VANLIFEの聖地を、未来を、VANLIFEの可能性を感じる全員でつくっていきたい
スペースキーの小野(@tsugumi_o_camp)です。2020年に入って、急激な盛り上がりを見せるアウトドア業界。コロナにより「移住」や「多拠点」という働き方が注目される中、比較的カジュアルに導入できる“VANLIFE”に熱い注目が注がれています。今回は、VANLIFEを事業テーマにサービスを展開するCarstay(カーステイ)社CEOの宮下さんにインタビューを実施。VANLIFEの可能性と未来について語っていただきました。
宮下 晃樹さん(@KCarstay)
新卒で監査法人トーマツに入社、スタートアップの支援に携わる。豊富な海外滞在経験を活かし、2016年にNPO法人SAMURAI MEETUPSを立ち上げ。4年間で延べ1200名の訪日観光客のガイドしながら、日本各地の地方創生に取り組む。これまでの経験を活かし、2018年6月にCarstay株式会社を創業。先輩VANLIFERに教えを請いながら、VANLIFEをカルチャーに根づかせるべく奮闘中。
宮下さんがVANLIFEにたどり着くまで
-今日はよろしくお願いいたします!宮下さんは車とか、もともとお好きだったんですか?
いえ、全くそんなことはありません。あまりキャンプとかもしたことがなかったので、僕の昔の友人からしたら、キャラ違いと思われますね(笑)。
-意外!では、どのような幼少期を過ごされてきたのですか?
7歳までは父の仕事の影響でモスクワ、学生の時はアメリカのブロンクスへ留学をするなど、海外で過ごす経験が多くありました。当時の記憶で言うと、外国人として生活する僕に対して現地の人たちはすごく優しくて、恩を受けてばかりだったなと。その海外での体験が大きく、これまでやってきた仕事にも影響を与えています。
留学を終えて帰国してからは、今度は僕が受けた恩を彼らに返したいと考え、まずは趣味として、海外からやってきた外国人のガイドをやっていました。僕が海外にいたときに、現地と僕をつなぐハブのような存在がいたのですが、それが日本にはいない。であれば、僕がそのハブとなって海外の人たちと日本をつなぎたいと。
当初は趣味レベルでやっていましたが、インバウンドの追い風もあり、協力してくれるガイドも増加。やるなら「日本一のガイド団体を目指そう」と決意し、2016年に「NPO法人SAMURAI MEETUPS(以後、SMUと表記)」をスタートしました。SMUではガイドを100名体制に拡大。4年間で1200名程度の外国人をガイドすることができ、多くの外国人に日本でのステキな体験をプレゼントできたかなと考えています。
-行動力がすごいですね。最初から起業を視野に入れていたのですか?
いえ、最初は全く考えていなかったです。ガイドをやりながら、新卒で監査法人トーマツに入社したのですが、その時も起業とかは考えていなかったですね。
デロイトトーマツに入社したのも、元をたどると海外に住みたかったから(笑)。父は商社で海外転勤経験があって、僕も同じように海外で仕事をしたいと思った時になにができるだろうと考えました。そこで目を付けたのが公認会計士です。僕は周りと競争をあまりしたくなかったので、公認会計士なら資格があればいいのではと。そこで大学在学中の20歳で資格を取得し、同社へ入社しました。
-す、すごすぎる……!
入社後は会計業務をしながら、プライベートではガイドをするという日々。仕事はとてもやりがいがあったのですが、せっかくならやりたいことに近づけていきたいと思うようになりました。そこで、スタートアップの支援もし始めてみました。実際にスタートアップの経営者たちを目の当たりにすると、僕の思っていた“起業”と全然違いましたね!変に尖ってなくて、人間味があって、泥臭い仕事もしていて……。「スタートアップは“人”なんだ!」とわかったら、すっかり魅せられていた自分がいました。そこから、起業っていいかもと思うようになりました。
-VANLIFEにたどり着くまでが、すでに濃い!
