようなことは実現できないのでしょう。また、そうした意味でデジタル広告の運用は成果指標に寄っていても大きな問題とはされていないのでしょう。
せっかくコミュニケーションとしてデジタル広告を捉えても良いと思うのに、もったいない気がしています。