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「感情の器」
私の感情は、水を湛えた器のようだ。その器は時に満たされすぎて溢れ出し、時に乾ききって底が見える。中学生の頃、「感情をコントロールしなさい」と言われたが、私にとってそれは器の形そのものを変えろという無理難題のように思えた。
ある日、雨の日の公園で、無造作に置かれた壊れた壺を見つけた。その壺には無数の亀裂が走っていたが、雨水がその亀裂を伝いながら内側に溜まっていた。それを見た瞬間、私は気づいた。感情の器も、完全である必要はないのだと。むしろ、不完全な亀裂が新しい水を導く。
以来、私の器は壊れたまま使い続けている。それでも感情が溢れるたび、新しい水を受け入れる準備ができている。亀裂を恐れる必要はない。器が壊れるたび、私は再び自分自身の形を見出すのだから。