シロアミメグサとベニヒモノキ
温室は上から下まで面白くてぼーっとしていた。
下を見ながら思い出した。
「ここにダンゴムシいるか探してみる。」
ビルの下の植え込みに、枯れた花がぶら下がったツツジが何本かあって、そこを子どもは眺めだした。
いつもなら、「虫に刺されるよ、かえろうよ」などと言うのだが、そのときはたまたま、虫除けのスプレー、夕飯の段取りを済ませていたので、ただ眺めることにした。
よく見てみると、ツツジの下には、苔や雑草が数種類あり、思いもよらぬ豊かな緑があった。
屋根の下にある、特に自動で水やりする仕組みのなさそうな植え込みを見ながら、誰が水やってるんやろう、と思った。
ちいさなアリが行き交っていて、何かの死骸を運んだり、忙しそうな。
その上にこどもはパラパラと土を振りかけていた。
こどもは、じっと虫を追いかけている。
ぼーっとその様を見ていたら、
フッと浮かんできた。
外にいる時、ずっと虫を追いかけている....
そうなの、あなたは、虫が好きなの...!
いま一緒にいるこどもが、なにが好きかなんとなくはわかるつもりでいたが、こうやってじっくり見られていたことがあったろうか、と思う。
初めてこどもを育てるという経験をし、今目の前にいるこどもは2人目で。
次は、きっとうまくやれる、と、初めてを塗り替えるようなことばかりしていたような気がする。
渦中にはわからなくて、少し経って、わかる。
どれだけわかりたいと思って過ごしていても、
わかるのは、その執着を手放したときのような気がする。
ダンゴムシの抜け殻を二つ見つけて、
「〇〇虫だよ」と何かを見つけたあと、
「帰る、帰って絵が描きたいから。自転車に乗るとこめっちゃ早いからみててね」と言って、ストンとのった。
焦ったり躍起になったりせず、
今だけを見てたら、
少しずつ、
わたしとこどもの関係がつくられていくから、大丈夫なのかもしれない。
そんなことを考えていたことを思い出した。