24歳のときに退職し、SMUを立ち上げ。日本各地へ、地方創生のインバウンド誘致に注力しました。ガイドをやっていてわかったのは、外国人は東京や京都などの都市だけでなく、地方への興味も強いということ。「東京はもういいから、温泉に連れていってくれ」って言うんですね。そうなると、足(車)がなくてはダメで、必然的に運転するようになりました。また、ある外国人は「いい肉を買ったから、キャンプがしたい」と。日本をガイドする者として「行ったことないから知らない」では済まされず、責任感からキャンプをするようになりました(今までしたことなかったのに!)。
-徐々に近づいてきました(笑)。
彼らのニーズに対応していたら、おのずとキャンプとかVANの流れになっていきましたね。ブロンクス留学時には、VANLIFEというライフスタイルがあるのを現地で見ていたので、移動もキャンピングカーのほうが彼らのカルチャーには受け入れられやすいのかもと考えました。また、それらのニーズをガイドで対応しようとすると限界があります。何千万人と訪れる外国人に対して、アドベンチャー的に自由に旅ができるサービスがあったらいいのでは。「これはスタートアップでやりたい!」と思い立ち、Carstayへとつながっていきます。
-おお!SMUをやったからこそ、今があるのですね。
そうですね、NPO法人としてしっかり地方創生などに取り組んだからこそ見えた課題だと思います。この流れから、当初はインバウンド向けサービスとして予定していましたが、調べていくうちに、日本人への需要もあるのではと考えました。日本もキャンブームではありますが、キャンピングカーへのハードルは高く、憧れは強いのでは。その仮説から、現在は国内外問わず展開しています。
CarstayとVANLIFEの今
-Carstayについて簡単におしえてください。
Carstay(カーステイ)は2018年6月創業、今年(2020年)で3期目のスタートアップです。ミッションは“誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界をつくる”。車中泊スポットの検索・予約ができる『カーステイ』、キャンピングカーを検索・予約できる『バンシェア』を中心に、VANLIFEをとおした「快適な移動」と「感動体験」をテーマに展開しています。
……と今は堂々と謳っていますが、実は創業当時は“VANLIFE”という言葉も知らないくらいでした(笑)。調べて行く中で、こういうことがしたいと構想を話していくと周りから「それってVANLIFEだよね」と。最初は、旅そのものをライフスタイルにしているその世界観に衝撃を受けました。
関係値とすると、ミッションである“誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界をつくる”を達成するための手段が「VANLIFE」。ただ、VANLIFEを始めるうえで大きなハードルとなるのが、車がない問題。それを解決するためのサービスとして『カーステイ』『バンシェア』という位置づけです。
-それぞれのサービスはどのような経緯で始まったのですか?
車中泊スポットの検索・予約サービス『カーステイ』は2019年1月末にリリースしました。当時、車中泊できるスポットは、一般社団法人日本RV協会さんが運営している『RVパーク』がありましたが、そことは違う価値を打ちだそうと考えました。SMUの時に感じたのが、地域に滞在することの重要性。テント泊でも車中泊でも、泊まってくれれば地元への消費や、体験につながります。『カーステイ』では、周辺の施設、観光情報、地元ならではの「文化体験」を一緒に載せることで「寄っていこう」と思わせる工夫をしています。ユーザーだけでなく、地域にとってもメリットになるような、双方がWinWinの関係になることを目的としています。
リリース後も、車中泊をガンガンするようなヘビーユーザーに実際にサービスを使ってもらいながら、機能開発をしていました。そのような中で見えてきたのは、興味を持って『カーステイ』に訪れる人は一定層いるのはわかったのですが、実際やるとなるまでのコンバージョンレートは非常に低いということ。これは何なんだろうと突きつめた結果、一番の課題は「車がないこと」だというのがわかりました。車中泊をしてみたい興味層のハードルを下げるため、車をレンタルできる『バンシェア』も2020年6月末からスタートしました。
-宮下さんが思う、VANLIFEの一番の魅力ってなんでしょうか。
