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【IRの裏側】スパイダープラスが受けたIRコンサルティングの内容を大公開!(前編)

明けましておめでとうございます!
スパイダープラスIRチームの石田です。
2024年も、スパイダープラスをどうぞよろしくお願いいたします!

SPIDERPLUS IR note 2024、その第一回として、
スパイダープラスが実際に受けたIRコンサルティングの内容を、書き起こしにてお届けします。

IRの専門家である市川祐子氏に、「スパイダープラスの2023年のIR活動の振り返り」と「2024年のIR戦略」、「IRチームの増強」について、コンサルティングをお願いいたしました。

プロフィール
楽天、NECグループなどで約15年間IRを担当。
楽天では12年間にわたりIRの責任者を務め、資金調達や東証一部指定替えも担当。
「伊藤レポート(2.0)」委員(2016-2017年) 現在は企業向けにIRコンサルティングを行うほか、複数企業の社外役員を務める。
著書に『楽天IR戦記「株を買ってもらえる会社」のつくり方』、『ESG投資で激変!2030年会社員の未来』。
一橋財務リーダーシッププログラム(HFLP)非常勤講師。

マーケットリバー株式会社のHPより抜粋

忖度なしでコンサルティングいただいた内容は「自分達だけに留めるのはもったいない!」というものでしたので、市川さんに許可をいただき、書き起こしを公開することとなりました!

書き起こしは、「前編」「後編」の二部構成で公開してまいります。
前編:2023年のIR活動振り返り_良かったところ/足りないところ
後編:2024年のIR戦略と、どんな人をIRチームアサインするべきか

それでは早速、前編のテーマ「2023年のIR活動振り返り_良かったところ/足ないところ」です!ぜひ御覧ください!


2023年のスパイダープラスIRで良かったこと

スパイダープラスIR 石田
年末(12月27日)のお忙しい中お時間いただきありがとうございます!
本日は久しぶりの市川さんコンサルティング、楽しみにしてました!
まずは、2023年のスパイダープラスのIR活動が市川さんの目にはどう映っているのか、教えてください。

マーケットリバー 市川氏
よろしくお願いします!
スパイダープラスのIR活動は、証券アナリスト協会で賞をもらっただけに、素晴らしいものです。まず、これまでスパイダープラスのIRで良かった事として、「CEOがIRに前向き」「機関・個人問わず積極的にやっている」「中・長期の成長戦略、いわゆるストーリーがブレていない」ということだと思います。

特に、「中長期のストーリーがブレていない」ということは、投資家にとって企業が目指していることを見失わせない「北極星」のようなもので、それがブレていないのはすごく良いと思います。

その上で2023年のスパイダープラスのIRで良かった事は、「カバレッジアナリストとの面談議事録公開」や、「IR noteマガジンに最初の30社のうちの1社として参加」、「セーフィー株式会社との合同IRセミナーの開催」など、
他の会社がやっていない新しい取り組みに毎四半期チャレンジしているというのがすごく良いと思います。

過去からの取り組みと、新しい取り組みにもチャレンジしている結果として、アナリスト協会の「ディスクロージャー優良企業賞」にも繋がったのだと思います。

スパイダープラス株式会社は日本証券アナリスト協会が選定する「ディスクロージャー優良企業」において、2023年度「新興市場部門」第一位に選定いただきました。(下記は受賞時に寄稿したnote)

スパイダープラスIR 石田
ありがとうございます。
「中長期ストーリー」が投資家にとって「企業が何を目指しているのか」を見失わせない「北極星」であり、それをブレさせない大切さというのは非常にイメージしやすいです。

スパイダープラス株式会社の中期成長ストーリー(「事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年3月公開)」より抜粋

マーケットリバー 市川氏
「中長期ストーリー」の見せ方も色々あるんですけれども、自分が言い飽きたことでも何度も念仏のように唱え続けるというのは重要です。 

「中長期ストーリーがブレない」というのは、
スパイダープラスも引き続きやって欲しいですし、他社もぜひ真似してほしいと思います。

スパイダープラスIR 石田
「ブレない中長期ストーリーを、念仏のように何度でも」、意識徹底していきたいと思います。

次に、ご評価頂いた「新しい取り組み」の中で、市川さん見て「特に印象的だった取り組み」はありますでしょうか?

