【キャンプ場インタビュー♯6】黒坂オートキャンプ場
スペースキーの小野(@tsugumi_o_camp)です。キャンプ場インタビュー、久々の更新です。今回は山梨県にある黒坂オートキャンプ場さんの若き管理人にインタビュー。実はここの管理人である角田さんは、以前スペースキーにてインターンとして業務を学んだ経験があります。スペースキーでの経験がどのように活かされているのか聞きました。
角田 竜満さん
スペースキーにて『なっぷ』の運営管理を経験した後、2019年より黒坂オートキャンプ場の管理人に就任。趣味はキャンプ、釣り。得意なことは、クワガタとり。
黒坂オートキャンプ場について
-久しぶりです!早速、運営しているキャンプ場についておしえてください。
実家である「黒坂オートキャンプ場」を経営しています。山梨県笛吹市の標高500mの山間に位置するキャンプ場で、甲府盆地を一望できる立地が特徴のひとつ。特に夜景が絶景で、ウリのひとつになっています。
また、山間部の森の中にあるので、豊かな自然もウリ。夏場はクワガタも多く生息し、昆虫好きな子どもたちにはきっと満足いただけるのではと思います。
-夜景も森もステキ!いつ頃から運営をしているのですか?
実は、30年以上の歴史があるんです。第一次オートキャンプブーム(1990年代前半)の頃に、僕の曾祖父と祖父、父が手探りではじめたそうです。キャンプが流行っていて、幸いに山を持っているし、「じゃ、やってみるか!」と自分たちで山を切り開くところから開始したと聞いています。スタート当初は10サイト程、現在は50サイトまで増やして運営しています。
-老舗じゃないですか!黒坂オートキャンプ場のコンセプトは何ですか?
“人と自然がつながるキャンプ場”をコンセプトに、自然体験を通じて幸せになれるようなキャンプ場を目指しています。具体的には、さつまいも掘りや伐採体験などのイベントを実施し、楽しみながら自然に触れる機会を提供しています。(現在はコロナにより停止中)
また、キャンプ場を軸にした人同士の交流も大事にしており、僕たちとお客様、お客様と地域のみなさんなどのつながりを創出しています。例えば、キャンプ場として運営しているYouTubeがあるのですが、お客様に参加いただいたり。また、キャンプ場で開催するイベントには地域の方も参加いただくなどです。黒坂オートキャンプ場で、たくさんの人の幸せを生み出せたら嬉しいですね。
-ステキなコンセプトです。現在はキャンプ場の管理人として、どのような仕事をしているのですか?
そんなに大きな規模ではないので、運営に関わるほぼすべてですね。予約管理にはじまり、受付、場内整備、プランニング……。運営は僕と母2人がメインで行っています。
-小規模と言えど、なかなか大変そうです。この仕事の楽しいことはなんですか?
小さいからこそ、裁量権を大きく何でもできるところですね!また、来てくれた子どもたちがとても楽しそうに喜んでいる姿を見ると、とても嬉しくなります。先ほど、クワガタの話をしましたが、夏期はクワガタ採りガイドを開催しているんです(クワガタ兄さんのクワガタ採りガイド)。そのガイドは、キャンプ場をやっていて1番よかったと思える瞬間ですね!
-おお!それはどんなガイドなんですか?
まずクワガタの生態を学ぶところからはじめます。クワガタの種類や見分け方、成長の過程など基礎的な知識を知ってもらい、それから実際に森に採りに行きます。驚かれることの1つに、クワガタ採りって夜にやるものだと思われがちですが、うちでは昼間に実施します。昼間はクワガタたちは木の上方に潜んでいて、木を揺らすと落ちてくるんですよ。夜だと落ちてきたクワガタが見えないので、昼間にこのようにして採ります。
木を揺らすと、クワガタたちがぼとぼと落ちてくる。その落ちてきた瞬間の子どもたちの表情は何とも言えないですね!みんな驚きと喜びですごくいい表情をしていて、僕もすごく嬉しくなれます。宝探しをしていたら、宝が落ちてきたみたいな。「宝獲ったぞー!」みたいな。
-それはたしかに嬉しいかも。逆に大変なことはありますか?