「時間と場所にしばられない自由さ」、これに尽きると思いますね。時間と場所にしばられない自由さを得ることで、精神的な豊かさが生まれる。これはミニマリズムにも通ずる部分でもあって、必要最低限があれば十分な幸せを感じられる。VANLIFEは不況の時に伸びる傾向があり、事実アメリカでも不況のときに成長しています。
またまだ市場は小さくマイノリティですが、いつか「家と車、どっちを買う?」という世界が訪れる日が来るのではと考えています。
-課題のお話がありましたが、現状の課題についてはいかがでしょうか。
(1)キャンピングカーの快適さ
(2)受け入れる地域のインフラ
この2つがあると考えています。(1)については車の性能の話なので、我々ではなく自動車メーカーさんががんばっていただく分野だと捉えています。私たちができるのは(2)の部分であって、どこにいっても快適にVANLIFEができるスポットのサポートをしていくなどです。まずは成功事例を増やして啓蒙活動をしてくことが大事。今後はワーケーション利用へ向けて企業様への働きかけや制度なども作っていきたいなと。ライフスタイルとして受け入れられるような体制を構築していきたいと考えています。
-土日休み問題とか、働き方とか、インフラにするには越えなくてはハードルがありますね。
VANLIFEは時間や場所にしばられない自由さが魅力とお伝えしましたが、それにより幸せなライフスタイルを送っている人がまだ少ないのも課題のひとつです。「あの人はVANLIFEをしているから幸せそうだ」というシンボル的な人を創出して、多くの人の価値観を変えていくようなこともしていきたいですね。モデルという点ではCarstayという会社も同じ。VANLIFEという好きなことをしながら、しっかり業績もあげていく。我々の成功体験も含めて、ユーザーさんのよいモデルとなりたい。まずはCarstayがVANLIFEのシンボルとなっていくことも必要だと感じています。
これからのVANLIFEと「Mobi Lab.」
-今後はどのようなことに取り組んでいく予定ですか?
車中泊する人たちの課題に対して『カーステイ』『バンシェア』をリリースしたのは前述の通りですが、一方でオンラインでできることにも限界を感じ始めていました。そこで、リアルな接点の検証として『バンシェルター』を2020年4月にトライしてみました。『バンシェルター』とは、医療機関向けにキャンピングカーを無償で貸出、病床不足の解消や医療従事者の休憩スペースとして使っていただくことを目的とした取り組みです。『バンシェルター』による医療従事者様の反応は上々で、「キャンピングカーに初めて乗った!」といった好印象の感想をはじめ、「うちの庭に置けるかな」といった具体的なコメントまで。
この取り組みで得たのは、リアルでの威力です。興味をより強くさせるには、実際にキャンピングカーに触れて、乗って体感してもらうことが大事だと確信しました。同時に、このような場をもっと作っていきたいと強く思いました。
そのような想いから今回、「Mobi Lab.(モビラボ)」というリアルなVANLIFEの拠点の発表をしました。「Mobi Lab.」に来れば、VANLIFEのすべてが体験できる。VANLIFEの横のつながりを強化できる。「Mobi Lab.」を“VANLIFEの聖地にしたい”と本気で考えています。
-なるほど!想いが一貫していますね。構想などはあるのですか?
まだ白紙の部分が多いです。現状で決まっているのは、Carstayの本社をトレーラーハウスに移転予定なので、そのトレーラーハウスを置くことくらい(笑)。
ここは高さもあって屋根もあるし、何よりも私有地なので何でもできるのが魅力!今までにできなかったような実験もできるし、試したいことがほぼできる。未来をつくれると考えています。
素晴らしい場所を手に入れた一方で、未来のVANLIFEをスタンダードにするためには、Carstay1社ではできることに限界があります。「移動」と「暮らし」の2軸があるので、自動車業界はもちろん、通信業界や不動産領域の企業様、個人でVANLIFEを実践している方々にもぜひ手伝っていただきたい。「Mobi Lab.」ではパートナー企業と一緒に、未来の暮らしVANLIFEを共創できるラボという関係性も構築したいと考えています。
-おお、おもしろそう……。
9月にリリースも出したのですが、ここで提示しているのは僕のクリエイティブの限界。「一緒にやりたい」「もっとこうしてみようよ」というアイデアを募集している状況です。「Mobi Lab.」という真っ白なキャンバスに、みんなで色を付けていきたい。2021年の本格稼働に向けて、チームを募集しています。
-2018年の創業からの、スピード感や巻き込み力がすごい!