マーケットリバー 市川氏
まず、「カバレッジアナリストとの面談議事録公開」です。
5月に初めて取り組まれて、1四半期だけの取り組みにせず、継続されているのも凄く良いと思います。

こういう取り組みが出てくると、投資家間(機関・個人)の情報格差を埋めたり(*)、企業が発信するメッセージをアナリストがどのように解釈しているのかということも理解したりできるので、これも他社に真似して欲しいと思う取り組みでした。

あとは、セーフィー社との合同IRセミナーです。
ああいう企画が、事業会社の企画として出てくるのが非常に良いなと思いました。

業界の理解もそうですが、「スパイダープラスを知っていてもセーフィーを知らない」という投資家にアプローチできるというのは結構素晴らしいことじゃないかと思っています。

(*)「投資家間の情報を埋める」ために取り組んでいる活動の一部ご紹介
(施策立案の勘所については上記noteもご覧いただけますと幸いです!)

【会社・投資家間の情報格差をなくす取り組み】
✓ 事業進捗施策をタイムリーかつIRメッセージも込めて発信
✓ 非財務情報(知財情報等)に関する発信 

【個人⇔機関投資家間の情報格差をなくす取り組み】
✓ 機関・個人問わず参加できる説明会を決算開示日の夜に開催
✓ カバレッジアナリストとの面談議事録書き起こしを開示

【投資家間の情報格差をなくす取り組み】
✓ 決算説明会の書き起こしとアーカイブ動画を翌日中に公開
✓ 投資家の情報収集手法に合わせた決算開示資料の充実
✓ TDNet(PR開示の活用)によるIR情報の積極的な発信
✓ SNS、note等のメディアを活用した発信
✓ 事後的にまとめて情報収集できるようMonthly Reportのnoteでの発信

スパイダープラスのIRに足りないこと

スパイダープラスIR 石田
ここまでは、良かったことを挙げていただきました。
逆に、「スパイダープラスのIRで足りていないこと」お願いします!

マーケットリバー 市川氏
まずは、「英文開示の充実」ですね。
確認したところ、日本語と英語の開示は同じ量ではないようです。

これは、現在の時価総額や売買高の規模などを勘案すると、いきなり全部やらなくて良いと思うんですが、今の成長が続けばいずれ必要になります。

「全ての開示を英文開示する」という中的な目標に向けて、重要なものを1個1個できるようになっていけば良いでしょう。
まずは決算短信、決算説明資料、決算説明会の書き起こしからでしょうか。

スパイダープラスIR 石田
決算短信は日本語同時開示、決算説明資料は1〜2営業日後、書き起こしの英文開示では出来ていない、というのが現状です。

ちなみに英文開示の英訳レベルについて、「しっかりしたものにしなければ!」という意識もあり、工数がかかってしまっている、手が回せていないという現状なのですが、求められる英訳レベルは実際どうなのでしょうか?

マーケットリバー 市川氏
英訳のレベルは「割切り」でも良いと思います。
「意訳も含みます」であるとか、「原文は日本語版を参照ください」などの
ディスクレーマー(*)をつけて、言っていることが変わらない範囲で簡潔に英訳する、主なものや特に重要なものだけ英訳するでも良いと思います。

英文開示は、日本語と同日を目指さなくても、例えば書き起こしは翌日の夜や翌々日の朝にするとか、これも割り切って行い、徐々に和英の時間差の短縮を目指す形でもいいかもしれません。

*ディスクレーマーの記載例は、下記の東京証券取引所
「英文開示実践ハンドブック(p9)」に事例の掲載あり。

スパイダープラスIR 石田
確かに「原文は日本語を参照ください」とか「重要なものを英訳しました」という割り切りの下、まずは英文開示量を日本語と同等にしていくというのが良いかもしれませんね。作成の心理的ハードルが下がる印象です。

