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【私のアウトドア履歴書♯11】あんざいゆきさん(株式会社ウフィカ 代表取締役社長)

スペースキーの小野(@tsugumi_o_camp)です。今回のアウトドア履歴書は、11人目にして初の女性!Androidエンジニアとしてアプリ開発、執筆や講演とマルチに活躍するあんざいゆきさんにインタビューしました。これまでほとんど表に出ていない登山の楽しみ方について話していただきました。


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あんざいゆき さん(@yanzm)
株式会社ウフィカ 代表取締役社長、Google Developer Experts for Android、GTUG Girls マネージャー。ブログ「Y.A.M の雑記帳」でAndroidアプリ開発の情報を多数紹介。個人開発のアプリとしてSuica Reader, Libraroidなどがある。「Android Pattern Cookbook」「Master of Dagger」「わかる!ドメイン駆動設計 ~もちこちゃんの大冒険~」など執筆活動にも力を入れている。


あんざいさんのすごい登山歴


-よろしくお願いします!まずはアウトドア歴からお聞きします。幼少期はどのように過ごされていましたか?

毎年、家族でキャンプには行きました。恒例行事のような感じですね。あとはそれほどスポーツなどもしておらず、北海道出身のためスキーなどをするくらいでした。

-最近では登山をされるようですが、登山をはじめたきっかけは?

IT関係の友人に誘われたのがきっかけです。その友人はかなりアクティブな人で、最初誘われたのがアルプスのモンブランでした (それが2014年頃)。ロープウェイで行けるし、周辺を少し散策するハイキング程度のものだからと。私もヨーロッパには行ったことがなかったので、行ってみたいと思ったのがそもそもです。

とはいえ、まともな登山経験は0だったので、練習がてら日光白根山に連れて行かれたのが初登山でした。練習とはいえ、結構ハードで……。正直、
楽しさよりも疲労感がすごかったですね(笑)。

-そして実際にモンブランへ行ったと。

当初の予定より雪が多くて「登山は無理だね」となってしまったんです。なのでほぼ観光でした。(せっかく道具も買ったこともあり) 友人がいろいろ登山を企画してくれたので、その頃から日本の山を登るようになりました。丹沢や八ヶ岳、北岳、南アルプスでテン泊することもあります。

その翌年(2015年)にはニュージーランドへ行きました。ニュージーランドは標高差は大きくなく、長い距離を時間をかけて歩くロングトレイルを楽しむのが主流。特に森の中などは雰囲気が良く、楽しかったですね。

次に行ったのがネパール(2016年)で、これがすごくよかった!

-ついにネパール!なにがよかったんですか?

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その文化も含めて登山を楽しめることです。ネパールの登山では、はじめてガイドさんを付けた登山を経験しました。海外の登山は日数をかけて登ることが多いので、一緒にいる時間も長いんです。その道中のコミュニケーションが今までになく楽しかったですね。ネパール語をおしえてもらったり、ネパールの文化を聞いたり。現地のガイドさんといろいろ話ながら登山できるのが、私にはとても新鮮で有意義な時間でした。

ネパールではアンナプルナ山のベースキャンプ(標高4130 m)まで行ったのですが、そのベースキャンプもよかったです。今までに見たことがない雄大な景色が広がっていて、このネパールの経験から高い山に登るのもいいなと思うようになりました。

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(ネパールの家庭料理 ダルバート)

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(街道にも、ロバがたくさん通っていました)

-あんざいさんの中で登山の楽しみ方が変わったポイントですね。

その2年後(2018年)に再訪し、エベレスト街道も歩きました。ネパールの素晴らしさを体験してほしくて、今度は子どもも連れて。練習として北岳を登りましたが、エベレスト街道よりも北岳のほうが大変だったなぁと振り返って思います……。

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(エベレスト街道のなかでは大きい街であるナムチェ・バザールを丘から見下ろしている)

-お子さんもすごいです!直近ではキリマンジャロにも行かれていますね。

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はい、2020年の年初にキリマンジャロにも登りました。キリマンジャロは特別な訓練を受けていない人が登れる最高峰の山であること、また単純にアフリカに行ってみたいという好奇心から行くことを決めました。

キリマンジャロ登山で一番驚き、興味深いと思ったのは、登るためには「ガイド、コック、ポーター」を必ず雇わなければならないこと。現地の雇用を守るためなんでしょうね。私を含め日本からは4人で行ったのですが、登山チームは最終的に20名超の大所帯に(笑)。そのような大勢で登山をするのもはじめてで、とても貴重な経験でした。

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(ポーターさんが荷物を運んでくれています)

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(この大所帯での登山はなかなか経験できない)

-食事もちゃんとしていて、過酷なイメージが一変しました。

そうなんです。毎食メニューも変えてくれたりフルーツを出してくれたりと、とてもいいコックさんで私たちも助かりました(人によってはずっとピザとかもあるようです)。また、滞在中はテントも食事用・就寝用と分けてくれたり、とても快適な登山をサポートしてくれました。

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-キリマンジャロもネパールの登山もそれぞれの楽しさがあると思いますが、どのような違いがありましたか?

