中学生のジャージ
林伸次さんの #ファーストデートの思い出 企画に参加します。
今の彼とのファーストデート、もいいなぁと思ったけど
わたしの忘れられないファーストデートは中学1年生の頃まで遡る。
付き合いだしたのは、中学1年生の12月手前くらいからだった気がする。
仲の良い幼馴染Nくんから『好きな人いないの?』って聞かれて、
そのときのわたしは、周りの女の子たちの恋愛ガツガツフィーバーに
ちょっと軽くドン引きしていた頃で、自分の好きな人なんて考えてもいなかった。
いない、と答えるわたしに、Nくんは珍しくしつこく質問してくる。
『じゃあ気になる人は?誰でもいいから答えて』
この頃のわたしたちは、放課後 学校から1番近い友達の家でいつも遊んでいた。
その中にいたSくん、彼は結構背が高くて、みんなに優しくて、
髪の毛が鳥の巣みたいにもじゃもじゃだった。よくいるバンドマンみたいな。
好き、とかではないけど、まあ気になるっちゃあ気になる(髪型が)。
強いて挙げるならSくんかな、そう答えるわたしに
それまで散々質問攻めだったNくんがぶっきらぼうに『じゃあ付き合えば』と言い、
頼んでもないのに最終的にくっつけられていた、っていうのが
ファーストデートのお相手Sくんとなれそめ。
急にぶっきらぼうになったNくんが求めていた答えは自分で、
あのとき告白しようとしていた、っていう事実を知るのはこの2年後。あとのまつりだ。
Sくんと付き合ったからといって、わたしの日常が大きく変化することはなく、
いつも通り放課後は、みんなで友達の家に集まってワイワイしていた。
ひとつだけ変化があったことは、その友達の家からわたしの家までの帰り道、
一緒に帰るようになった相手がNくんから、Sくんになったことくらいだ。
そんな彼とファーストデートをすることになったきっかけは、
友達の誕生日だったか、友達カップルの記念日のお祝いだったかは忘れたけど
なにかのお祝いごとのプレゼント買いに行くため。
この時も自分たち主催でなく、周りからの後押しでの計画だった気がする。
数ヶ月付き合うことで、それなりに好きって気持ちも育っていて
わたしはファーストデートを楽しみに待ち合わせ場所まで行った。
話がズレるが、うちの中学校は近所の学校のなかではジャージがダントツで可愛かった。
Tシャツも、ハーフパンツも、冬に上から着るトレーナーも、可愛かった。
だが、冬に履く長ズボンのジャージだけ何故かとてもダサかった。
制服販売店のおばさんや、兄や姉のいる友達からは
買ってる子いないから買わなくていいよ、と言われるくらいのダサさで
冬の体育はみんな寒さを我慢してハーフパンツでいたから、話に聞くだけで、
わたしはそのズボンを見たこともなかった。
そんなこんなで待ち合わせ場所が見えてきた。
彼とのデートの内容は、わたしは何も覚えていない。
もしかしたら何かと言い訳をつけて帰ったのかもしれないし、
目的の物だけ購入して、すぐ解散したのかもしれない。
どうして帰ったことばかり想像しているのかというと、
彼がその日履いていたズボンは、ダサすぎて誰も買わないと噂されていた
中学校の長ズボンのジャージだったからである。
ちなみに、このジャージの話は9年経った今でも語り継がれていて、
最近会った中学時代の友達には、Sくんが今の彼女を連れてるところに遭遇したから
彼女に「中学時代のジャージとか、もう履いてきたりしませんか?」って
ちゃんと聞いといたぞ!との報告をいただき、
彼女の返事は 履いてこない、だったから安心したけど、
Sの髪型 でっかいヘッドホンつけてるみたいな髪型だったから
あいつ中身はきっと何も変わってないよ、とのことだった。
どんな髪型か、想像もつかないけど、彼の感性は変わらないでほしいなと思った。