マーケットリバー 市川氏
あとは、サステナビリティ開示ですね。
今のスパイダープラスのサステナビリティサイトも良く出来ていると思うのですが、定性的なものがほとんどであり、3月に出す有価証券報告書では指標や目標も必要です。
また、温室効果ガスの排出量や削減目標は、投資家だけでなく建設業界のお客様からも求められるようになると思います。

スパイダープラスIR 石田
ご指摘の通り、最近は欧州の機関投資家からも温室効果ガスの排出量、削減目標の開示状況や取り組み方針、戦略までもヒアリングされる機会が増えています。

マーケットリバー 市川氏
あとは、ガバナンスの取り組みもしっかり書くと良いと思います。
指名報酬委員会を設置していることや、その他にも役員のスキルマトリックスを開示しても良いと思います。

楽天でIRをしていた時代、「スキルマトリックス」という言葉が日本になかった10年くらい前でも既に「スキルマトリックスはないのですか?」と聞いてくる欧州投資家がいました。

役員のスキルは開示している経歴(弁護士や他の会社の社長など)を見ればわかるものだと思っていたのですが、「それでは分からない」と言われた思い出があります。

なので、スパイダープラスのIRで足りない部分は「英文開示の充実」と
「サステナビリティやガバナンスに関す情報開示の充実」がテーマになると言えるでしょう。

スパイダープラスIR 石田
ありがとうございます。
今ご指摘いただいた内容、特にサステナビリティに関しては「ディスクロージャー優良企業賞」の評価でも改善余白が大きな部分でした。

欧州投資家が10年前から役員の「スキルマトリックス」を求めていたというのも、サステナビリティやガバナンスに求める水準が日本よりも進んでいるんだと理解しました。

ここまでは当社の2023年の活動振り返りをして頂いたので、ここからは来年(2024年)のIR施策で悩んでいる部分や、今後を見据えたIRチームのメンバー編成について、ご意見いただければと思います!

(後編に続く・・・)

前編とおわりと後編の予告

まずは前編にお付き合いいただき、ありがとうございました!

「中長期のストーリーが投資家にとっての北極星になる」

名言でした。
目指すべき場所(北極星)がブレている企業(いわば"船")には、投資家も安心して投資できない(乗船できない)ですよね。

今回のコンサルティングでは「新しいことに積極的に取り組む」という姿勢を評価いただきましたが、思い返すと2023年は様々なことにチャレンジした年でありました。

(2023年に取り組んだ新しい取り組み)
1. 個人投資家向け決算説明会の質疑応答書き起こしを開始(3月)
2. IR noteマガジンに参画(4月)
3. IRサイトリニューアル(5月)
4. カバレッジアナリストとの面談議事録公開(6月)
5. 対面型のIRセミナー(神戸投資勉強会)への参加(9月)
6. セーフィー株式会社との合同IRセミナーの開催(9月)
7. 海外IRカンファレンスへの参加(11月)

この他にも「IRのナレッジシェア」を目的にしたnote【IRの裏側】を始めたり、四半期毎に個人投資家向けオンラインセミナーに参加したりと、大小様々、領域広く新しい取り組みを模索した2023年でした。

というわけで引き続き、2024年も「新しいIR」に積極的にチャレンジしていきたいと思います!

さて、続く【後編】のテーマは「2024年のIR戦略」と「どんな人をIRチームにアサインするべきか」です!

【後編】の内容、かなりタメになりました。
そっくりそのまま皆様にも同じものをお届けできるかは書き手の文才次第ではありますが・・・ご期待いただけますと幸いです!

*【IRの裏側】に関する注意事項
本記事は、情報提供のみを目的として作成しています。本記事は、日本、米国、その他の地域における有価証券の販売の勧誘や購入の勧誘を目的としたものではありませんのでご留意ください。