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宇宙を自在に。Space BD代表 永崎と投資家 赤浦が語る日本の宇宙ビジネスの可能性

2024年9月19日、Space BD初のキャリアイベント「ジョブフェス」を開催しました。本記事では、Space BD代表の永崎と社外取締役・共同創業者の赤浦によるトークセッションの”ほぼ”書き起こしを前編・後編に分けてお届けします。

登壇者プロフィール

Space BD株式会社 代表取締役社長 永崎 将利(写真左)
1980年、福岡県北九州市生まれ。三井物産株式会社にて人事や鉄鋼貿易、鉄鉱石資源開発に従事した後、2013年に退職。無職時代を含む雌伏の期間を経て2017年9月Space BD 株式会社設立。JAXA 初の国際宇宙ステーション民間開放案件「超小型衛星放出事業」の事業者に選定されるなど、宇宙商業利用のリーディングカンパニーとして宇宙の基幹産業化に挑んでいる。著書『小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ』(アスコム)

Space BD株式会社 社外取締役・共同創業者 / インキュベイトファンド株式会社 代表パートナー 赤浦 徹(写真右)
1991年日本合同ファイナンス株式会社(現:ジャフコ グループ株式会社)入社、1999年10月VCとして独立開業、以来一貫して創業期に特化した投資育成事業を行う。2013年7月より一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会理事。2015年7月より常務理事、2017年7月より副会長、2019年7月より会長、2023年7月より特別顧問就任。

宇宙ビジネスへの道 - 急成長と予測困難性の狭間で

永崎:
みなさん、今日はお忙しいところご参加いただきましてありがとうございます。Space BDの永崎でございます。実は、私はすごく宇宙好きだったとか、やりたいことが明確になって起業して今に至る、ということではなくてですね。どうやって自分の人生を完全燃焼できるか、本気で生きれるか、そのテーマをずっと探していました。

様々な方のアドバイスの中から「日本から世界で活躍できる経営者となる題材を探す」というとこまで行き着いて。そのテーマをくれたのがほかでもない赤浦さんでした。

「宇宙は一大産業になるチャンスがある。宇宙で技術的に日本は世界のトップだそうだが、それをビジネスとして捉えドライブできる昔からの商社マンが欲しい。永崎さん、やってみませんか?」そんな話から今日に至っています。

今はもちろん宇宙が大好きですが、そういったアプローチで作ってきた会社だということを自己紹介代わりにお伝えしたいなと思います。今日はよろしくお願いします。

赤浦:
赤浦でございます。永崎さんとはテニスのダブルスを組んで、一度も公式戦で勝ったことがないままSpace BDという実業団をつくって人生初勝利、そのまま破竹の勢いで上り詰めている大切なパートナー。そんな関係性です(笑)。今日はカジュアルに話せたらと思いますので、よろしくお願いします。

司会:
最初のトークテーマ「宇宙ビジネスの現在地」にいきましょう。これまで永崎さんは宇宙ビジネスの主体者として、赤浦さんは投資家としても様々な宇宙ビジネスに関わられていますが、おふたりは宇宙ビジネスをどう捉えているでしょうか。

永崎:
Space BDはこの9月に8期目を迎えたところで、創業から丸7年、その前に赤浦さんと勉強した時期を考えると 8年間にわたりますね。その期間で非常に大きな盛り上がりを実感しています。

政府の予算ひとつとってもそうです。今、だれがお金を払って宇宙を使うんですか?というと、その中心は日本に限らず政府です。我々がGPSや気象衛星などをお金を払わずに使えるように、政府がインフラとして確保するために衛星を作って、それを打ち上げるためのロケットがあって……というのが宇宙産業です。そんな政府の予算が、日本ではこの3年間で約2.5倍、約3,000億円から1兆円規模にまで増えました。しかも今後も伸びていくと言われています。

内閣府より引用

また、日本を代表する投資家である赤浦さんがSpace BDに投資してくれたように、投資家たちの宇宙関連企業への出資も増え続けており、大きなチャンスが来ているように思います。

