なんでかわからないけど。
次の日、キツネはまた楠木のところに来てみた。
あのモグラにもう一度会ってみたい。
会って、話してみたい。そう思ったからだ。
でも何を?
青なのに黄色のきのこについて?
「う〜〜ん。わかんないけど・・・」
キツネはひとりつぶやいた。
きのこのことが気になったのか、
それとも、モグラのなにが気になるのか、
自分でもよくわからなかった。
でも、なんだか気になる。
もう一度、モグラに会ってみたい。
楠木は土中のネットワークでモグラの居場所を感じ取っていた。
土の中では菌たちがメッセンジャーとなりあらゆる情報を交信している。
木は根からその情報を受けとる。
だから、いま自分の足元にいるキツネがモグラを探していることを
楠木は根から菌たちに伝え、菌たちのネットワークから
そのモグラは向こうの林の巣の中にいることを、楠木は受け取っていた。
それで、
向こうの林に咲いている、金木犀の花の香りを強くして、
植物たちはキツネに無言で語りかけていた。
「ルールーラタタラタタ、ルーラルーララン」
キツネは昨日からずっとあたまの中に流れているメロディーを
小声で口ずさむと、
鼻をヒクヒクとさせて
風に乗って運ばれてくるいい香りのする方へ向かって歩き始めた。