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氷の板を割り続けるラッコを見ていたら9月になった

スナックのカウンターでぼんやりしていると、突然ラッコが現れた。

現在は三重の鳥羽水族館と福岡のマリンワールド海の中道にしかいないはずのラッコが、なんで東京の小さな町のスナックにいるのだろう?

カンカンカンカン! 石で貝を割っているような高い音が響く。それは耳障りな音ではなく、むしろ心地よい音だった。

 目的があるから、弾丸は速く飛ぶ。

1985年頃のPARCOの広告はこんなコピーで展開していたというのを本で読んだことがある。PARCOと弾丸。距離がある。街の人もショップ店員も「弾丸?」となっただろう。しかし、目的がある人で、開店直後は混雑する。だと広告コピーにならない。

なんで39年前の古典を思い出したかというとスナックに突如現れたラッコが店内に響かせる音を聴きながら「目的がある音っていいなぁ」と思ったからだ。

 目的がある音は、呼吸とシンクロする。

大工さん、寿司職人、運転手、農家、そしてラッコもラッパーも、何かを変えようとしている人がだす音はリズミカルだし、呼吸を合わせたくなるし、その先のベターワールドを期待させてくれる。

逆に目的もないのに鳴っている音、鳴ってしまっている音というのは不安や不快をうむ。風鈴がたまに鳴るのは夏の風情だが、ベランダや玄関先でよく分からないものがチリンとかバタンとか鳴ったら器物破損か、おばけか、嫌がらせだろう。くわばらっこ

そう、ラッコの話だ。🦦

カンカンカンカンカンカンカンカン

よーし

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン

いいねぇ

息をのむ時間と息をはく時間。緊張と緩和。落語や漫才でも見ているようだ。カウンターの中のラッコは8突きくらいで目的を達成する時もあるし、13突きくらいかかることもある。私もやってみたいが、指を怪我して大騒ぎする未来がみえた。

でかい氷塊に
亀裂が入って
パキッと割れる

高橋名人なら、加藤鷹なら、北斗のケンシロウなら、アイスピックを使わずに指で割れるんだろうなと考えていたら9月になった。

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