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「いい声はいい歌謡曲を呼び寄せる。」
どうも!オーキです。「歌謡曲に魅せられて」今月も風の吹くまま気の向くまま、音楽雑談を更新します!ガチョーン。
谷啓さんの往年のギャグガチョーン。1周回って新鮮に感じられるように、懐かしの歌謡曲もカバーきっかけで好きになることありませんか?いい声はいい歌謡曲を連れてくる!今回はカバーから気になった歌謡曲を紹介したいとおもいます。
■骨身に染みるSAKEROCKの「スーダラ節」
先日ネットニュースを見ていたら、星野源さんといま朝ドラに出演中の浜野謙太さんがメンバーだったバンド、SAKEROCKのストリーミング配信‼というニュースがありました。そこで久々に思い出した1曲に、インストバンドだった彼らがカバーしたハナ肇とクレイジーキャッツの「スーダラ節」がありました。
♪「スーダラ節(cover)」(SAKEROCK/2006)
スーダラ節といえば、「分かっちゃいるけどやめられねぇ」。このフレーズが語っているように、己の欲望に流されっぱなしのふがいない歌に聞こえますが…星野源さんがボーカルをとってみるとあら不思議。スーダラ節をじっくりコトコト聴かせてしまう「ほっこり感」が残りませんか?どーしようもない歌詞も、なんだか身に染みてくるわーとなってきます。
星野節に変えたら、まるでいいお出汁につかった大根のようなほっこり感になりましたよ~奥様!耳の中からほっこりする新感覚のスーダラ節です。
そんなSAKEROCKバージョンはオリジナルとは全く違うゆったりとしたテンポと歌のアプローチで、欲に流されっぱなしのどーしようもなさを骨身に染み込ませる、ありがたい説法のようです。
心落ち着く歌声と、霞が漂うようなバンドの音色に包まれたら、部屋の中でもマイナスイオンを浴びたような心地よさです。己のふがいなさも「♪スイスイスーダララッタ」と歌えばさらりと後ろめたさを流してくれる、ヒーリング効果も感じるカバーソングです。
■植木等が歌う「スーダラ節」
オリジナルの「スーダラ節」は植木等さんが歌っています。曲が大ヒットした裏側では、お寺育ちで生真面目な性格だった植木さんが歌うことをためらったそうです。悩んだ末、僧侶であるお父さんに相談したところ「分かっちゃいるけどやめられねぇ」は、親鸞の教えに通じると言われたことで吹っ切れて歌うことができたそうです。
まずはそんな葛藤があったことも感じさせない歌声に注目して聴いてみて下さい。
♪「スーダラ節」(ハナ肇とクレイジーキャッツ/1961)
コミックソングらしい陽気なメロディーとシニカルな歌詞。そこにいい感じに力が抜けた植木さんの歌声がのることで、コミカルで軽妙な歌の世界観を生み出しています。この歌声は乗り気でなかったレコーディングで、植木さんが疲れて適当に歌ったテイクが曲に合っているとウケてしまいOKテイクとなったそうです。
■分かっちゃいるけどやめられねぇ。に救われる。
私がはじめてスーダラ節を知ったのは、1987年放送の「およびでない奴」というコメディドラマでした。主人公の祖父役で植木等さんが出演していて、劇中にクレイジーキャッツの曲が随所に歌われるのを毎回楽しく見てました。その中でも「スーダラ節」や「ハイそれまでョ」を歌う植木等さんが格好よくてクレイジーキャッツの曲の魅力にハマりました。
そこからまた20年の月日が流れ、離婚をやらかし人生のどん底モードに入った時に、頭にスーダラ節が浮かびました。植木等さんをマネて「♪ア、ホレ スイスイスーダララッタ」と歌ってみるとクヨクヨしてられなくなってきて、1才だった子どもはキャッキャと笑ってくれて曲の明るさにずいぶん救われた経験をしました。
昔読んだ、北野武さんのインタビューでバイオレンス映画を撮るのことはお笑いをやるのと近い感覚で暴力と笑いは紙一重な要素がある…といわれていたのが残っていて、本人は悲惨な状態だと思っていることも客観的に見るとペーソスとユーモアがあって、笑いになることって多々あるなと思います。
まさにスーダラ節の主人公の生き方にも反映されていて、あっけらかんと開き直る(ダメなことは)分かっちゃいるけどやめられねぇ。てへぺろって感じに自分を肯定しちゃっています。
自己肯定感がアガり意味もよくわからない「スイスイスーダララッタ」と歌ったら、全て水に流した気分になって、また前を向く元気が沸いてくるはずです。植木等さんもビックリの新常識!自己肯定感を高めるコミックソングとして、おすすめしたい歌謡曲です。
■「恍惚のブルース」でカバーの聴き比べを楽しむ
最近、同じ曲のカバーを聴き比べをするのが楽しかったりします。その中でも、美空ひばりさん、ちあきなおみさん、藤圭子さんなど日本の名だたる歌姫がカバーする曲が、「恍惚のブルース」です。その人なりの歌い方で、同じ曲を歌っているのに全く違う女性の物語になる表情が変わって聴こえる面白い曲です。
青江三奈さんといえば、昭和のものまね番組では鉄板だったセクシーな吐息ではじまる「伊勢佐木町ブルース」の印象が強いですが、この曲ではしっとりと聴かせるブルースと彼女のハスキーヴォイスに魅了されます。
♪恍惚のブルース(青江三奈/1968)
♪
あたしをこんなにしたあなた
ブルーシルクの雨が降り
心がしっとり濡れていた
あとはおぼろ あとはおぼろ
ああ 今宵またしのびなく
恍惚ブルースよ
(恍惚のブルース/青江三奈)
恋をして夢のように楽しい時間を過ごした彼女が一人になったときに呟く、
「あとはおぼろ…」余韻が深いワンフレーズ、素敵すぎませんか?
