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宇宙こそロボット活躍の場!スペースデータの宇宙ロボット戦略

スペースデータでロボット事業を統括しています、池田です。
この記事では、スペースデータの宇宙ロボット事業への取り組みを紹介します。

私は、JAXAで宇宙ロボティクスの研究開発に従事しながら、副業でスペースデータのロボット開発に参加しています。


私は、地上ロボットの出身で、大学時代は生活支援を中心とした知能ロボティクスの研究開発に従事していました。

JAXA入構後に宇宙ロボティクスに触れ、宇宙開発で求められる技術と地上の技術、考え方に大きなギャップがあることを痛感しました。

このギャップを埋め、地上ロボットのように宇宙ロボットを身近なものしたい。そして、人の滞在に課題がある宇宙にこそロボットの活躍の場があると考え、スペースデータの事業に参画しています。

宇宙ロボットの開発構想

私は、地上での生活支援ロボット出身ですが、宇宙開発を知るほどに、地上より宇宙の方が生活支援ロボットが求められていると考えるようになりました。

地上では、ロボットよりも人件費の方が安い現状があります。一方で、宇宙飛行士の時給は550万円と非常に高価です。

宇宙はロボットよりも人のコストが高いので、宇宙飛行士の生活を支援し、作業を代替するロボットのニーズは高くなると考えています。

また、ロボットは、過酷な宇宙環境下で、大型宇宙構造物等の修理や建設等の作業ができるというのもメリットがあり、急成長する宇宙産業の大きな柱となる技術と確信しています。

現状では人が宇宙にアクセスするコストはまだまだ高いので、富裕層以外は宇宙旅行に行くことができません。宇宙ロボットによるテレイグジスタンス等により、宇宙体験を身近なものにできる可能性もあります。

宇宙ロボットで培った高い安全性と信頼性を保証するシステムは、地上への技術転用にも大きな可能性があります。

宇宙ロボット事業の基本方針

スペースデータで開発を進める「宇宙開発を支援するプラットフォーム」のうち、黄色の枠線で囲った部分が、宇宙ロボットの事業領域です。

人工衛星や宇宙ロボット等の宇宙機は、企画から開発、運用開始まで5年程度の期間を要するのが一般的です。「高い安全性と信頼性を有する確実な1基」をつくるために、慎重な設計、開発、検証が行われるためです。

しかし、この時間軸では、運用の開始時点ではコンピュータやOSの開発環境のサポートが終了し、コンピュータースペックやソフトウェア技術にギャップが生じてしまいます。

スペースデータでは、宇宙ロボットを地上ロボットのように捉え直し、地上ロボットと同等の手法、コスト、リソースで開発・運用を行う事を目指しています。

技術をオープンソース
にする事で、世界中のエンジニアの方々と宇宙ロボットを発展させると共に、非宇宙のエンジニアの方々が宇宙業界に参入可能な環境を整備する考えです。

宇宙ロボットはハードウェアもソフトウェアもフルスクラッチでの開発が一般的ですが、技術を抽象化(モジュール化)することで、信頼性を高め、開発コストを低下すると共に、アジャイル開発を積極的に取り入れる事を考えています。
地上ロボットではデファクトスタンダート化しているROSの考え方を宇宙ロボット開発においても取り入れて行きます。


プロダクト
上記で説明した基本方針に基づき、自社製の宇宙ロボットの開発と宇宙デジタルツイン技術の開発に取り組んでいます。

デジタルツイン技術
スペースデータが開発するデジタルツインは、ゲーム、エンタメ等のコンシューマ向けから、ロボットのシミュレーション環境としての利用まで幅広い用途に対応可能なアーキテクチャとなっています。

ロボットのシミュレータとしての機能も開発中です。

宇宙開発は「いかに地上で宇宙環境を再現できるのか」がキモになります。

宇宙環境を再現するために、JAXAは本当に様々な試験設備を作っていますが、究極的にはこれらがデジタル空間上で再現できれば、このような大型試験設備が無くとも宇宙開発ができるようになる(圧倒的に宇宙開発のハードルが下がる)と考えています。

その上で、JAXAのInt-Ball2やSpaceDataが自社で開発する船内のFree Flyer型のロボットでの実証は、これらの技術開発を進める上でのファーストステップとして最適です。

宇宙ステーション船内という比較的地球に近い環境での実証は、他の宇宙環境よりも実証のハードルが低くなるかと思います。また、宇宙ステーションも大きなロボットと捉えることもできるので、このようなロボットをベースにデジタル上での開発手法を確立し、中型、大型の宇宙機へと応用していくことも可能であると考えます。

ロボットシミュレーションのアーキテクチャ(案)

自社製 宇宙ロボット開発

デジタルツインを活用して、自社製の宇宙ロボット開発も進めています。
ISSでは、船内のフリーフライヤーとしてJAXAが開発したInt-Ball、Int-Ball2やNASAが開発したAstrobee等がありますが(実際にISS船内で運用中)、スペースデータでも同様の形態の船内ドローンを開発しています。

JAXAが開発しISSで活躍するInt-Ball2

JAXAのロボットも宇宙飛行士の作業を代替することを目的に設計、開発、運用されています。従来は宇宙飛行士が担っていたISS船内で行われる実験等を撮影して地上に映像を送る業務等をサポートしています。

SpaceDataで開発を進める宇宙ロボット

ISSは2030年に退役を予定しており、その後は商業宇宙ステーションが運用される計画です。宇宙ステーションが商業化された際には、これまで以上に人の作業をロボットが代行し、運用コストを下げるニーズが高まります

そのような世界を見据えて、ロボット開発に取り組んでいます。

また、少しマニアックな話になりますが、従来宇宙ステーション側が担っていた環境計測等の機能を宇宙ロボットが担うことで、宇宙ステーションのサブシステムとしても利用可能なロボットを目指しています。


SpaceDataで開発を進める宇宙ロボット
SpaceDataで開発を進める宇宙ロボット

与圧環境で稼働するロボットのためROSでの開発を進めています。また、アジャイルで開発し、ISSや商業宇宙ステーション等で早期に実証し実績を積み上げる計画です。

最後になりますが、スペースデータでは、宇宙ロボットの開発に取り組むエンジニアを募集しています。宇宙開発の経験豊富なメンバーが揃っていますので、宇宙ロボットの開発経験は問いません

皆さまからのご応募お待ちしております。

著者プロフィール
株式会社スペースデータ宇宙ロボット開発リード 池田 勇輝

創価大学大学院 理工学研究科にて、生活支援を中心とした知能ロボティクスの研究開発に従事。4台の生活支援ロボットを開発し、AIロボットによる国際的な競技会「RoboCup」にて、その研究成果を実証。2023年に同大学修士課程を修了後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入構。JAXAの研究開発部門にて、スペースデブリの除去を目指すプログラム「CRD2」におけるロボティクスや、軌道上サービス技術実証プラットフォーム「SATDyn」の研究開発、さらに宇宙ロボティクス技術のオープンソース化を目指した「Space ROS」など、宇宙ロボティクスの最前線で活動。2024年に当社に参画