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一週遅れの映画評:『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』2020レスバトル最弱決定戦・決勝

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』です。

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 まず最初に言っときたいのは、なんか「安楽死の是非を考える」みたいな触れ込みは完全に嘘。ぜーんぜんそんな話じゃなかった。だからそういうのを期待して見に行くと超肩透かし食らう。
 
 全体としての感想は「あれ?いまって平成の、それもヒト桁年代だったけ……?」って感じ。なんというか「ドクターデス」「ブラックファイル」ってタイトルから漂ってくる古臭さ通りの内容で、まずこう依頼を受けて安楽死をさせる奴が最終的に吐露する欲望が「人が死に向かう姿が美しいと感じ、それが見たいから」。
 あー……たしか90年代の終わりぐらいに快楽殺人犯ブームってありましたよね?あの『FBI心理捜査官』あたりで話題になったやつ。確かあの時代にそういった犯人を「とりあえず出しておけば、最先端っぽくなるんじゃね?」ぐらいの感じで雑に乱発されたしょーもないタイプのドラマ。
 それでもその中には名作もいっぱいあって……パッと思いつくのが『沙粧妙子―最後の事件』とかなんだけど、はっきり言って当時のテレビドラマだったとしても、その動機は「安っぽい!」レベルですよ。おい今は令和だぞ、いい加減にしろ!
 
 まぁそれでもね「安っぽい理由で殺される被害者」みたいなアイロニーの出し方ってあるんですけど、それもまったく無い。その上、表面上の理論武装である安楽死の考え方も「インターネットで”安楽死 肯定”で検索したら3秒で見つかる」ぐらいのペラペラ理論で……なんだろうなー「はい、安い理論ですー。しかもこいつは快楽殺人者ですー。安楽死は否定すべきですよねー」って結論に「いかにわかりやすく誘導するか?」のRTA(リアルタイムアタック)やってんじゃねぇんじゃねぇんだぞ、バカ!
 
 だから本当は緊迫感あるはずの犯人と刑事の意見のぶつかり合いもすっげぇ間抜けというか
犯人「私は苦しんでる人を安らかにしただけ」
刑事「違う、お前は自分の欲望で殺したんだ」
犯人「ぐぬぬ」

 レスバトル、弱っ。
 犯人の主張も弱ければ、刑事の反論も的を射ていないし、それで「ぐぬぬ」なっちゃう犯人のレスポンス能力の無さ……なに?中学生の口喧嘩?
 
 それでね、ひとり腎臓に病気を患ってる11歳の女の子が出てくるんですよ。父親だけの片親で、ずっと小児科に入院している。
 その子のとこにドクターデスが来て「お父さんだって限界」「移植を待ってるあなたは人の死を願っている」みたいなことを言って安楽死に誘導するわけ、いやバカじゃないの?たぶん11歳の子供でずっと入院してて、その中で自分より幼い子たちが死ぬ姿にだって何度も直面しているわけで……そのぐらいの思考や悩みなんて無いわけないし、たぶんマジでそういう状況にいる子供って、その程度のペラい問題なんて当然に乗り越えていると思うんですよ。11歳ってそこまで愚かじゃないからね。
 だからこれって「こういう誘導で安楽死に向かわせるんですー犯人は悪い人ですねー」というアホ展開に加えて「子供なんてこの程度のことで揺らぐだろ」っていう軽視があって、二重に人をバカにしているシーンなんですよ。いやなんか本当に腹立ってきたわ。
 
 でも絵面もやってることもレスバトルの弱さも、吹き出してしまうくらい間抜けで、そういう馬鹿馬鹿しさで怒りきれないっていうか……。
 マジで爆笑しちゃったのが、ドクターデスに安楽死を依頼した人たちから証言を聞いて似顔絵を作成するんですけど、その似顔絵がそれぞれで全然違う。「ドクターデスを庇ってる」と判断した刑事たちは「こういうときって後半に出てくる証言ほど、嘘が無い(前半で嘘ついて違う顔になってるから安心して)」っていう、たぶんトンデモ理論だとおもうんだけどw それでその後半の証言だけピックアップして完成した似顔絵が表示されたとき、思わず。
 
「柄本明だ」

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 って吹き出しちゃったのよ。もう似顔絵とかじゃなくて、「目の前に柄本明の写真を置いて模写した」レベルの柄本明で、いやこんなん絶対笑うわ。ズルいって。
 
 私だってね、作中人物を役者の名前で認識するほど野暮じゃあないですよ。容疑者が数人いて、誰かわかんない→この似顔絵、だったら「ほーん」って普通に見れたと思う。
 だけど違うの。この作品で柄本明の顔が出てくるのは、この似顔絵シーンが初なの。だから作中での登場が無い、名前もついてない、って状態でいきなり柄本明そのまんまの似顔絵出されたら、それはもう「柄本明」じゃん!
 
 正直映画館じゃなくて家でゲラゲラ笑いながら見たかったわ……いや、見たいか?このレベルの作品を。
 
 とにかく「1990年代後半に2時間のテレビドラマでやっても普通に埋もれる」ような映画でした。いやー酷かった。

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 次回は『君は彼方』評を予定しております。

 この話をしたツイキャスはこちらの20分ぐらいからです。


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