うちのおかん短編集

①『サイゼリア』
 サイゼリアではドリンクバーを注文せずとも炭酸水を頂くことが許可されているらしい。僕の両親は酒が飲めない代わりに炭酸水をこよなく愛している。100%のピュアな善意を動機とした僕がそのことをおかんに伝えると、おかんはこう返した。
「でもサイゼは、」
3秒ほど間を置く。改めて口を開くと、
「めしマズいな〜。」
流石の一言である。僕はこのおかんの元で生を受けたことを誇りに思おうと心に決めたのであった。


②『屁』
 これは僕の父とおかんがまだ若い頃の話である。父は周りにどれだけ人がいようと、常に本意気で大きな音を鳴らして屁をこいていたらしい。知っての通りうちのおかんも女性である為そういったことに嫌悪感を抱いたそうだ。
「周りに人おるんやから恥ずかしいやん。止めや。」
父はこう返す。
「出るもんしゃあないやんけ。」
まあそういう時代だったんだなと思う。そして母はこう思ったらしい。
「かっっ...けえ〜...!」
この2人が出会ったのはきっと運命なのだろう。この2人の遺伝子を半分ずつ引き継ぐ僕にとってですら異次元のやり取りであり、理解が及んでいない。男らしさとは一体何なのだろうか。新たに模索する為の思考の旅が生まれた。


③『カニクリームコロッケ』
 冷凍のカニクリームコロッケはレンジで指定の秒数温めることでいつでも簡単に頂くことができる上、味も抜群に良い。そしてうちのおかんはあれを爆発させる。レンジで温め過ぎることで、カニクリームコロッケを爆発させるのだ。チンチンに熱せられ、だらしくなく放出された中のクリームは容赦なく僕の舌をズタズタに刻む。
 ちなみにおかんの手料理は抜群に美味しいのだが、カニクリームコロッケの解凍だけはうまくいかないようだ。

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