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舞台「デュラララ!!」~円首方足の章~【ステージレポート】

原作小説もアニメ版も、国内外問わず幅広い人気を博している「デュラララ!!」。2021年8月、待望の舞台公演が東京・愛知・大阪の3都市で開催!
日本青年館ホールにて行われた白熱の東京公演の模様を、オリジナル写真と共にお届けします。

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非日常に憧れる竜ヶ峰帝人(橋本祥平)が、地元を離れて東京・池袋にある来良学園へと入学するところから物語は始まる。幼なじみである紀田正臣(杉江大志)と久々の再会を果たした帝人の前には、想像以上の非日常が溢れていた――。

標識をへし折り、自動販売機やポストを軽々と投げる平和島静雄(伊万里 有)。何かと危険な香りのする情報屋、折原臨也(猪野広樹)。漆黒のバイクに乗った首なしライダー、セルティ・ストゥルルソン(佐野夏未)……池袋に来て間もない内に、この街に存在する〝非日常〟が、次々と帝人の前に現れる。池袋の住人である正臣すら驚く偶然の出会いに、観客もどんどんその世界に引き込まれてゆく。

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様々な人物の視点が交錯し、少しずつ真実が紡がれてゆく物語が特徴的な本作。
一体どのように、あちこちで起こる同時系列の事件や出来事を表現していくのか、瞬間的な場面転換をどう見せるのか。
2次元を3次元化する過程においてきっと最も難しいであろうその課題は、2階建て構造の回転型巨大セットによって見事なまでにクリアされた。
メインキャストもアンサンブルも関係なく、全ての登場人物をもって縦横無尽に機構を動かし、次の場面に備える。帝人たち主要な登場人物を始め、カラーギャングから通りすがりのカップルまで、「デュラララ!!」の世界における池袋の街を構成する者たちが、舞台上に〝池袋〟を作り上げているという事実にワクワクさせられる。
キャスト全員で同じところを目指して走るという、演劇ならではの魅力を多分に感じさせてくれた。

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また、プロジェクションマッピングによってセットに映されたリアルな池袋の街には多数のキャラクターが行き交い、作品世界を作り上げる。舞台のオープニングでは、アニメのカットバックのように次々に登場人物が紹介され、アニメ1期テーマソングでもある「裏切りの夕焼け」が流れる。こんな素晴らしい舞台の幕開けに、胸が熱くならないわけがない。
加えて、本作でセルティの声を担当するのはアニメでも同役を演じた沢城みゆき。佐野の動きに合わせてセルティの声が響く。
舞台ならではの要素として挙げたいのがセルティのバイクアクション。漆黒のバイクがものすごいスピードで板の上を駆け回る姿は、もうそれだけで本舞台を観にきて良かったと思わせるほどの説得力と迫力がある。

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デュラハンと呼ばれる妖精であるセルティは失った首を求め日本にやってきたのだが、そんなセルティを幼少期から愛し続けているのが、闇医者の岸谷新羅(安西慎太郎)。今回の舞台では、そのセルティの首のありかを巡り様々な人物が絡み合っていく。その中で新羅は、人間としてではなくデュラハンとして見た〝世界の価値〟に興味を示しているようだった。首を追い求めるセルティと、ありのままのセルティを想ってやまない新羅の関係性にも注目してほしい。

常にワゴン車に乗って移動しては、とある目的を果たす〝ワゴン組〟、ドタチンこと門田京平(君沢ユウキ)、狩沢絵理華(田上真里奈)、遊馬崎ウォーカー(大谷 誠)、渡草三郎(影山達也)についても触れたい。
電撃文庫が大好きなオタク気質の狩沢と遊馬崎、アイドルオタクの渡草、それをまとめるリーダー格の門田……絶妙なバランスで成り立っている4人だが、とにかく会話のテンポがいい。狩沢と遊馬崎の電撃マシンガントーク、渡草のマイペース感、冷静で頭の切れるドタチンのツッコミ――このカンパニーの笑いの部分も担っている彼らは、要所要所で観客に緩急の〝緩〟を与えてくれる存在でもある。

また「露西亜寿司」のロシア人店員、サイモン・ブレジネフを演じる磯貝龍乎のアドリブにもたくさん笑わせてもらった。街中でチラシを配り客引きをするサイモンはところどころおかしな日本語を発するキャラクターなのだが、それに加えて客席と対話するようなアドリブセリフ、アクシデントがあっても全て面白くしてしまう磯貝の対応力が素晴らしい。ハラショー!
またサイモンは本作においてストーリーテラー的な役割も担っており、複雑に絡み合った池袋の解像度を上げてくれるとてもありがたい存在でもあった。池袋最強の男・静雄に唯一立ち向かえる力を持つサイモンの腕っ節にも注目。