青江三奈さんのざらっとしたハスキーボイスで歌われる、夢の中のような「おぼろ」という言葉の余韻と、彼女の目に映る「ブルーシルクの雨」という情景に想いを馳せてしまいます。女性の心模様がブルーシルクの雨になる、彼女の切ない想いがブルースしているシビレる歌謡曲です。
ちなみにこの曲の数あるカバーの中で個人的におすすめしたいのは、藤圭子さんです。藤さんならではのざらついた声のシャウトが、まさにブルース。最高にかっこいいので、気になる方はぜひ探して聴いてみてください!
■宮本浩次 カバーアルバム「ROMANCE」
カバーアルバムを聴く時は、アーティストのオリジナル楽曲とはまた違った歌のアプローチに新たな一面を知る楽しみもあります。
昨年エレファントカシマシの宮本浩次さんがソロ名義でリリースした、カバーアルバム「ROMANCE」。驚いたのはその選曲で、男気のあるロックバンドのボーカルといった宮本さんのイメージからは想像がつきにくい、全曲女性アーティストの曲のみをカバーした作品です。
アルバムがリリースされた頃、朝の生放送番組のゲストがたまたま宮本さんだったことがありました。1時間ほぼ出ずっぱりで司会を務める芸人さんとトークしたり、生歌も披露するという貴重な放送回を見ることができたのですが…嬉しさと同じくらい生放送中に何度かハラハラした気持ちになったのを思い出します。
普段の朝番組と違い、トークの最中も思ったままイスから立ちあがって喋ったり動く宮本さんから目が離せなくなり、最後まで番組を見入ってしまいました。
そのでカバーアルバムから番組で歌われたのが岩崎宏美さんの「ロマンス」でした。
♪ロマンス(宮本浩次/cover/2020)
ソロ出演なので後ろにバンドの姿もなく、画面にただ一人、宮本さんがマイクを持って映ってカラオケに合わせて歌う。いつものステージとは全く違うシチュエーションにどんな「ロマンス」が始まるのかドキドキしました。
そのドキドキを感じた時、フラッシュバックしたのがスペシャの音楽イベントSWEET LOVE SHOWERで歌う、エレカシのライブ中の宮本さんでした。
それを見たのはちょうど番組の編集中で、パソコンモニターに映し出されたのはステージ脇に置かれた青いバケツ。何だろうと思った時には、歌っていたはずの宮本さんがそのバケツを手に取り、頭から水をかぶって全身びしょびしょになっていました。
ずぶ濡れで、びしょびしょのシャツが体にはりついたままの宮本さんが名曲「風に吹かれて」を曲に合わせて手を上げるオーディエンスに向かって歌う姿を見ていたら、歌の良さがぐっと胸に入ってきて、作業をする手を止め、感動で泣いていました。言葉にならない宮本さんのかっこよさと、その時の歌は今でも忘れられません。
♪「風に吹かれて」(エレファントカシマシ/1997)
■「化粧」曲に憑依した歌声。
宮本浩次としてリリースした初のカバーアルバム「ROMANCE」では、ユーミンや松田聖子に宇多田ヒカルまで全曲女性アーティストの曲をカバーする意欲作になっています。圧巻の表現力と曲によってまるで女性が歌っているように聴こえる声の変わりように驚かされます。
カバーアルバムを出す前は、1日1曲カバーをすると自らに課して、時には歌の主人公に共感して歌いながら号泣してしまったこともあったんだそうです。
そのエピソードも納得の、宮本さんが曲の主人公に憑依したような中島みゆきさんのカバー曲を紹介します。
♪化粧(宮本浩次/cover/2020)
♪
化粧なんて どうでもいいと思ってきたけれど
せめて 今夜だけでもきれいになりたい
今夜 あたしは あんたに 逢いにゆくから
最後の最後に 逢いにゆくから
(省略)
流れるな涙 心でとまれ
流れるな涙 バスが出るまで
バカだね バカだね バカだねあたし
愛してほしいと思ったなんて…
驚いたのは、歌い出しからサビ前までの声が女性のように聴こえることです。
強がって涙を必死にこらえる彼女の肩の震えまで浮かぶような、歌から伝わる表現力は圧巻です。いい声はいい歌を連れてくる。カバー曲に憑依する宮本さんの歌と、歌謡曲の魅力を再発見させてくれるカバーアルバムの「ROMANCE」おすすめです!
今回は、カバーソングきっかけで気になる歌謡曲を紹介しました。また来月もおすすめの歌謡曲を更新していきたいと思います。ではまた!
By オーキ
2019年にソロ活動を開始した日本を代表するロックバンド、エレファントカシマシのヴォーカル&ギター・宮本浩次。1stソロ・アルバム「宮本、独歩。」から1年半、10/13にニューアルバム「縦横無尽」をリリースする。
スペースシャワーTVでは新作のリリースを記念し、10月のイチオシアーティストV.I.P.として宮本浩次を大特集いたします。