わたしの暮らし、わたしの道具
"SDGs"
と聞いて、「あぁこういうことね!」としっくり来る人は実際どれくらいいるのだろう…?でも実は、古くから日本人に馴染み深い感覚なのではないか…?
というのも、私は地元新潟の燕三条地域でものづくりのPRの仕事をするようになり、その感覚が言語化された。
関わっているのは150年続く鍬専門の町工場。鍬の需要低下により、今後は鍬以外の物も製造・販売できるよう、自社ブランドを設立。
その名も「野鍛冶やまご」。
「野鍛冶」とは江戸時代にあった職業で、包丁や農具・漁具、山林刃物など、暮らしの道具を小規模ながら幅広く手掛ける鍛冶屋のこと。そして、新しい道具を作るだけでなく、修理までも幅広く請け負う。
その工場も元々は野鍛冶だったため、原点回帰。
鍛冶屋は小規模で大量生産に向かない反面、一つ一つ手で叩いて作るため、使う人の要望に細やかに対応できる。
実際、「筍を掘る専用の鍬」や「漁師が使う銛」など、ニッチな道具の依頼が来て製作した。
機械製造が中心の会社だったら、いくらお客さんの要望とはいえ、道具一つだけを作ろうとはならない。
今、ほしい物はいつでもどこからでも探すことができるようになった。その反面、使っては捨てるのが当たり前になり、自分がほしいものではなく、ほしいものにできるだけ近いものを買うようになったのだと思う。
そして、かつて身近だった職人は、現在は良くも悪くも崇高で遠い存在に…。
でも本当は、自分のための道具だと思える物・自分の暮らしに合う物を買うことが、物を永く使うことに繋がるはずだ。
だから私たちは「現代の野鍛冶」として、使う人の顔や生活を想像し、人に寄り添ったものづくりをしていく。お客さんとの関係性を大切に生活道具を作っていく。オーダーメイドやカスタムも承り、製品に責任を持って修理も対応する。
だから、コンセプトは「わたしの暮らし、 わたしの道具」。
私は職人ではないけれど、そういう職人や工場が身近にあるということを伝えていくのが、私の役目だと思っている。
実際にやっていくのは「商品を売る」ということかもしれない。けれど、「野鍛冶やまご」を通して「自分の暮らしに合った道具を作ってもらい、修理して永く使う」という文化を伝えていく。
それが、私が未来のためにできること。