2023冬スタディツアー参加リポート@JAXA筑波宇宙センター
憧れのJAXAへ初訪問!
徳島大学医学部医科栄養学科1年の熊代沙也佳です。
高校生の頃から憧れていたスタディツアーに参加してきました!
当日の日程は以下の通りです。
11:45 TX駅(つくばエクスプレス駅)集合
12:15 受付、レクチャー開始
15:00 JAXA見学ツアー
16:30 解散
【横田航志先生について】
現役のフライトサージャンである横田航志先生、そしてフライトサージャン候補の伊藤恵梨先生からお話を伺いました(以下、フライトサージャン=FSと表記します)。横田先生は麻酔・救急・集中治療がご専門です。JAXAのFS業務支援医師としては第1期生だったそうです。特に印象的だったのが学生時代のお話です。ボート部や山岳診療班での活動をはじめ、大学3年時にはニューヨーク国連本部研修、そして4年時にはWHO本部へのインターンも経験したとおっしゃっていました。
宇宙に興味を持ったのは、昔見たドラマや種子島スペーススクール、さらには日本宇宙航空環境医学会への参加といったきっかけがあったからだそうです。学生時代から幅広く興味を持ち、活動されていた経験がFSへの道につながったのかもしれませんね!
横田先生は2017年からJAXAのFS業務支援医師となり、2019年からフライトサージャン候補者として国内外の基礎訓練を開始しています。そして2021年にJAXAのFSの認定を取得されました(参照:https://humans-in-space.jaxa.jp/space-job/specialist/voice/detail/03.html)。2021年から2023年にかけては若田光一宇宙飛行士の専任FSとして活躍されています(私自身、若田宇宙飛行士をきっかけに宇宙に興味を持ちました。FSとして若田宇宙飛行士のミッションをサポートされた横田先生にお会いでき、本当に感激です!!)。
【レクチャーの内容】
【宇宙医学について】
宇宙医学は、極限環境医学の一種である宇宙航空医学の中に位置づけられます。宇宙医学は潜水や登山、極地医学が横断的に関わる分野です。現在、宇宙医学に関わっているのは主に宇宙医学の研究者やFS、そして宇宙飛行士などです。
FSは主にクルーの健康管理や船内環境のモニター、宇宙環境に起因する健康リスクへの対策を行うという役割を持っています。レクチャーの中では、実際に宇宙飛行士が行っている訓練、さらにはFSによる宇宙飛行士のサポートの様子を横田先生が実際に若田宇宙飛行士のミッションのなかで行った内容に沿ってお聞きすることができました。
【宇宙飛行士の訓練のサポート】
宇宙飛行士が行う訓練の中にはFSの立ち会いが必要なものもあるそうです。レクチャーに登場したものをいくつかご紹介します。
まずT-38を用いた訓練です。この訓練は、ストレス環境下において複数のタスク(状況認識、無線によるコミュニケーションなど)を同時に行う力を養うために行われます。ジェット機を用いて行うのですが、大きな音がするため、騒音性難聴のリスクもあるそうです。
次に水上サバイバル訓練についてご紹介します。この訓練は、巨大なプールで人工的に水流を起こしながら行います。宇宙飛行士の中には船酔いに弱い方もいるそうで、FSは地上で使っている薬を処方することもあるそうです。参加者の中には「宇宙で使う薬と地上で使う薬の種類や量には何か違いがあるのか。」という質問が出ていました。横田先生によると、軌道上で使用する薬は地上で使う薬と同じものだそうです。地上と微小重力環境における薬の効き目の違いはまだよく分かっていないとおっしゃっていました。
他にも巨大なプールを用いて行う船外活動の訓練やISS緊急対処訓練の様子など、様々な場面でFSが宇宙飛行士の訓練をサポートしている様子を知ることができました。
【軌道上の飛行士を支えるために大切なこと】
横田先生は宇宙飛行士の健康を支えるためには打ち上げ前のコミュニケーションも重要だとおっしゃっていました。国際宇宙ステーション滞在中、FSはビデオや電話、メールでクルーとやりとりすることになります。
レクチャーの最中、FSの先生方に対して参加者からは多くの質問がされていました。私は栄養学科に在籍していることから管理栄養士の方との関わりについてお聞きしました。FSの先生方は管理栄養士の作成したレポートをもとに評価を行っているそうです。さらに食や栄養の分野での関わり方についても丁寧に教えてくださいました。
現在JAXAで管理栄養士をされている方、また業務を委託している会社の中にはスポーツ栄養を専門とされる方が多いそうです(健康な人を対象とした栄養管理という面では、宇宙飛行士とアスリートには共通点がありますね!)。他にも食品メーカーなどからJAXAに出向されている方も多くいるとおっしゃっていました。「宇宙飛行士の栄養管理に携わる」「宇宙食の製造・開発に関わる」あるいは「大学等の研究機関で研究を行う」など、一口に食といっても関わり方は多種多様です。
宇宙飛行士にとって、食は日々の楽しみであるだけでなく、健康にミッションを遂げる上で重要な存在です。骨量の減少や筋肉の衰えを始め、宇宙滞在中には人体に様々な変化が起こりますが、中には日々の食事によって予防できるものもあると思います。宇宙飛行士や宇宙旅行者に起こりうる、健康上のリスクを予防できるような「機能性宇宙食」の研究・開発もおもしろそうですね!
他の参加者の方からは「国際宇宙ステーションにはどれくらい医療設備があるのか」「FSになるにはどの診療科を専門にすればいいのか」といった質問が挙げられていました。自分とは異なった視点からの質問が多くあり、大変勉強になりました。
【FS候補者の伊藤先生】
現在FS候補である伊藤先生からもお話を伺うことができました。伊藤先生のご専門は整形外科です。FSになられたきっかけは、漫画「宇宙兄弟」を読んで宇宙業界で働くことに興味を持ったこと、さらにスポーツドクターとしてのキャリアが生かせると思ったからだそうです。JAXAの管理栄養士の方もそうですが、宇宙医学にはスポーツ栄養やスポーツ医学とつながる部分が多いのかもしれません。
伊藤先生は現在FS候補者として、NASAや自衛隊など国内外で研修も行っているそうです。特に国外での研修では英語が必須だとおっしゃっていました。伊藤先生自身、英語には苦労されているとお聞きしました(将来、宇宙業界に関わるためには専門分野の知識のみならず、語学力も必須なのですね!)。
【スタディツアーを終えて】
遠方からの参加は少し不安がありましたが、思い切って参加して本当に良かったです。オンラインでのレクチャーとは違い、対面ではその分野のプロの方と直接顔を合わせ、お話することができます。実際に現地に行き、先生方からレクチャーを受けることで大きな刺激を受けました。
私自身、将来は食や栄養の分野から宇宙開発に関わっていきたいと考えています。大学卒業後、どのようなキャリアを積んでいくのかはまだまだ模索中ですが、宇宙医学だけでなく、スポーツ栄養や災害食といった分野にも広く興味を持ち、勉強していきたいと思います!
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