学園みみとしっぽ① -tale SAKURA- 『ご主人さまと先輩』

※※このお話の設定は学園版だけの特殊設定です※※

※登場人物※
『さくら(娘ねこ)』
十里塚学園一年生
新入学代表挨拶にて見目麗しい容姿と挨拶のインパクトで
学園中の注目を集める美少女娘ねこ新入生
『ごしゅじん』
十里塚学園三年生
家ではさくらの大好きなご主人さま、学園では大好きな先輩

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「ご主人さまーー!」

バン!
と教室のドアを勢いよく開けて
早足でこちらの席に近づいてくる――

整った顔立ちに大きな目は宝石のようなオッドアイ
肩にかかるくらいのフワッとした鮮やかなさくら色の髪
背は少し小さいけれど、制服を着ていても主張する整ったスタイル
そして、ツンと頭の上にあるねこみみと不機嫌そうに動くしっぽ

可愛いと形容されればみんなそう感じるだろうし
美少女と言われても誰もが納得するだろう

そんな女の子が頬を膨らませてプンスカして歩いて来れば
注目もされそうなものだが
ドアを開けた女の子を確認したクラスメートはいたって普通だった。

前の席に座って話をしていた友達も話を続ける。

「ご主人さま!
 ど・う・し・て・さくらを置いて先に登校してしまったんですか!?」

そして、その女の子もまた気にせず怒りながらも膝の上にポスリと座わる。

「さくら……学校でご主人さまは言わない約束だったよね?」

「ご主人さま?
 さくらは一緒に登校してくれなかった事を怒っているのですよ?
 つまりお家での事を怒っているのです。
 学校に来る前なので、先輩じゃなくてご主人さまに怒っているのです!」

『そりゃご主人さまだ』
『そうだそうだー、ご主人さまが悪いぞー』
『ご主人さまさいてー』

「外野うるさいなぁ」

気にしていないハズなのに……。

上級生の教室に入ってきてあまつさえ膝の上に乗って
怒っている美少女に対してじゃなくて矛先はこっちかよ。

「いまさら過ぎるだろ。
 さくらちゃんがお前の所にくるなんて平和な日常だよ。
 クラスの連中だけじゃなく、学校中がそう思ってるぞ?」

さっきまで話していた友達がさも普通に言い放つ。

「学校レベルかぁ」

「えへへ……照れちゃいます♪」

「ま、さくらちゃんと同じ学年の双子の兄妹も大概らしいけどな」

「桃萌ちゃんですね、すっごく可愛いんですよ」

「へー、見かけたことないなぁ」

「むむ……ご主人さまから邪な匂いがするのですよ……」

「他の娘ねこちゃんや娘いぬちゃんは目立つからなー
 揃いも揃って美少女ときてるし」

「それはまぁ……そうかもなぁ」

「にゃぁん♪
 ご主人さまがさくらのコト可愛いって言ってくれたのです? です?」

「あ、うん、さくらは可愛いよ」

「ふにゃぁん♪ ええへ、嬉しのです♪」

さくらにも【見守る会】みたいな組織があるとは噂に聞いているけど
もしかして本当なのか?
自由奔放に振る舞っているようで、しっかりしていたり気遣いができたり
成績も良いし、男女問わず人気があるとかないとか……。

それはそれとして、なんとかこのまま話をそらせそうだ。

「そりゃじゃ、さく……」

「ところで、そろそろHRがはじまっちゃうけど
 さくらちゃんはご主人さまを怒りに来たんじゃないの?」

言葉を遮るように言われた!

「にゃっ! そうです! ご主人さま! さくらは怒っているのですよ」

「ぅ……余計な事を……」

せっかくうやむやにて教室に返そうと思っていたのに。
あと、周りの見物人はホッとするな……ニヤニヤするな……。

「どうゆうことですか? ご主人さまぁ?」

「お、置いていったのは悪かったよ」

「ご主人さまはさくらと登校するの……や、なのです?」

「手をつないだり、腕を組んで登校しなければ嫌じゃないよ?」

目立つんだよなぁ……

「それはさくらが嫌なのですーー!」

「お前……そんな理由でさくらちゃんを置いてきたの? 最低だな」

ワナワナとわざとらしいリアクションをとる眼の前の男。
ワイワイとそこかしこから上がる抗議の声。
自分のクラスなので凄いアウェー感。

「ご主人さまと同じ学園に入学したのに、
 1年しかご主人さまといっしょに学園生活できないのですよぉ……
 毎日一緒に登校したいですよぉ」

目尻に薄っすらと涙を浮かべながら寂しそうにそんな事を言う。
さっきまでピョコピョコ動いていたみみも力なく倒れてしまっている。

「ぅ……」

この顔には弱い。
本当はエスカレーター式に同じ敷地にある大学に決まっているので
そうでは無いのだけど、そんな事を言い出せる雰囲気では既に無い。
完全に悪者だ……悪いご主人が美少女娘ねこを泣かせている図だ。
クラスの刺々しい空気が痛い。

「わかった……もうしないよ、置いていかない」

「……ホント、なのです?」

「ああ、大丈夫だからもう自分の教室に帰りなさい」

「えへへ、うん……はーい」

少し不満げではあるけれど、これは仕方ない。
軽く頭をポンポンしてあげたら、少しだけ機嫌がなおった気がする。

だが――敵は近くにいたんだ――

「ダメださくらちゃん! もう何回もそう言って丸め込まれてるぞ!」

余計な声をあげたのは、やはり目の前の男……こいつは裏切りものか!