そうですね……。キャンプ場運営って、意外と幅広い知識が必要なことでしょうか。電気系統や水道設備など幅広く見なくてはいけないので、総合格闘技みたいだと勝手に思っています。もちろん、作業自体はプロに依頼するのですが、依頼するにも最低限の知識が必要なんだとやってみてわかりました。
例えば、うちは山を切り開いたキャンプ場なので、ベースが山なんですね。山に水道を引くのは水道屋さんにとっても特殊事例になります。また、場内に砂利を敷く場合も、斜面を流れないようにしたり、キャンプ場に適した粒度の砂利はどれかなど、通常と異なる場面が多く存在します。ただアウトソースすればいい訳ではなく、自分たちの環境を理解して正確に相手に依頼しなくてはいけないのがむずかしいですね。
-これはやってみて気づくことですね。
スペースキーでのインターン時代
-スペースキーでインターンとしてサービス運営に関わってくれた角田くんですが、そもそもどういったきっかけがあったのですか?
インターン自体は、大学1年生の時からやっていました。当時は教育にも興味があり、教育系IT企業で働かせてもらいました。ただ、僕の基礎を成しているのは、やはり自然。進学のため都心で生活するようになり、改めて「自然っていいな」と思うようになりました。3年生のときにこの想いが特に強くなり、田舎暮らしや地方創生で調べていましたが、「そう言えば、実家キャンプ場じゃん!」ということに気づいたんです(笑)。
-そこで!
仕事としてアウトドアやキャンプに関われないかと考え、いろいろ調べてたどり着いたのがスペースキーです。家業としてのキャンプは見てきましたが、業界としてどのようなことをしているのかはわからず、業界をしっかり見てみたいと思い連絡してみたのが最初です。
-まだ当時は本格的にキャンプ場運営をやろうと決めていたわけではないんですね。
そうですね。業界を見てちゃんと考えたいというのが第一。また、個人的に『CAMP HACK』が大好きだったこともあり、内側を見てみたいなというのもありましたね。
-ご縁があってよかったです。当時、担当していた業務はなんですか?
キャンプ場検索・予約サービス『なっぷ』のページ作成やクチコミ審査などを担当していました。ページ作成は、新しく参画されたキャンプ場施設さんのページ作成、クチコミ審査は、毎日投稿されるクチコミがガイドラインとして問題ないかのチェックなど。
-実際に、業界の裏側を見てどう感じましたか?
ページ作成からは、各キャンプ場さんのこだわりや想いを強く感じることができました。自分の好きなことを詰め込んだ理想のキャンプ場を運営していて、それぞれに個性があって勉強になりました。一方で、クチコミのチェックはユーザーさんの声そのもの。両者を見比べてみると、そこにギャップがあるなと感じました。施設さんがこだわって尽力しているけれど、ユーザーさんはそこに魅力を感じていなかったり。そこは惜しいなぁと思ったりしました。
-ユーザーさんはどういうことを求めているんですか?
やはり、設備ですね。特に「トイレがきれい」「炊事場がきれい」が重要視されていると感じました。僕も実家のキャンプ場運営を通じて薄々感じていましたが、クチコミという証拠データを目の当たりにして確証が持てました。当たり前のことかもしれないですが、施設さんは自分の所しか見えません。全体を見渡してみてもそういった声が求められているんだと改めて納得できました。
-なるほど。こだわりを貫くだけでなく、ユーザーさんの声も盛り込むとよさそうですね。そのような中で、キャンプ場運営をやっていこうと最終的に決めた決め手はありますか?
正直、『なっぷ』で働くまではキャンプ場で十分な収入が得られるのか不安な面がありました。一般的にキャンプ場って、老後の趣味とか悠々自適とかそういうイメージがあると思うので。しかし、『なっぷ』で働いてみて組織的・合理的な運営により十分な売り上げを出しているキャンプ場もあることを知りました。また、今後キャンプ場業界はさらに盛り上がると働いてみて確信しました。そのようなことを加味して、キャンプ場業界に参入するなら後でも先でもなく今がベストだと思ったため、キャンプ場運営をやっていくことを決断しました。
-自信につながったわけですね。スペースキー時代の経験で、今活かせていることはありますか?