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キリマンジャロは保護区域内にあるので、自然豊かな雰囲気があります。振り返ればジャングルが広がり、空気も澄んでいて、自然を堪能するにはおすすめ。

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一方で、ネパールは登山の合間に街があり、しっかりとしたロッジもあれば小学校もある。元々その地域に住む人たちがいて、生活圏の中を通らせていただいているんだと。その土地ごとに歴史と文化があって、それを感じながら登るのもおもしろいなと思います。

-そこが、海外登山の魅力でしょうか。

そうですね、登山を通じて日本とまったく違う環境や文化に触れられるのが魅力です。山そのものも違えば、山を登るためのルールも違う。なぜそのようなルールなのか知るのも楽しいし、単純に現地の人とのコミュニケーションが私には何よりも楽しいです。旅行よりもより濃厚に、深く現地を体験できるもの。そのツールが登山なのかなと。

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(キリマンジャロの登頂証明書をもらっているところ)

-コミュニケーションツールとしての登山とは独特ですね!日本の登山についてはいかがでしょうか。

日本で登るときは、解放感というか、静けさを求めます。都会だとどこも人が多いですが、山に行けば静かですれ違うひともまばら。人がいない非日常感を求めているのかもしれません。

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-海外ではコミュニケーション、国内では静けさ。場所によって正反対な楽しみができるってとてもおもしろいですね!


あんざいさんが登山から得ていること


-お気に入りのギアについておしえてください。

実はあまりギアにこだわりがなくて……。登山をはじめる時に買ったギアも、友人に言われるがままに買って揃えたものです。ザックはマムート、シューズはモンベルのものを愛用しています。

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-ネパールの山やキリマンジャロは重装備なイメージですが、そんなことはないのですか?

日本と海外の登山の大きな違いの1つが、歩く距離や時間。日本では日帰りなど、長いときで10時間ほど歩くのに対して、海外だとせいぜい5時間程度。消耗も少ないので、比較的軽装備でも行けるのが魅力でもあります。

-ポーターさんもいるとなると、たしかにそうですね。

私の登山仲間にもそんなにギアにこだわる人がいないので、そういう話題にならないのかもしれません(あまり話せなくてすみません……)。


-登山はあんざいさんにとって、どのような影響がありますか?

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(チベット仏教のストゥーパ)

知らないことに出会える機会をくれる、とても刺激的な影響力があります。知らない国へ行って新しい文化に触れることで、様々なインスピレーションを受けますね。

キリマンジャロではガイドさんにスワヒリ語を教えてもらったことがきっかけで、現在、スワヒリ語講座を受けているんです。やっぱり、現地の言葉を知っているだけで、仲良くなれる度合いが全然違う。言葉を習って、もっと現地の人や文化と触れ合えればいいなと思います。

-あんざいさんの知的好奇心に対する行動力がすごい!


アウトドア業界に思うこと


-アウトドア業界に思うことはありますか?

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登山をしていて思うのは、登山道などの整備が追いついていないところが目につきます。私自身、登山道整備を目的としたふるさと納税に寄付などしていますが、こういった貢献ができる ツールがもっとあるといいなと思っています。

-たしかに。

海外では、当たり前に入山料を徴収されます。こういったルールを整備していくことも大事なのかもしれませんね。

-スペースキーをはじめ、アウトドア業界に期待することはありますか?

私の登山仲間には様々なレベル感の人たちがいますが、それぞれのレベルに合った山を探すのが毎回むずかしいなと感じています。レベル感にプラスして、みんなが行きやすいアクセスを組み合わせると、もう自分では探せない。結局、山に詳しい友達に聞いて決めていますが、そこが解決されるともっと登山をする人が増えるのかもと思います。

-知り合いがいるかいないかで、はじめるためのハードルも全然違いますからね。


-今後やってみたいアウトドアはありますか?

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海外では南米に行ったことがないので、ぜひ行ってみたいですね。また、ネパールの時に会った人は「ロシアもいいよ!」とおしえてくれたり。ロシアってあまり登山のイメージないですが、どのような体験ができるんだろうと想像してしまいます。世界にはまだまだ知らない世界がたくさんありそうなので、色々なところに行けたらいいなぁと思っています。

また、出身が北海道なのですが、いまだに羊蹄山に登ったことがないのでこれも目標のひとつ。地元の景色をゆっくりと楽しみながら、登ってみたいですね。

-世界を知ることで、国内の山の良さも見つけられそうです。今後も、国内外問わず登山を楽しんでください。本日はありがとうございました!


■ おしらせ ■

GTUG Girlsという女性のテクノロジーコミュニティのマネージャーをしています。2ヶ月に1回程度初心者向けのハンズオンイベントを開催しています。
遠足部もあり、高尾山や大山など初心者向けの山に登っています。テクノロジーに興味があり登山もちょっと気になっている女性の方、一緒に山に登りましょう!


■ 編集後記 ■

あんざいさんの登山の楽しみ方は独特で、とても興味深く話を聞かせていただきました。海外登山をこんなに楽しむ人のお話を聞けるのも、かなりレア!実際に聞いてみると、日本の登山とはほぼ別物。長い時間をかけて自然を楽しむスタイルは、日本でも流行ってほしいなと思いました。

登山とは「旅行よりもより濃厚に、深く現地を体験できるもの」。新たなアウトドアの魅力の一部をおしえてもらったような気がしました。(小野)