「にゃぁっ!」

「おまっ!」

再び体勢を戻される。

「裏切りものめぇ……」

「はっはっはー、変な言いがかりはやめてくれ
 お前との仲より少しだけさくらちゃんの味方なだけさ、親友」

「安い親友だな……」

「そんなわけで
 折角だから今日のコトをしっかりなぐさめてもらうといいよ」

「えへへ、はい! そうするのですよ♪」

「今の笑顔が見られただけで俺の行為は正当化された!」

グッと親指を立ててクラス中にアピールする。
それだけでクラスがワッと盛り上がる。

えぇぇ……なにこの人たち。

「ご主人さま、さくらはこのままじゃクラスに戻れないのですよ。
 ちゃんと慰めてくださいですよ?」

「そう言われてもなぁ……予鈴も鳴るし、昼休みとかじゃダメなのか?」

「ダメなのですよ……ご主人さまが先に登校してしまって寂しかったので
 しょんぼりとご主人さまの枕を持って登校したさくらのために
 謝罪と賠償が欲しいのですよ」

「何を持ってって?」

「あーそれで昇降口で見かけた時に枕を持ってたのか」

「なんかもう罰を受けている気がするけど」

「……ご主人さまぁ?」

どうした物か……教師が来たら注意されるだろうけど、
さくらが注意されるのは回避させたい。

「もしかしてお前……
 教師がさくらちゃんをクラスに帰そうとしてくれると思っているな?」

しまった、バレた。

「残念ながらそれは無いぞ」

「なぬ」

「さくらちゃんをならHRどころか、一日中膝に乗せていても見逃されるぞ」

「えぇぇぇ……」

「そういうことだ」

うんうんとひとりで納得している

「……なにが、そういうことだ、なんだ……」

そんな状況になると知ったからにはマズイ。
そもそも膝に乗せている時点で本当は困っている。

なんというか……
触れている部分があちこち柔らかいし――
同じ家に住んでいるのになんかいい匂いするし――
さくらは本当に可愛いと思っているし――

これを一日中やられたら正直こちらが持たない。

「さくら?」

「はい? ご主人さま?」

もうこれしか無いんだろうな……

「今日は悪かったな」

そっと片腕を背中に回して、さくらの身体を引き寄せる。
そして空いたもう片方の手で頭を撫でてやる。

「にゃぁっ……ぅ、にゃぅ……ごしゅじんさまぁ~」

最初こそ驚いたのかピクッとしたが
そのあとは身体をそのまま寄せてくる。

周りからは歓声とおめでとう的な囁き、拍手など聞こえてくる
気にするな……気にするな……

「えへへ……にゃあん……ご主人さま、大好き」

ごろごろと頭も身体も擦り寄せてくるさくら。
表情は見えないけれど、満足してくれたかなぁ。

なんだかクラス中からあたたかい視線を感じる。
手を叩くのもやめて。

暫くのあいだ頭を撫でていると予鈴が鳴った。

「ほ、ほら、さくら、予鈴だよ? そろそろ自分のクラスに戻りなさい」

「えへへ……はい、ご主人さま♪
 なでなでしてもらえたので、さくら戻るのですよ♪」

「ああ。 勉強頑張ってな」

「はい♪ 先輩!」

膝からピョンと降りてペコリと頭を下げる。

「ありがとうございました♪ さくら大満足なのですよ♪」

そして、目の前の裏切り者へも丁寧にお礼を言っている。

「気にしないで、俺はさくらちゃんの味方だからね。
 こいつの監視もバッチリ任せておいて」

「はい、いつもありがとうございます」

何か不穏な会話も聞こえる……。

教室内をスルスルと移動しながらも
さくらはお礼を言ったり話をしたり笑顔を見せたりしている。
そりゃ人気もでるよなぁ……。

やがて教室の入口まで戻ると

「失礼いたしました」

ペコリを頭を下げて挨拶をする。
そして

「先輩ー! お昼ごはん一緒に食べましょうねー♪
 今日のお弁当はちょっと頑張っちゃったのですよーえへへ♪
 楽しみにしていてくださいね、先輩!」

「あ……うん、楽しみにしているよ、さくら」

「えへへ、先輩大好きなのですよーー!」

最後にいちばんの笑顔をみせて自分の教室に帰って行った。

「ふぅ……」

「おつかれさん、せんぱい♪」

ポンポンと肩をたたいてニヤニヤしているこの目の前の男を
問いたださねばならない事がある。

「お前には聞きたいことが色々あるんだが……」

「俺はお前の友達で親友だ、困った時は何でも言えよ」

「お前見守るなんとかのコトを知っているな」

「……」

難しそうな顔をして、わざとらしく眉間にしわをよせる。
唸るような声をだしてさも大変そうな演出を見せる。

「お、HRの時間だ、さて今日も一日頑張ろうぜ?」

「あとで教えろよ」

「さくらちゃんのお弁当食べれば何か思い出すかもな」

いい笑顔でそんな事を言い出した。

そういえばさくらが持ってきた枕はどうなったんだ……?

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「あそこの階段降りてくるのは、さくらさんっていう子だっけ」

「にゃ? うん、そうそう。 さくらちゃん」

「桃萌と同じ娘ねこ、なんだよな」

「ももとはちょっと違うけど……って、お兄ちゃん気になるの?」

「そりゃ可愛いし」

「……」

「入学生代表の挨拶の時も色々な意味で盛り上がったからな」

「……お兄ちゃん?」

「ふわふわしてそうで、スタイルも良いしなー
 ご主人さまに一途とわかっていても話しくらいしてみたいさ」

「……」

「桃萌?」

「お兄ちゃんのばかー!
 おっぱいだったらももも負けてないもん!」

「は!? 手を掴んでなにを! ぎゃー!」

「ほらほらーー! お兄ちゃん!
 もっと触って! 確かめて!
 どう? どう? 制服の上からじゃわからないなら
 直接でもいいよ!」

「やめろーー!」

【おしまい】


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