『なっぷ』を通じて予約管理方法を学べたのは個人的には大きいですね。いろいろなプランを見てきたので、サイトの特徴や使い方、季節に合わせてどのようなプランだったら売れるのか。そこのプランニングは大いに役に立っています。もちろん、他施設さんのプランをみて参考にすることは誰でも可能ですが、全部のキャンプ場の料金体系はなかなか見られないですよね。そういった点で、日本各地の強みや傾向の違う施設さんを横断的に見られた経験は貴重だったなと思っています。
アウトドア業界に思うこと
-アウトドア業界に思うことはなんでしょうか。
うちの黒坂オートキャンプ場も含めて思うのが、もっと持続可能性の意識をもつことだと思います。大学の時にSDGsを学びましたが、とても大事な概念であり、地球にとって重要なことだと。日本は特に、このあたりの意識が低いのではと感じています。もっと、キャンプ場側から働きかけてもいいのではないでしょうか。今はまだ、環境への配慮アピールしても受け入れられにくいですが、ユーザーさんも意識を変えていくべきだと考えます。持続可能性を意識した施設だからこそ選ぶような基準があってもいいはず。
僕はキャンプ場運営側として、少しずつでもやっていきたいと思っています。施設の洗剤を環境に配慮した製品にするとか、ゴミの出し方や減量への工夫とか。取り組んだ結果が評価されるような、そんな持続可能性への意識が高まった世界になったらいいなと思っています。
また、自然を保護するような取り組みや活動も、もっと業界全体でしていけたらいいですね。個人的には、クワガタがいるうちの森をちゃんと維持して守っていきたい。森の育成は、生物にとっても大事な存在。持続的に成長していく取り組みを、業界の一員として全体でやっていけたらいいなと願っています。
-今からやらないといけない、大事なことですね。その上で、スペースキーに期待することはありますか?
スペースキーのすごいところは、日本中のキャンプ場とつながりがあること。また、キャンプだけでなく、釣りや登山など、ジャンルを横断して幅広く関わっていること。インターネットの力を駆使して、業界全体にアプローチできるのは、スペースキーだからこそできることではないでしょうか。
先ほどの環境問題も、スペースキーががんばったら業界全体への影響力が大きいのではと思います。業界全体を変えて盛り上げるために、その役割としての活動を期待しています。
-気が引き締まる思いです。今後について、どのようなキャンプ場を目指していきたいですか?
来てくれたお客様が「このキャンプ場は日本でナンバー1だよ!」と言ってくれるようになりたいですね!黒坂オートキャンプ場に来たら幸せになれる、そんな場所を目指したいです。
具体的にやりたいことでは、キャンプに「農業」「食育」などを絡めて、楽しみの幅をひろげていきたいです。畑があるので、体験農業とか、より多くの人が自然とつながれるような体験を提供できたらいいなぁと。最近は、体験という「コト」を子どもにさせたい親御さんが多いので、特に注力したいですね。コロナもあってすぐにはむずかしいですが、キャンプ場に来た人が楽しんで幸せになってくれたら嬉しいです。
-期待しています!角田くん個人として挑戦したいことはありますか?
僕にとっては、キャンプ場運営はあくまで手段。「自然と人がつながる関係性の実現」が達成したいことなので、そこに関しては手段にこだわらず幅広く挑戦してみたいです。特に、今注目しているのは農業。農業って儲からないとかキツいとか、ネガティブなイメージが根強いですよね。でも、僕はこれからの時代だからこそ農業に大きな可能性があると感じています。若い人たちが農業いいなと思えるような、実際に挑戦できるような環境作りにも挑戦できたらいいですね。
-最後に、キャンプ場を運営してみたいと考えている人にメッセージをお願いします!
僕は一時、週6日働いているときがありました。IT業務だったので、朝から晩までずっとPCの前。さすがにこれは肉体的にも精神的にも良くないだろうなと感じていました。
一方でキャンプ場の仕事は、常に太陽の動きや季節と連動しています。日が昇れば明るいうちに場内整備をして身体を動かす。春夏は畑仕事、冬は落ち葉掃きなど。季節を感じながら仕事をして、健康的な生活を維持できるなんてメリット大きいですよね!そのような生活に魅力を感じられる人にとっては、キャンプ場運営は楽しいと思いますよ。
-ありがとうございました!黒坂オートキャンプ場、今後も期待しています!
■ お知らせ ■
現在、黒坂オートキャンプ場で働いているのは僕と母だけです。アルバイト、社員に関わらず、キャンプ場で働くことに興味がある方はHPのお問い合わせからお気軽にお声がけください。
■ キャンプ場情報 ■
■ 編集後記 ■
スペースキーにいたときからしっかり者の角田くん。久々の再開でしたが、キャンプ場の管理人としてたくましく成長した姿に、とても嬉しくなりました。スペースキーで学んだことを活かし、キャンプ場の個性を押し出したプランニングはさすが。業界を一緒に盛り上げる一員としてはもちろん、クワガタ兄さんとして自然の素晴らしさを伝える伝道者としての活躍も期待しています!(小野)