小説の神様。
高校生でありながら売れないの小説家を続ける一也は、美人転校生の小余綾が人気小説家の不動詩凪だと知る。「小説には人の心を動かす力があるか」「売れる為にはどんな小説を書く必要があるか」という価値観の違いから啀み合う二人だったが、詩凪の考えたプロットを一也が執筆するという企画を任されて、という話。
「文芸部の窮地を救ってくれる神憑り的な足長おじさん」とか「ひたむきに取り組んだ人が最後に報われる神様の粋な采配」とかそういうのが登場する話ではなく、職業として小説家を選択する事の覚悟や苦悩を、何故か高校生の文芸部員が葛藤するという話。
創造する事への純粋さや挫けてしまう不安定さは高校生らしいのだけど、エンターテインメント化されてない嫉みのような物を強引にフィクションにしたような気がした。もしや、これを作中作にしてアクロバティックをかますのかと期待したけどそんなこともなく。「どんな闇でも高校生に代弁させれば青春小説になるか?」という実験小説だとしたら面白い。どんな気持ちで執筆したのか気になった。
昨今の出版業界の苦境っぷりやネットでの口コミや炎上への冷ややかな視点は、感情乗っててリアリティにヒリヒリするし、書けない事や売れない事に対する作者の重圧や苦しみ、それでも小説を書き続ける作者の信念のような物はしっかりと込められている気がした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?