corner of kanto アルバム制作について⑤
前回の続き。使用したDAWについて紹介する。予定より長くなってしまったが、今回が最終回。
私は昔からCubaseを使っており、ドラムのレコーディングもCubaseで行った。単純に慣れているので作業が早く、間違いが少ないという理由である。ドラムは必ず時間を決めてスタジオに入らないといけないので、ここで変なミスがあるといろいろとややこしくなる。
上の文章から何となくお察しいただけるかと思うが、特にCubaseを気に入って使っているという訳ではない。レコーディングでのトラブルは少ないものの、ミックス作業で負担がかかると突然落ちたりすることがけっこうあって、イマイチ安定感に欠けるのである。
Studio Oneあたりに乗り換えようかとも考えたが、今回のアルバム制作に関してはUniversal Audioが無償提供しているDAW、LUNAを活用してみることにした。
Cubase、Logic等の主要DAWと比べると、ユーザーは相当少ないと思われる。ApolloユーザーでUniversal Audio好きの私は、発表されてそれほど間もない頃からインストールしてちょこちょこいじっていた。DAW自体は無料であることや、UADプラグインやApolloとの相性が良いことは魅力的だったのだが、ピッチ補正などボーカルエディットの手間がかかりそうだったり、MIDIが扱いづらかったり、サイドチェインなど一部の機能が対応していなかったことから、実用には至っていなかった。今回のアルバム制作のタイミングで改めて調べたところ、アップデートでサイドチェインは対応済みとの情報を得た。さらに、たまたまCelemonyのMelodyne Essentialがタイミングよく無料配布されていたので、ボーカルエディットの問題も解決できそうである。今回はバンド録音なので、MIDIも使わない。メインDAW乗り換えの検討も含め、試すにはちょうど良い機会である。
Cubaseとファイルを橋渡しするときに多少トラブルはあったものの、結果としてはまずまずで、ミックス作業はやりやすいし、Apolloと統合されているからルーティングの設定も分かりやすかった。
ApolloやUADプラグインの使用を前提として作られているからか、ミキサー画面は少々独特で、テープシミュレーターやバスコンプ、サミングなどのUADプラグイン専用スロットがあったりする(もちろん通常スロットでその他のUADプラグインや他社製のプラグインも使用可能である)。バスコンプとサミングはプラグイン未所持なので使わなかったが、テープシミュレーターのAMPEX ATR-102はギターの音の角を取るのに重宝した。回転数7.5くらいのローファイ気味のセッティングにして、ギターをまとめているバスに挿すことで、ギターの音が柔らかく耳触りの良い感じになった。
ミックスが終了するとマスタリング作業に移るが、私はWavelabというCubaseと同じ提供元のマスタリング用ソフトウェアを使っており、音圧と最終的な仕上がりの調整、CDプレスのために納品するファイルの作成はこちらで行う。CDをプレスするには、DDPファイルという曲順やらクレジットやら音源以外の情報も含んだ諸々のデータセット(正直そこまで詳しくないので厳密には違うかも)を作成する必要があり、CubaseだとDDPファイルが扱えないのである。またネガティブなことを書いてしまうが、CubaseとWavelabを両方そろえるのも定期的にアップデートするのも結構な出費になるので、やっぱりStudio Oneに乗り換えたほうがいい気がしてしまう(Studio OneはDDPにも対応していて、マスタリングまで同一ソフトウェアで完結できる)。Wavelabは波形編集の機能などもあるので、本当はかなり高性能なのだろうが、私はそこまで使いこなせていない。導入価格なども考えると、ロックバンドの音源制作にはオーバースペックなのだと思う。ゲームの効果音とかを一から作るような人には良いのかもしれない。現在corner of kantoとは別件で、ゲームの音楽・音響に関わっているので、もしかしたらそちらで更なる活躍の場があるかも。
以上で、corner of kantoアルバム制作についての記事は完結となる。DTMをやっていたり、バンドの音源制作に関わっている人の参考になる情報が少しでもあれば幸いである。