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小金持ちのための惑わされない金融資産形成講座 06 証券口座の確定申告

 前回は「05 証券の課税口座」の分類を説明し、参考に○確定申告、○「特定口座」制度を付加しました。今回は「特定口座(源泉徴収あり)」から確定申告での取扱いをまで展開します。
見出し画像は「05 証券の課税口座」の表を引き続き使用します。
専門用語が頻出し、長くなりますが、ゆっくりとお読みください。

 まず、証券用語の定義的な部分から説明します。
◎株式・投資信託の取引にともなう所得について
○株式・投資信託の日常取引から発生する所得
 ・「譲渡所得」 株式売却時、投資信託解約時 
 ・「配当所得」 株式配当受領時、投資信託分配金受領時
○譲渡所得等(譲渡益)の金額の計算方法
 総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)
  =譲渡所得の金額
 ※総収入金額(譲渡価額)には、投資信託の償還、解約を含む
 ※投資信託の場合は、個別元本の変動により取得費も変動する。一般的
  に(取得費+委託手数料等)は(個別元本+委託手数料)として認識
○配当所得の金額の計算方法
 収入金額(源泉徴収税の差引前)=配当所得の金額(借入ないと想定)
 ※投資信託では普通分配金のみ〔元本払戻金(特別分配金)は対象外〕
 ※配当所得課税は、申告不要・総合課税・申告分離課税のいずれかを選択

◎「特定口座(源泉徴収あり)」における源泉徴収と損益通算
○譲渡所得(譲渡益)に対する源泉徴収
 ・譲渡益発生の都度、譲渡益×所定税率の額を源泉徴収
 ・譲渡損発生の場合、その時までの徴収税額から損失額×源泉徴収税率の
  額が、その投資家の特定口座に返戻される
 ・年間を通じて特定口座内の譲渡損益が損失の場合は、税額0になる
○配当所得に対する源泉徴収
 ・配当所得発生の都度、配当所得金額×所定税率の額を源泉徴収
○譲渡損失と配当との損益通算(当該金融機関内において)
 ・源泉徴収口座に譲渡損失がある場合、配当所得との損益通算を実施
  投資家は確定申告不要で、銀行・証券会社が損益通算を適用して納税額
  の計算および納付を行う。損益通算は、年末時点で譲渡損益が確定した
  後に行われる
 ※※この項目で説明した源泉徴収、損益通算の過程は、証券窓販システム
   の未経験者は、苦手とする範囲だと思います。
○確定申告不要を選択可能
 ・当該金融機関内での分離課税は完結しており、申告不要を選択可能
  申告不要であれば、他の所得と分離し所得を表面化させずに済む

◎複数の「特定口座(源泉徴収あり)」の間の損益通算
○確定申告による証券口座の損益通算
 ・「特定口座(源泉徴収あり)」は当該金融機関内での分離課税が完結
  しており申告不要が選択可能であるが、確定申告することも可能
 ・確定申告により複数の「特定口座(源泉徴収あり)」の間の損益通算が
  可能となる
 ・「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」は当然、確定申告が必須
○証券口座間の損益通算を検討する事例
 (配当所得を考慮せず、単純化のため税率20%で設定)
(設定例)
 ・A銀行 譲渡金額 1000万円 取得費 1200万円
      譲渡損  200万円 税額 0
 ・B証券 譲渡金額 1100万円 取得費 1000万円
      譲渡益  100万円 税額 20万円
≪申告不要とした場合≫
 ・譲渡損 200万円 譲渡益 100万円 税額 20万円
≪確定申告による損益通算の場合≫
 ・譲渡損 100万円 税額 0(税還付20万円)
 ・譲渡損は来年以降3年間に繰越控除可能
○証券口座間の損益通算のデメリット
 ・譲渡所得、配当所得が表面化する

 譲渡所得、配当所得が表面化するデメリットについては、次の機会に説明します。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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