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静雄と臨也のいがみ合いも見逃せない。高校時代の出会いからとにかく争いの絶えない2人のやり取りは、恐ろしさとコミカルさの両方を兼ね備えている。
「Sparkle note」のインタビューで「相手に一切の隙を与えない」と語っていた通り、猪野の芝居には全く隙が無い。彼が笑うたびゾクッとする感覚があったが、まさに〝臨也が現実にいたならば〟を舞台上で体現していた。静雄も同様に、自動販売機を軽々投げ、郵便ポストを振り回し、身を傷つけられてもビクともしない。立ち居振る舞いも表情も声も、全てが静雄だった。伊万里は「(静雄を)作り上げるというよりか、〝できちゃってた〟」と語っていたが、そこにいるだけで存在感たっぷりの静雄を好演していた。

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そして、そんな登場人物たちに翻弄されていくのが帝人である。行く先々で起こる不思議な事象を目の当たりにしながらも、限りなく〝普通の人〟である帝人。クラスメイトの園原杏里(福島雪菜)への淡い恋心も覗かせる彼にも、なにやら秘密があるようで……。
帝人を演じる橋本の〝普通〟の中に潜む〝狂気〟の芝居が美しかった。表情で、全身で、非日常を浴びながらニヤリと浮かべる笑みに、帝人の狂気性を感じさせる。少し変わった名前の普通の高校生にしか見えない彼は、一体何者なのだろうか……?

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そんな帝人の隣に寄り添う親友・正臣は、帝人と共に初めてこの〝池袋〟にやってきた私たちにとっての優しい案内人だ。明るくて軽い性格の彼はナンパに繰り出しては振られる日々を送っているようだが、帝人を気遣い、池袋に潜むあらゆる危険について教えてくれる。演じる杉江本人の持つ明るさも相まってか、気持ちのいい軽さで正臣を演じてくれていた。常に周りをよく見ている正臣。楽しげな様子、見守る表情、怪しむ感情――シーンごとの居方が素晴らしかった。

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語りきれないほどの魅力がまだまだある本作だが、あとはぜひ劇場や配信で直接触れて感じていただきたい。
2次元と3次元の狭間……まさに〝2.5次元〟というジャンルど真ん中を貫いた素晴らしい演劇作品に、ただただ感動させられるはずだ。

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感動に浸りつつ、ゲネプロ前の会見で杉江が言った言葉を思い出した。「とにかく再現度を、池袋の街並みをいかに表現するかを見てほしいです」。
本作品の再現度は、スタッフ・役者陣による原作への並々ならぬ敬意があってこそ。原作及びアニメ版を観たことがない方は、ぜひこの機会にそちらにも触れてみてほしい。そして舞台という〝非日常〟空間でこの作品が形作られることにも、改めてたまらない気持ちになる。

座長の橋本が「本来なら、去年やっているはずだった1年越しのリベンジ。みんなで誓った再演をようやく皆さんに届けられます。非日常的なことをするのが難しい世の中で、身近な〝非日常〟である演劇を、日々日常を全うする皆さんに全力で届けたいです」と力強く誓ってくれた通り、手を伸ばせばそこには素敵な非日常が待っている。
観た人それぞれが胸をときめかせる瞬間が、きっとあるはずだ。

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舞台「デュラララ!!」~円首方足の章~

【日程】2021年8月1日(日)〜7日(土)
【会場】東京・日本青年館ホール
【日程】2021年8月13日(金)~15日(日)
【会場】愛知・名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール
【日程】2021年8月20日(金)~22日(日)
【会場】大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
【原作】成田良悟『デュラララ!!』(電撃文庫刊)
【原作イラスト】ヤスダスズヒト
【演出】毛利亘宏(少年社中)
【脚本】高木 登(鵺的)
【出演】橋本祥平、杉江大志、福島雪菜/
佐野夏未、安西慎太郎、君沢ユウキ、大谷 誠、田上真里奈、影山達也、夢月せら、吉高志音、南 由樹、磯貝龍乎/
戸舘大河、村上 渉、菅野慶太、榮 桃太郎、栗本佳那子、遠藤拓海、朝間 優、伊藤ナツキ
伊万里 有/
猪野広樹/
沢城みゆき(声の出演)
durarara-stage.com
Twitter


伊万里 有さん×猪野広樹さんSPインタビュー
noteにて全文無料公開中

舞台「デュラララ!!」~円首方足の章~
橋本祥平さん×杉江大志さん掲載バックナンバー
『Sparkle vol.39』

撮り下ろしグラビア&対談インタビュー9P
+綴じ込み付録 特製ソロピンナップ


テキスト:田中莉奈
写真:田代大樹

©️成田良悟/KADOKAWA/舞台「デュラララ!!」製作委員会

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