いっぽう、ビジネスとしては依然マーケットがあるわけではないのが実情です。それ故に予見性がないという難しさがあります。

宇宙ビジネスをつくる上でひとつめの大きな問いは「どうやって宇宙の裾野を広げていくか」です。具体的には、いかに宇宙へのアクセスのハードルを下げて、既存事業者は技術開発に専念できる環境をつくれるか、そして新規参入者を呼び込めるか。そのひとつの答えとして、我々の場合は衛星を作って打ち上げるというバリューチェーンの中で輸送事業や部品の取り扱い等のビジネスを行っています。

また、「いかにユースケースを増やすか」という問いにも向き合っています。これが全体のパイを広げることに繋がります。宇宙を使ってこんないいことがあったという民間企業が増えるにはどうするか。私はBtoCの可能性も十分にあると考えていますが。

Space BDはこれらを両輪で回すスタートアップとして構想しました。まずは宇宙のどんなシナリオを通ったとしても必ず使われていくインフラを抑えていこう、と。そもそも宇宙空間に行かないと事業をスタートできませんから。ロケットで物を打ち上げて輸送する当社の中核事業を長い時間かけてつくり、次にその近隣領域で、たとえば衛星を作る場合、日本では部品を輸入しなければならないケースが多いのでその調達をやっていこう、とビジネスを増やしてきました。

他方、宇宙活用の事例づくりでは、創薬すなわちライフサイエンス領域に力を入れています。製薬企業などとパートナーシップを築いて国際宇宙ステーションを活用したビジネスを創出しています。

整理すると、産業としてはすごく盛り上がっており、チャンスに溢れています。無限大の可能性を秘めている。それゆえにまだまだ予見性の低い中で自分たちで「答え」探し、作っていく必要があり、そんなトライアンドエラーをずっと繰り返しています。難しさはあるけれど、自分たちがパイオニアになれる、自分たちの足で地平を開いてる感覚を持てるのは、過去に成熟産業にいた私はとくに面白いと感じる部分でしょうか。

世界から見た宇宙産業の現状 

赤浦:
宇宙ビジネスは……一言で言うと終わってますね。やばい。もうありえないぐらいやばい。

どういうことかというと、まず宇宙ビジネスの入口として宇宙へのアクセスが必要ですよね。その領域では、世界での打ち上げの90数パーセントにもわたるシェアをイーロン・マスク率いるSpaceX一社がとっています。完全にやばいですよね。ウクライナ紛争ではスターリンクという宇宙インターネットを提供しているし、開発中の大型ロケット「Starship」が実現したら1kgあたりの宇宙への輸送コストも1,000倍ぐらい変わりうると言われている……もっともっと他社との差は開くばかりです。彼ひとり、一社が世界を制覇しちゃうんじゃないか?っていうぐらいどうにもならない勢いですよ。

今、SpaceX1社で6,000機ほどのスターリンクすなわち衛星を世界中に散りばめ、既存のものとは全く別の光ファイバーを使わない独自のインターネット通信インフラを構築し、その下にサービスプロバイダーとしてもはや各国企業がぶら下がっているわけです。同社の売上の約半分はスターリンクで、そんなスターリンクの時価総額はもうすぐ40兆円です。スターリンクだけ切り離して上場させるプランがあるようですが、仮にそうした場合、上場時のバリュエーションは30兆円と言われています。

日本を代表する自動車産業もイーロン・マスク1人が圧倒的で、束になっても敵わない。テスラの時価総額は100兆円を超えており、2位のトヨタから10位までの9社を出してもテスラ1社には届きません。

僕はベンチャーキャピタルという立場で、自分の人生のミッションとして「21世紀のソニー・松下・トヨタ・ホンダが生まれるきっかけを作る」という言葉を97年の3月に紙に書き、ブレずにやってきました。僕がゼロから一緒にやってきた会社で一番高い時価総額は3,000億円です。そう考えると、ますますイーロン・マスクは意味不明ですよね(笑)それでいて宇宙業界はイーロン・マスクひとりがシェア 90数%を独占。やばすぎですよ。それがいまの宇宙業界です。

司会:「あれ、宇宙業界やばいの…?」と思われた方もいるかもしれません。だからこそSpace BDという会社の意味はどこにあるのでしょうか。とりわけ宇宙で事業を作ることを生業にしている会社は海外から見ても珍しいと思いますが、その意義をお話ししていきましょう。

後編に続きます

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