スマホアプリを11月9日にリリースし、デジタル領域での戦略はこれである程度達成したと考えています。これからは、リアルの接点を増やしていくことに注力。「Mobi Lab.」を中心に、リアルでのつながりを増やし広げていきたいと考えています。
・Apple / iOS
・Google / Android
宮下さんが見据える世界
-宮下さんとしての目標や目指したいものはありますか?
理想の世界をつくる哲学は変えずに、実際にビジネスとしてどう採算を合わせていくか。そこのバランスが大事であり難しいところだと感じています。僕は0→1が好きなので、どうもビジネスを広げがちなんですよね(笑)。じっくり腰を据えてVANLIFEの理想とビジネスをスケールアップしていくことにも取り組んでいきたいと思っています。
ひとりの経営者としては、日本でも誰も登らない山、登ってこなかった山に挑戦していきたいです。公認会計士のスキルがいい意味でセーフティに働いていて、これを活かしてリスクとなるようなことにも果敢に取り組んでいきたいなと。
-どういう状態になったら成功したと言える状態になりそうですか?
フォーカスしてるポイントはいくつかありますが、
VANLIFE人口を増やすこと
・カーステイやバンシェアを通じてキャンピングカーを利用する人、車中泊する人を増やす。
・ユーザーが増えればマーケティングに活かすことができる。
・利用機会をどれだけ増やせるかが課題。
借りられる台数が少ない
・現状:全国のレンタカーで1000台程度、カーステイでは70台程度。
・200万台くらいはポテンシャルがあると見込んでいる。
・選択肢を増やし、利用機会の増進につなげたい。
これら2点を改善できたら、目指す姿に近づけるのかもしれないですね。これらももちろんですが、大前提としては、VANLIFEをブームで終わらせないことが大事だと意識しています。しっかりとカルチャーとして根づかせたい。時代に残り続けることが、僕ができる最大限の生き様。その爪痕はしっかり残せるよう、全力で歩んでいきたいです。
-スペースキーも、アウトドアをブームで終わらせたくないと考えています。キャンプという共通のテーマを扱うもの同士、協力して業界を盛り上げていきたいですね。本日はありがとうございました!
■ おしらせ ■
● Carstayでは、「バンシェア」に登録してくださるキャンピングカーや車中泊仕様の車/バンのオーナーさんを随時募集しています。「バンシェア」に登録していただき、副収入を得て、キャピングカーを利用してみたい方々に「VANLIFE」の楽しみ・感動を一緒に提供しませんか?
● 2020年11月28日(土)〜29日(日)に西湖キャンプ・ビレッジ「ノーム」にて家族でも楽しめる完全移動式テーマパーク、VANLIFEの祭りごと『VANTERTAINMENT FES vol.0』を開催します。ぜひぜひ、チケットご購入の上、お越しください!
■ 編集後記 ■
移住や他拠点生活、ワーケーションの文脈から、個人的にとても気になっていたCarstay。2018年創業とは思えない、圧倒的なスピード感と開発力で突き進む同社の勢いに圧倒されました。CEOの宮下さん自身も生粋のアウトドアマンではなく、「旅」から必然的に派生していったという流れに、アウトドアの可能性を見出したような気がしました。
ブームをブームで終わらせない。文化として根付かせるために、様々な方とのつながりをCarstayでは求めています。垣根を越えた、未来のVANLIFEとなる「Mobi Lab.」の今後も引き続き注目したいと思います。(小野)