「同期は大切にした方が良いよ」の違和感
12年前、私は大学を卒業して、市役所に入所した。
数十万人規模の自治体のため、私の年の新規採用職員は100人程度居た。
(市役所では新入社員のことを、新規採用職員(新採)と呼ぶ)
私がその新採だった頃に、
先輩や上司から頻繁に言われたセリフ、それがこれだ。
「同期は大切にした方が良いよ」
「小学校に入ったら、友達と仲良くしましょう☆」
みたいなことを、なぜ言うのか不可解だった。
新規採用職員とは言え、
下は高卒採用枠の18歳、上は民間採用枠で恐らく40歳前後の立派な大人だ。
同期とは言え、気の合う人もいれば、気の合わない人がいること、
良い年した大人なら当たり前にわかることなのに。
ここでは「♪友達100人できるかな」が求められているのか…?
その理由は、このように説明された。
「仕事で他部署に用事がある時、同期が居たら聞きやすいから」
「同期との繋がりがあったら、仕事がスムーズに運ぶから」
???
当時の私は、より不可解に包まれた。
(仕事で他部署に用事があるなら、誰に聞いても良いのでは??)
(だって、それが仕事でしょ??)
(私たちは市を良くするという共通の目的のもと働いているのだから!)
(自分の部署の仕事も、他部署の仕事も、全て同じ。市を良くするための仕事なんだから!)
私にも、そんな時代があった。
目はキラキラと輝いていた。
…そんな健気な考えは1年もしないうちに打ち壊された。
市役所は、想像以上にTHE年功序列社会だった。
仕事上の必要に応じて、他部署に質問しても、
よその部署の下っ端からの質問なんて、鬱陶しいだけ、
面倒臭い仕事を振ってくるな!と言う態度をされるのだ。
(もちろん、全員が全員ではない)
そんな時、その部署に同期がいる先輩に代わりに用事を聞いてもらうと、
驚くほどスムーズに話が進む。
なんなら、少し〆切が過ぎてる書類でも
「(同期の○○の頼みなら)全然、いいよ〜」と許される。
10年以上経ち中堅職員と言われるようになっても、
見ず知らずの私からの引き継ぎとなると難癖つけて突っぱねられたりした。
そんな時もまた、その職員と仲の良い上司を引き連れて話をすると、
一転して笑顔で引き受けてくれたりする。
身内に甘いというが、
身内の身内にはもっと甘い。
「同期は大切にした方が良いよ」
とは、やるせなくも
戦略的に市役所で生き延びる術だったのだ。
(皆で市を良くするために頑張ろう!)
と言う気持ちは、その他様々な理不尽を経験することで消え失せていき、
2年目職員になった頃には、新採当初の私のキラキラした目は濁っていった。
これ以上、もう蝕まれたくないと言う思いで
逃げるように退職した。
(退職理由は他にも色々あるので、今後また…)
もう30代も半ばであるが、
あの時のキラキラした目の輝きを取り戻したいと思っている。
…さて、私は実際に同期と仲良くしていたのか。
「同期とは仲良くした方が良いよ」
この言葉に触発されてか否かは不明だが、
入所して早々に同期のグループLINEが作成され、
4月のうちに同期会、大卒同期会、事務職同期会、研修班同期会…等が開催された。
最初こそ私も参加していたものの、
当初配属された部署がなかなかハードで残業も多く、徐々に参加できず同期とは疎遠になっていった。
それでも、退職時は同期有志からスタバカードを貰ったりした。
付き合いが悪く、いけすかない私とも仲良くしてくれて有り難かった。
「同期とは仲良くした方が良いよ」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?