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公文いくもんタクシーで

私はタクシーに乗って公文に向かっていた。その公文に行くのはうん十年ぶりだ。

しばらくすると知らない道を走っているように感じた。後部座席からカーナビ画面をのぞきこむと随分と迂回しているように見えた。

「運転手さん、私が行きたい公文は南団地の公文です。もしかして北団地の公文に向かってませんか?」

「もうすぐ着くから」

「ここで降りますからメーターとめてください。えっ?15000円?」

「大丈夫だから」

何もだいじょばないのでお金を払ってタクシーから降りると、そこは歌舞伎町のような繁華街だった。薄々気づいていたが公文はない。

15000円あったら夜遊びできたよなぁと思いながら、コンカフェのような店に入る。顔馴染みの女主人の横に座る。

「きょうはキャストがたくさんいますね」

「きょうは11人、もうすぐ試合が始まるからね。あんたも出たいんなら40秒で支度しな!」

ロッカールームで靴紐を結び、私は愛犬のリコピンとともにマウンドへと向かった。

リコピンはケルベロスだ。左が外野手、真ん中がボランチ、右はプロップだ。

会場にはオルゴールサウンドで「愛の讃歌」が流れている。今日こそワールドカップに勝利して、地球の平和を取り戻したい。

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