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日常に祝祭的な亀裂を入れる映画『ディストラクション・ベイビーズ』
真利子哲也監督『ディストラクション・ベイビーズ』
2016年公開の日本映画
柳楽優弥演じる泰良は何かに取り憑かれた様に喧嘩に明け暮れ、彼に出会った菅田将暉演じる裕也は「面白そうだから」という理由で行動を共にする。道行く人に襲いかかる泰良と、それを面白がりながら見ている裕也、2人の行動は次第にエスカレートしていき...みたいなあらすじでした。
先ず結論から言うと、最高に面白かったです。特に柳楽優弥演じる泰良のオーラと言うか、街中で絶対に出逢いたくないタイプの「ヤバい奴感」がこれでもかと感じられて凄かった。劇中ではほとんど台詞を口にしないので、例えば彼の内面的な部分を言葉で掘り下げるシーンは無いのですが、そんな事は全く気にならない程に表情と佇まいで語りかけてきます。
狂気と若者の満たされなさが全開になった青春ロードムービーとでも表現できるかもしれませんが、言葉にするのも慊りないし陳腐なので気になった方は観て欲しいです。くどくど説明をせずに解釈可能性を視聴者側に委ねるタイプの映画が好きな人には刺さると思います。
そしてこの映画の後半に祭(喧嘩神輿)のシーン出てくるのですが、それがとても印象的でした。泰良(柳楽優弥)の弟である将太はその祭に惹かれるように喧嘩神輿を見つめているのですが、泰良は同じ地域には居るけれど少し離れた海岸でまたも知らない人を殴り倒してるんですね。
つまり、泰良にとって一般的な祭には既に祝祭的な意味合いが無くなってると取れる気がしました。確かに、現代日本の一般的な祭は祝祭的で無礼講であるかの様に見えつつも規制があったり集団行動の統率が上手く取れてるじゃないですか。良くも悪くも社会化されてるんですよね。
社会の内側でパッケージングされ、「祝祭的であるかの様な」祭を眼差す将太と、徹底的にアウトサイダーとして社会に突発的な祝祭空間を生み出す泰良の対比が面白かったです。俺は泰良の様にはなれないしなりたいとは思わないけど、キャラクターとして凄い魅力的だなぁと思いました。
それとですね、劇中音楽を担当している向井秀徳が素晴らしいです。冒頭シーンからBGMが流れるのですが、彼の音楽を聴いた事のある人は一発で「うおー、これは向井秀徳の音や!!」ってわかると思います。
ウォーターフロントに位置する冷凍都市で繰り広げられる素晴らしい群像劇でした。