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私は右へ、あなたは左へ。
同期入社のKとひさしぶりにごはんを食べた。
新入社員の頃は似たような夢を語り、似たような不満を愚痴って、深夜にラーメン屋で待ち合わせたり、始発までカラオケに行ったりする仲だった。
お互いに独り身だったから土日もよくつるんでいた。郊外の遊園地でばったり会った先輩から「付き合ってんの?まぁ内緒にしとくわ」なんて言われたこともあった。
部署はぜんぜん違うが、チャンスの回数ももらってる給料もたいして差がないはず。だけど私がみている景色とKがみている景色はずいぶんと変わってしまったようだ。ファッションも、財布も、店員さんへの言葉遣いも、あの頃のKとはまるで別人のようだった。
「別に不満があるから辞めるわけじゃなくて、このままだと知らず知らず腐っていくような感覚があって」と言われた。「まぁ上司にはヘッドハンティングされちゃいまして、と説明してるんだけどね」と付け足しながら、東京タワーを見上げる横顔にドキッとした。なんだかすっかり、東京のビジネスマンって感じじゃーん。
私も知らず知らず腐っているのだろうか。不満もあるしヘッドハンティングもされない私は「また来年のきょう、会って話そうよ」と言うのが精一杯だった。