透明カメレオン。
冴えない見た目だけど声だけは魅力的な人気ラジオパーソナリティーの恭太郎は、行きつけのバーでびしょ濡れの美女と出会い、怪しげな計画を手伝う事になってしまう。深夜のバーだけで繋がる特殊な絆と些細な嘘、ラジオ番組の中で語られる虚構、ネガティブな現実を嘘で彩り続ける先にあるものとは、という話。
道尾秀介っぽくないなと思った。
ラジオとバーを題材にしたオシャレな連作ミステリーを期待したけど全然違った。硬派でひねくれてていかにも何かあるけど今はここまでしか明かせません的な世界観はここには無い。誰かを騙すための嘘ではない優しい嘘が魅力的に描かれた作品だと思う。
あくまでエンタメ小説であってリアリティとか謎解きに多くを求めてはならないのかもだけど、没入感って意味で「ラジオスター」を小説で描写する事の難しさを感じた。やはり最低限の納得感は嘘でも欲しい。
正直、ストーリーを引っ張れるだけの謎だったか疑問。なんだか下ごしらえだけした食材と調理器具だけ出された感じ。道尾マジックを信じて何とか読了したけども、どこまでの期待感を持って読み始めたかによって満足感は変わるような気がする。