心地よい「いま」が、理想の「みらい」をつくる~ヨガと幸福度ランキング1位の国から思うこと~

平凡≠当たり前


 私は2019年当時はヨガのレッスン教室へ足しげく通っていた。
担当の先生はいつも同じというわけではないが、何人かいるどの先生もポーズをとるときに「自分のここちよいところを探して」と同じニュアンスで声掛けしていたことが印象的だった。
 毎日はどこまでも一方通行に淡々と続き、地味で単純だったけれど、平和な世界だった。
 ニュースで「幸福度ランキング1位の国」は北欧にある、と耳にして興味を持ったのもこの頃だったと思う。

ネガティブに支配された世界


 そして、コロナがやってきた。
 世界中でステイホームが騒がれる中、日本でも自治体による緊急事態宣言が行われ、県外への移動は禁じられた。テレビではひとりひとりの個人の行動が大切であると叫ばれ、マスクを着用していないと周りの目が気になった。同時に家にいることが多くなり、生活の質について様々なレベルで見直されていった。
 私は、「おかしな世の中になったなぁ」と思いながらも、同時に「みんな我慢しているんだから、がんばらなきゃ」と相反する感情を抱えていた。
 家の居間にある液晶の四角い箱の中から流れて来る音はポジティブな内容がほとんどなく、見ていると気分が滅入った。ハッピーな良いことは何も起きないような気持ちになってくるので、以前より見る時間が減った。
 今振り返っても現実とは思えないような出来事だった。しかし、「ありえないことはありえない」のがリアルだという大きなことを学んだ気がする。
 想像できることは大抵起きると聞いたことがあるが、想像以上のことも起きるときは起きる。ましてや、コロナのようなウイルスによるパンデミックは一部の学者達が元々危惧して警告していたので、なおさらだ。
 当時読んでいた本の中に、とてもお気に入りの本があったのでここに紹介しておく。

幸福度ランキング1位の国


 『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内都喜子・著,ポプラ社,2020.1)という本は、日本とフィンランドの両国で生活した経験のある著者が、フィンランド人の「幸福」「ワークライフ・バランス」などへの考え方を分かりやすく紹介している良書だ。
 新書なのでさらっと読めるのに、内容はどれも濃くて興味深い。表紙にある「1人当たりのGDP日本の1.25倍」という文字にもインパクトを受けた。
 北欧諸国では一般的に社会福祉制度が整っているのは勿論のこと、教育へ力を注いでいることは有名な事実だが、さらに生産性も高いとすれば、その秘密を知りたいと思うのは当然であろう。
 本によれば、フィンランドではオンオフの切り替えがはっきりしており、残業はほとんどしない。余暇では自然とのふれあいを楽しみ、リラックスに集中する。そして、しっかり疲れをとっているからこそ、休みが明けにまた全力で仕事に取り組んでいけるのだ。
 著者は、それでも「ウェルビーイングを維持、もしくは高めつつ効率もアップさせるというのは、それほど簡単ではない」とした上で、フィンランドでは効率アップのために積極的かつオープンでフラットな対話がなされているとしている。

自分を見つめる


 さて、話はヨガの話に戻るが、私は心地よさとは「いま」を大切にすることだと体感して改めて思っている。ヨガそのものが元々仏教の生まれたインドの宗教的な儀式から来たので当たり前のことなのだが、禅や仏教の教えと同じなのである。
 例えば、ヨガの最後にあるシャバーサナというポーズは瞑想する時間だが、これが非常に心地よい。一日の疲れが体中からスーッと抜けていく感じがする。私はこのシャバーサナで、余計なことを考えず、「いま」を見つめるという時間が大好きになった。
 思えば、コロナがあるより前は人間としての精神を無視して「あるべき」「やるべき」ことを優先する場面が多かったように思う。
 だからその反動で休日は旅に出て、仕事帰りにヨガに行っていた。私は自分をまるで回遊するマグロのように活動していると思っていたが、本当に出かけて何かしないと息ができないような気がしていた。
 自分と対話して、今を大切にする瞬間が足りていなかったように思う。

さいごに


 先の本を読んでから、フィンランド式ウェルビーイングの考え方を取り入れた上で、今後について、自分らしくよりよいワークライフバランスを考えていきたいという新しい意欲が湧いている。
 今はまず内を整えたい。家の中も、車の中も、身体の中も、心の中も。ひとつひとつ整えてゆき、よい経験や気持ちを生み出すこと。私の目標は、その「ひとつひとつ」が点となって、点がつながってゆき、やがては歩いてきた道となること。もうひとつのイメージは、「ひとつひとつ」が良い循環となって、雪だるま式によい方向へ向かうようにもっと人生を楽しむこと。
 そうやって「いま」を大切にしていく先に、よりよい未来があると信じている。


参考図書
・堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』ポプラ社,2020/1.

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