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一週遅れの映画評:『マイ・ダディ』密やかな偶然を奇跡と呼ぶのなら?

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『マイ・ダディ』です。

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 主人公がキリスト教の牧師で、妻は不幸な事故で亡くなっています。娘が一人いるんだけど、その子が急性白血病になってしまいました。その急性白血病の検査過程で、主人公と娘は生物学的な血縁関係にないということが判明してしまいました。そしてこの作品はハートフルホームドラマです。
 
 はい、この設定段階で「こんな話かなー?」っていうのを想像してみて?どう?できた?
 それです。そのまんまの内容。
 
 いやこの前提条件で大どんでん返し(byとんねるず)なんて期待してないけどさ、それにしたってあまりにもストレートな展開で逆にこの見えてる起伏だけでよく2時間の作品を構成できたな!?と感心しそうになるぐらいでしたよ。
 つまんないよ、正直つまんない。たぶん2時間枠のテレビドラマで放送しても視聴率は惨敗するだろうな、ってぐらいあらすじにフックもないし……それでもねぇ、ところどころ「あー……私これ、面白くはないけど、嫌いでもないかも」って感じる部分はあったんですよ。決して、ここは強調しとくね【決して】!好きではないです、ただ嫌いではない。普通よりもちょい上、ナシ寄りのアリ、そういう位置……まぁ実際はこうやって話すとき一番困るんだけどw本当は「アリ寄りのナシ」ぐらいが一番喋りやすいんだけどねぇ。
 
 そもそも私、宗教家が主人公の作品てけっこう好きなんですよ。というのも個人的に「人間はわりと気まぐれで善行をしたりするし、なんでもないときは割と善意が先に立ったりする」と思っていて、でもフィクションで理由のない善行をしたりすると、まぁなんかそこに疑問を持たれやすいじゃない?物語って「人はふらっと得にならない善行をする」みたいな現実を描くのに向いてないんですよ、起承転結を欲しがるっていうか、行動には理由が伴っていて欲しいって欲望があるわけで。
 そこで宗教家って属性があるとそこに説明がいらなくなるので、私の中では基本プラス要素として働くのね。それに加えてそういうキャラ設定だと「信仰を試される」みたいな展開ってしがちで、この作品でもそういった部分は無いわけじゃないんだけど、かなりさらっと「まぁ一瞬だけ神の愛を疑うときもあるけど、一晩あれば思い直せますよ」ぐらいの描き方で。
 それはね、すごく正しい。現代日本で宗教家、それもキリスト教徒なんて「わざわざやってる」ぐらいのそれなりにレア特性じゃない?そういう人たちが簡単に信仰を揺さぶられたり、改宗するわけがないんですよ。その強度を考えずに軽く「信仰を試される」的な展開をされるのが好きじゃあないから、その点も好感は持てる。
 
 あとはたぶん何か所か有名な宗教画の構図を引用してるのかな?って場面があって。私は絵画に全然詳しくないからはっきり言えないんだけど、確信が持てるのは主人公と妻が出会ったときの回想シーンで、妻になる女性が初対面したとき、こう頬杖みたいのをついてるんだけど。たぶんこれってラファエロ・サンティの「システィーナの聖母」の天使……えっとね「システィーナの聖母」でググってもらうとわかるんだけど、これの下にいるじゃん天使が2匹……天使って数え方「匹」でいいのか?世界観がメガテンじゃない?まぁいいや、この右の天使と同じような姿勢になってるのよ。
 他にも妙なわざとらしさのある構図が幾つかあって、たぶんなにかの引用なんだろうなぁ~……って気配がある。こういうのはテレビドラマよりも映画でやったほうが映えるから、そこもまぁ良いところでしょうかね。
 
 それで一番好感持てたのは、主人公が牧師になった理由が一切描かれていないんですよ。まぁ住居に隣接している教会持ちだから、土地と建物が揃っていて恐らく両親が牧師で~みたいなバックボーンは推測できるんだけど、別に明示されてるわけじゃあないから、主人公が目覚めた理由は不明なわけ。
 でもさっき言ったように「理由がなければ善行をしない」っていうのは物語の引力に捕まってる思考で、それと同様に「なにかきっかけがなければ信仰しない」っていうのもそういったわかりやすいストーリーを欲するだけの願望ではあるのね。だから「よくわかんないけど、なんかそうなっていた」ことって現実にはいっぱいあって、そのあらわれの一つとしてこういった表現は「めちゃくちゃ良いな」とは思うんですよ。
 ……たぶんそんなの狙ってないと思うんだけど。でも話の主軸に病気と生殖があるのって、ある種「生きてるとそういう偶然はある」って話としてまとめれるわけで、その「偶然」の劇的ではない表出としては奇妙にリンクしていて、うん、ここは良かった。
 
 ただまぁ面白くはないし、この「良さ」ってたぶんこっちのコンディションとか精神状態にめちゃくちゃ左右される部分だから、これは「たまたまその日の私にはハマった」ってだけだと思う。だから見る必要は無いよ、今日の話を聞いて「名作なの?」って感じたとしたらそれは気のせい。いや、私の話術かな!

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 次回は……絶対上手く喋れないであろう『DIVOC-12』評を予定しております。

 この話をしたツイキャスはこちらの20分ぐらいからです。


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