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動かせない電柱

動かせない電柱

技術者としての職場を離れ、社内で事務職に転向しました。この異動は「職能転換」と呼ばれています。

営業所という組織において、まず料金担当という事務職が重要な役割を果たしていることが分かりました。入社以来、事務職は技術職のサポート役であるとの認識があったため、驚きでした。

事務職が重要なのは、総務・労務・経理・資材などの分野でも同じです。経理といっても、物品の購入や予算管理だけでなく、電柱の敷地管理なども担当しています。
電力会社によって違いがあるかもしれませんが、一般のお客さまの敷地等にある電柱が住宅の工事等で邪魔になる場合には、電力会社に連絡し、窓口として対応するのがこの担当者です。

営業所では、昔から行われてきた業務であり、私が事務職に転向して最初に担当した業務でした。職能転換して技術屋から事務屋になってすぐに、電柱の位置に関する書類の記載内容がおかしいと感じました。
それは「この電柱は建設時の契約により、場所を移動できない」という部分でした。

電柱は、お客様個人の土地(いわゆる民有地。行政の土地ではないもの。)に「承諾書」という契約書をもとに建てさせて頂いています。その事業所では、会社で定めた承諾書の他に、造成・分譲地用の承諾書というのがあり、これは「移転できない」と教えられました。

技術屋として20年ほどの生活の途中から、法律に興味を持ち、行政書士の資格を取ったり、大学の法学部にも通ったりしていましたので、これは変な話(はっきり言えば間違っている話)だと思いました。

「承諾書とは、ここに建てさせてください。」「いいですよ。」と、その時の所有者と契約したものですから、その契約内容は土地の所有者が変わると当然には承継されません。

従って、電力会社の土地の担当者としては、経緯をお話しし、納得してもらう必要がありますが、どうしても了承が得られなければ、協議しなければなりません。

従って、「動かせない約束の承諾書」は、当事者間でしか効力はありません。そんなことも確認しないで、その部署の上司は、代々この承諾書を使っていたのでしょうか。

もちろん、こうした扱いが行われる原因はあります。分譲地では敷地に電柱が無い土地の方がお客さまに好まれる傾向があるので、分譲会社との協議し、支障が少ない電柱の場所を決めてから売り出されるからです。

ちなみに、承諾された方には、年に1度、敷地料としてお金を支払うのですが、それが支払いできていない場合は、法定利息を付けて精算します。
その法定利息が民事の利息であり、これも間違いだなと思っていて、本社での研修会でもその旨意見を述べたところ、その場では、お茶を濁すような回答でしたが、数年後に全社的に商事の利息に変更されました。

多くの場合、組織内で理屈を述べてみても、
「以前からこのやり方でやっている。この営業所では、このやり方で書式も作っている。」
というような考え方で物事を押し通そうとします。

会社都合はわかりますが、あくまでお客さまのご理解があってのことで、決して動かせない電柱ではありません。

ですが、これはいつでも安易に電柱が動かせるという話では決してありません。こんな話をすると、逆にすぐ無意味な要求や、過度の要求も認められるという誤解をする人がありそうな昨今ですが、お客さまのご理解とご協力があって、円滑な電力供給が出来、多くの人の生活が守られるという認識を持っていただくことは不可欠です。

<日曜日に電力の現場で学んだことを振り返る>


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