山手線の路線図はピーマンの形をしています
と村上春樹のエッセイに書いてあった。まあ、たしかに。まん丸というよりはピーマンに近いか。色も緑だしね。
まぁるいみどりの山手線、というのが某量販店のコマーシャルソングで刷り込まれているが、駒込あたりと品川あたりは少しいびつなカーブを描いている。今度乗る時は線路に注目してみよう。
山手線の一周は34.5km。駅の数は30。私は心身ともに疲れきっていた時に二周半したことがある。つまり86kmくらい乗っていた計算だ。
ぐるぐると周らなかったらどこまで行っていたのだろう。東京駅から86kmってどんな場所だろう。
房総半島すっぽり。改めて関東平野の地図を眺めると、さいたま、横浜、船橋は都心だなと思うし、新幹線の速度ってとんでもないなと思う。
若い頃は電車の中でよく寝ていたし寝過ごしたが、最近は電車の座席で寝られなくなった。寝過ごすわけにはいかないという緊張感と、足腰背中の柔軟性のなさも一因か。長時間眠り続けるには、ある程度の体力と膀胱の伸縮性もいるのかもしれない。
話をピーマンに戻そう。私はピーマンの内側に住んだことがない。単純に家賃が高いというのもあるし、私が生活必需品だと思っている気楽な飲食店や銭湯が少ないし、空がすこーんと抜けた河川敷も競馬場もない。ピーマンとは正反対、ぎちきちみちみちにビルが詰まっている。
そうか、東京ってピーマンの肉詰めみたいな街なんだ。
本来すかすか空っぽだったところに、人とビルと情報とお金と欲望と愛しさと切なさがぎちぎちぱんぱんに詰まっている。なんておそろしい、そしておいしいところだろうか。
ピーマンの肉詰めにはまあまあ好意を抱いているが、今後の人生でピーマンの内側に住むことはないだろうし、自分で手作りすることもないだろうなあ🫑
山手線の話と料理の話を混同しながら、完