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「漁父之利」って入門教材としてどうなの?

Twitterで知り合った方々と勉強会をしてみたということで、今回は高等学校漢文入門教材の「漁父之利」に焦点化してみたわけです。(完全に僕のわがまま)

入門教材というと、簡潔で分かりやすいものが採録されていると思います。古文でも「児のそら寝」をはじめとした説話集、漢文でも「矛盾」をはじめとした故事成語。『宇治拾遺物語』だから、『韓非子』だからという理由よりも、総じて簡潔で分かりやすいからという理由が前面に出ている採録かと思います。それぞれの特徴を抜きに扱われる印象を受けています。本当にそれで良いのかと疑問を持ちつつ、実際に故事成語で学習指導をするならどうしますか?と始まった勉強会です。


「漁父之利」が教材としてどうか、という問いの前に、そもそも漢文教育って何するんという問いが出てきてしまうわけです。逐語訳じゃだめなん?句法する意味あるん?訓読した先には?といった具合です。そこはまぁ参加者が知っている書籍や実践者の話、経験などを交わしつくし保留になりました。
(本当のところは分からなくねとなったんですが、、、)
話題はかなり色々あったんです。ただ、長いので僕が特に印象に残っていることを少し。


漢文は構造を学ぶべし。

漢文を漢文として読むかどうかは置いておいて(良いのか?)、漢文という文章は構造を理解しなければだめだろうと。その意味で「漁父之利」は比較的理解しやすい漢文なんですね。構造理解を3年間突き詰めたら大学受験なんて簡単じゃないかとなるわけです。僕としては内容理解とか、説得という営みを考える素材としてしか「漁父之利」を捉えていなかったので、割り切って構造を把握する入門教材としてはめっちゃ適してるやんと思いました。
目の前の学習者によって違うことは前提としても、どのように漢文教育をしていくか、そのデザインの参考にはなるわけです。


「漁父之利」は説得の材料として適切なん?

「漁父之利」の文脈としては、大国秦、燕、趙の三国があり、趙が燕を攻めようとしている、遊説家は燕の王に頼まれ趙を説得することになり、説得のための寓話として「漁父之利」を話すという感じです。僕は扱ったことがなかったので初めての文章でした。

しかし、「漁父之利」は説得するための寓話として不適切じゃないかと思うわけです。一見、どぶがいとしぎが言い争っている間に漁夫が両方を捕まえる話は三国の状況をうまく言い表していると思います。しかし、二つの点で納得がいかないわけです。一つ目は燕と趙の国をどぶがいとしぎに喩えてええのかってことですね。趙を説得するはずなのに、趙をしぎに喩えているわけです。自分が趙の王だったらどう思います?


僕ならキレます。だって自分の国がしぎに喩えられてしまっているんですよ?侮辱として捉えられてもおかしくないですよ。それなのに王は最後納得します。この王は寛大なのか馬鹿なのか、ちょっと疑問です。もう一つはそもそもこれ無益な争いをしていると第三者が利益をかっさらうという寓意ですが、状況的には視野が狭まりすぎると周りが見えなくなるという寓意を読み取った場合、説得の寓話としてはいかがなものかと思うわけです。


教材として提示されたら「へぇ〜」と終わるでしょうが、むしろ説得の寓意として適切なのかということを皮切りに「書く」指導に持っていってもおもしろいのかなと思いました。とにかく故事成語と言ってもどのような場で用いられたものなのか、そこを抜きに考えてしまうことはつまらないですよね。

特に寓意のところに関しては先行研究とかでももちろん言われていることでしょうし、勉強しろバーカというのも至極真っ当です。ど正論。ただ、文章一つにぶち当たっていってあーだこーだ言いながら考える営みが至極楽しかったです。オンライン勉強会(教材研究)はこの時期だからこそやらんとあかんかなと思います。コロナの影響で悪いことばかりですけど、こんな状況でなければオンライン勉強会なんてしなかったでしょうし、、、


最後にサムネイル画像?について。ICTの勉強会で可能性を感じたジャムボード。それをこの勉強会にも使おうと急遽エラーノさんと思いつき、実践。勉強会までに教材としてどのように捉えるか書き出してもらい、整理してから勉強会をはじめました(僕は何もしていません、本当ありがとうございます)。

先に言っておくと、オンラインの勉強会でジャムボードはかなり有効でした。他の人がどのように考えているか最初から可視化できましたし、議論の修正にもなりました。だれか一人が作成してリンクを貼るだけでみんなできるようになるのでお試しください。


一緒に参加してくれた人が楽しかったとか有益だったとかいうのを見ると嬉しいですね。それだけで酒が飲めます。



人を絞っているわけではないのでみなさん勉強会しましょう。勉強会は最大6人がええなと思いました。さようなら。



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