一週遅れの映画評:『新感染半島 ファイナル・ステージ』絶望と希望の等価交換。
なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。
今回は『新感染半島 ファイナル・ステージ』です。
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ホラーとかスリラー映画ってもうほとんどパズル的だとは思うのよ、つまり前半で作った伏線をどれだけ気持ちよく回収していくか?っていう構造が第一にあって、それでその間でいかに恐怖を煽るシーンをはめ込んでいくかっていう……いや、もちろんそういった部分無くひたすら「怖さ」で押していくタイプの作品もあってそれはそれで好きなんですけど。
って話したところで思いついちゃったんだけど、エロ系もそうゆう二極化ってあるよね。わかりやすく言えば「泣きゲー」と「抜きゲー」っていうさ、ほら80-90年代の「エロ漫画はエロさえあれば何をしても良い」って言われた時代があってというかそれを言った森山塔が代表なんだけど。でゼロ年代のアダルトゲームにおける潮流があり、いまは同人DL販売で即物的なエロがバンバン売れてて……やべぇなどうやって映画の話に戻ろうw
えーと、でこの『新感染半島』はどういうのかっていうと……そもそもこれホラーなのか?確かにゾンビは出てくるけど、それは恐怖というよりも「危険と死」の偶像になっていて怖さは正直薄い、ものすごくギミック的というか「物語を狙った方向へ進ませるための装置」でしかないのよね。
そういうので強制スクロールさせながら伏線を見せて回収していく。そういう作品で、でもねぇそれがすっげぇ面白いの。ズルよねーこんなの、「うわーここ絶対あとで重要なポイントになるじゃーん」と「ほらほらほらぁ!やっぱりぃ!」までをグイグイ引っ張って見せられたら、そりゃあ面白いですよ。
前作は「列車の中」っていう閉鎖空間での面白さがあって、今回はオープンフィールド的な(あくまで「的な」だけど)場所が舞台で、そこに何がブチ込まれているかっていうと『頭文字D』と『マッドマックス4』っていう、やっぱこれホラーじゃねぇわw
いやでもね、ゾンビパンデミックで半島が無政府状態になって崩壊している、そこで生き延びてる家族が出てくんだけどさ、そこの長女が……たぶん中学生ぐらいの設定ぽいんだけどめちゃくちゃカッコいいのよ。ガレキだらけの街を4WDの、車詳しくないからわかんねぇなぁ、ええとサーフみたいな?ランクル?とかああいうアウトドア用っぽい車を操って爆走すんだけど、もう道なんかボロボロなわけ、そこを高速で走り抜けて急カーブをガンッ!てサイドブレーキ引いてドリフトして走破していく。それもドリフトで振ったケツで大量のゾンビを吹き飛ばしながら。
もうね車体の横に「藤原とうふ店」ってゾンビの体液で書かれてるんじゃない?って幻覚を見るくらいにはハイパーアグレシッブに「人が轢ける『頭文字D』」感が満載。
そんで後半、その家族vs半島を牛耳る軍人崩れがお互い車にのってバトルするんだけど、もうね『マッドマックス』完全に『マッドマックス4』見てる気分。しかもダレそうになったらゾンビ投入で緊張感をマシマシにできるギミック付き、うひょー!すげぇー!としか言うことが無いw
とくに本作のゾンビって「光に反応する」習性があるのね、だから夜間はおとなしくって昼間元気(?)なんだけど(これ「せっかくゾンビ暴れさすんなら、明るい方が面白いよねー。暗いところでわちゃわちゃしても見にくいじゃん」っていう当たり前だけどホラーの体裁としてやりにくいことをアッサリ乗り越えてて、そういうとこも好き)、さっき言った中学生の娘が車で追われてて、それをふり払うために「急ブレーキ→車体がスピン→一瞬だけヘッドライトのスイッチを入れる→路地に潜むゾンビが光に反応する→後続車に襲い掛かる」っていう超絶技巧を見せたりで、もう超興奮する!
ただね、それだけじゃなくて。さっきも言ったけどこのゾンビは光に反応するの、だからカーチェイスシーンで敵が主人公の乗ってる車を煌々と照らしてゾンビに襲わせようとするわけ。
本来ホラーで「光に照らされる」ってまぁ勝ちフラグっていうか生存への期待が持てるシーンじゃない?それを「光で照らされてるほうが恐ろしい」に意味を書き換えてるとことか、既存のホラーに対するリスペクトと「それ以上のものを作りたい」って意志がビンビンに出ててすげーいいなぁ。
それと最初は主人公たちが4人でゾンビだらけの半島に乗り込む。それは金が目的で、人生に行き詰ってるから「絶望」背中を押されていくことになる。
で最後は4人で生還するのだけど、それがね金は回収できなかったのだけど「希望」を持って半島から脱出することになるのよ。
それがめちゃくちゃグッときて……「絶望」と「希望」ってベクトルが正反対なだけで、その実は人間の心が持つ「エネルギー」であることは間違いない。だから「絶望」を携えて向かい、「希望」を持って帰ってくるって、なんというかある種「恐怖をエンターテイメントに昇華する」っていうホラーだけに許された「等価交換」なんだな。っていうのを凄く感じて……だから最初あたりで「これホラーか?」って言ったけど、そういう意味では思いっきり「ホラーでしか無しえないこと」をしている映画でしたね。
その「絶望も希望も、どちらも人を生かしえる」ことを肯定する最後の一言にね、私マジで泣いちゃったしね。
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次回は『大コメ騒動』評を予定しております。
この話をしたツイキャスはこちらの16分ぐらいからです。
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