お布団の距離というのは難しいモノで
※登場人物※
『さくら(娘ねこ)』
ご主人さまと温泉旅行中 旅行中にご主人さまと沢山イチャイチャしたい
『やよい(娘ねこ)』
さくらたちが泊まっている宿の娘ねこ女将に言い付けられ
さくらたちの部屋をお世話するが……それには女将の何かの考えが?
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「これくらいの距離かなぁ……」
お部屋に敷かれたふた組のお布団を見下ろしながら真剣に考える。
「ちょっと遠いかな……でもでも、あんまり近いとなんだか……にゃぅ」
くっつけたり少し離したり……またくっつけてみたり、離してみたり……。
お布団の用意をしにきてくれたやよいちゃんといっしょに
お布団を敷いたまでは良いのだけれど……..。
「さくらちゃん……?」
「やよいちゃんどーしよー
ご主人さまが戻ってくるまでに決めにゃいと……」
「ふたりきりなのですから、並べてよいと思いますよ」
「そ、そうだよね! ご主人さまとさくらだもん、
くっつけてもいいんだよね」
「はい」
「えへへ、ありがと! やよいちゃん! ……じゃあくっつけて……」
いそいそと布団をぴったりとくっつける。
よしよし♪
「だって……さくらちゃんは
すぐにご主人様のお布団に移動してしまうんですよね?
それなら近いほうがよいと思いますし」
「え?」
「それより……
いっしょのお布団で寝るなら、ひと組でよかったかもしれませんね。
やよいがふた組敷いてしまったので、余計な気を使わせてしまいました。
ごめんなさい、さくらちゃん」
「え、え、ええぇぇ! 寝ないよ!?
別々のお布団で寝るよ!?」
「え?」
小首を鍵げながらポカンとした顔でさくらを見るやよいちゃん。
「えぇ……ぅぅ……」
「さくらちゃんはご主人様といっしょののお布団で寝たくないのですか?
「ぁう」
「……」
じっと見つめられる。
「……ご主人さまと…いっしょのお布団で寝たい……です……」
「よかったです」
ニコッと笑顔になるやよいちゃん。
「やよいちゃんはなんで……その、そんなに気を使ってくれるの?」
「だって、さくらちゃんはやよいお姉ちゃん……になる方なので……
お姉ちゃんに喜んでもらいたいなって」
「お姉ちゃんって、そういえば……
お部屋に案内された時もそんな話をご主人さまと女将さんとしてたよね?
その……ご主人さまって……?」
「それにやよいも……ご主人様といっしょに寝られたら嬉しいから」
頬を赤くして、照れながらつぶやく。
あれ……ご主人様って……?
「やよい……ちゃん?」
「さくらちゃん?」
「う、うん?」
「お布団ひと組片付けてしまいますね?」
「え、あ、う、うん……」
テキパキとお布団をたたむやよいちゃん。
なんだか色々疑問はあるのだけれど……それでも……
今晩はご主人さまといっしょのお布団で……はぁぅ……ぅ……。
グルグルと考えていたら、障子を開ける音が聞こえた。
「ただいま。
って、なんで布団片付けてるの?」
「にゃぁぅ! ご、ご主人さま!?
あっ、えっと、あのあのあの……」
あわあわしていると後ろから声がした。
「申し訳ありません、ご主人様」
「うん?」
「や、やよいちゃん!」
やよいちゃんの方を振り向くと、抱えていたお布団を置いて
「枕はふたつ必要ですよね」
と、枕だけ持って敷いてあるお布団にきれいに並べてくれた。
「え?」
気の抜けたような声をご主人さまが出す。
「あ、失礼いたしました……」
ペコリと正座したまま頭を下げるやよいちゃん。
「腕枕されるなら必要無いかも知れません……いかがいたしましょう」
ひとりごちるように呟くやよいちゃん。
「にゃぁ……ぅぅ……ぁ……」
「えっと……さくら、やよい?」
「ぁう」
「はい」
「取り敢えず……状況を教えて欲しいかな?」
その後、やよいちゃんとふたりでご主人さまにお布団のコトを話して……
お部屋にはひと組のお布団だけ残すことになった。
にゃふぅ……さくらはご主人さまのコト大好きなのですよ。
【おしまい】