痩せたい?そもそもあんた「痩」って漢字書けんの⁈
私は怒っていた。会社近くの小さな居酒屋やっちゃんで「ていうか今年の夏こそ痩せたいんだよね〜」と呟いた同期のマイに対して怒っていた。
「マイマイ〜、それ毎年言ってんじゃん! ていうか私より全然細いじゃん。私の二の腕が大根だとしたら、あんたの二の腕たくあんじゃん」
するとマイは「大根というのは脚の太さを表現するときに用いる野菜であって、二の腕の太さを表現するときに用いるんじゃないよ」と謎の逆ギレをかましてきた。
そこで私はマイの白い二の腕をぐっと掴んで続けた。「あんたがノースリーブからむき出しにするこのもちもちっとしてスベスベッとした二の腕をみるたびに暑中お見舞い申し上げたくなんのよ!」
「さっきは私の二の腕をたくあん呼ばわりしたくせにもちもちしてんじゃないわよ! 私は二の腕と胸はもちもちっとしたままでウエストとふくらはぎだけ落とすべくチョコザッてんの」
私はもうこの話終わらせてもいいなと思いながら続けた。「チョコザップって聞くたびに、ちょこざいなことしやがってと思うんだよねー。このちょこざい娘め!」
マイはカウンターのお猪口をひょいと持ち上げながら言った。「ちょこざいってお猪口のように小さな才能ってことよね? 私はちょこざいでありたい。ちょこざいで充分。あんたはお茶碗のような才能を発揮すれば? おちゃわんざいケイコ」と言いながらくすくす笑った。
カウンターの中にいる大将が微笑んだ。「お猪口なマイちゃん、お茶碗ケイちゃん、もう一合飲むかい?」
「めちゃめちゃいいリズムじゃーん!」
「もう一回言って!」
「おちょこなまいちゃん
おちゃわんけいちゃん
もういちごうのむかい?」