corner of kanto アルバム制作について②
前回①に引き続き、corner of kantoの2ndアルバム「輝く池」の制作について、今回はベースとギターの録音機材を解説する。
corner of kantoの楽曲は緻密なアンサンブルが特徴で、楽器隊のリズムをかなりシビアに合わせる必要がある。やろうと思えば演奏を切り貼りしたり、波形をいじってタイミングを修正してしまうこともできるのだが、単純に細かい作業が面倒くさいし、個人的なこだわりとしてそういう魔法の技術に頼るのはできるだけ避けたいという思いがある。うちのバンドはあまり派手なエフェクターも使わず、生音勝負みたいなところがあるから、なおさら素の演奏を大事にしたい。そうなると必然的にリテイク数が増えてくるので、いちいち時間制限のあるスタジオに入るのは非効率である。そのため、各自がライン録音した楽器をリアンプするという手法を採っており、これは前作と共通だ。ただし、今回は高品位なキャビネットシミュレーターを活用したため、マイキングなしで完全に宅録で完結させることができた。
私のベースパートは自宅でいくらでもやり直しできるので、アンプシミュレーターをそのままかけ録りしてしまった。使用したのはSoftubeのBass Amp Room(UAD版)である。なかなかにリアルな音がする。
ギターの録音に関しては、お馴染みUniversal AudioのOx Amp Top Boxが大活躍した。
これはアッテネーター兼キャビネットシミュレーターで、「大音量で鳴らす真空管アンプの迫力あるサウンドを自宅でも」というコンセプトの製品だが、付属のキャビネットシミュレーターが非常に優秀で、下手にアンプをマイキングするよりもずっと良い。私はDTMもやるので、これまでLine 6 PodやStrymonのIridiumなど、定評のあるアンプ・キャビネットシミュレーターを試してきたが、それらとはレベルの違う音がする。宅録のギターサウンドに満足できていない人や、手持ちのアンプヘッドを自宅練習でも使いたい人にぜひおすすめしたい。
うちのバンドのギタリストは二人とも自前の小型アンプヘッドを所有しているので、今回の録音では私の自宅までそれを持ってきてもらい、オーディオインターフェースからのライン出力→リアンプボックス→アンプヘッド→Oxという接続でリアンプをした。前作の録音では実際にアンプを鳴らしてマイキングしたが、それと遜色ない音で録れていると思う。
リアンプ中です。 pic.twitter.com/CentqYdyym
— corner of kanto (@cornerofkanto) October 6, 2024
キャビネットシミュレーターはいろいろモデルを選べるものの、矢部さんギターはフェンダーツインリバーブ、小紫氏のギターはマーシャル(年代とかで似たようなのがたくさんあるので厳密にどのモデルだったかは忘れた)のキャビネットを選択した。普段のスタジオ練習で使用しているのと同じ組み合わせで、やはりいつものサウンドをそのまま聴かせたい、という意図でのチョイスである。
以上がベース・ギター録音機材の概要である。次回はボーカル・コーラス録音編に続く。