「あの有名な芥川賞作品だが、さらに声援を送りたい~『火花』~」
『火花』 又吉 直樹 著 (文藝春秋) 2016.3読了
図書館予約した本がやっと回ってきました。実に、7ヶ月待ちです@@(あくまでも2016年3月時点でのはなしです)
すでにたくさんのレビューが存在しますが、とりあえず私なりに書いてみようと思います。
お笑い芸人を目指す徳永。ある花火大会の余興で、ひとりの漫才師と運命的な出会いをします。
徳永にとっては、天才的な才能を持つと思える神谷という先輩です。
お互いなかなか売れない芸人同士ですが、徳永は神谷をずっと尊敬していました。
独特の、芸や生き方に対する持論を展開する神谷でしたが、現実的には世間に通用するようなものではありませんでした。
しかし徳永は、不器用で突飛なこの師匠とも思える神谷のことに目が離せないでいたのです。
お互いそれぞれに歩んでゆく二人でしたが、どこか似ていないようで似ている二人。
切磋琢磨して…というよりも、お互いを意識して生きているのです。
結局、世間の海の中を泳ぐのがヘタな、漫才も人生も二流という海の底から浮き上がってこられない、不器用な二人の半生を描いています。
確かにこの本の内容については、感想が様々に存在します。
純文学的な表現方法は、新鮮だけどエンターテインメント小説に慣れきっているものには、多少読みづらいものがあるのは事実です。
だからそういう中のひとりである私も、読み始めの何ページかはなかなか頭に入ってきませんでした。
芸人の話だから…と、読むのに距離を置く人もいるでしょうし、私が実際そういう感情を持っていました。
特別、芸人の裏側を興味を持って知りたいとも思っていませんし。
しかし世間のある底辺に近い部分に居続ける人々の生業を、冷静に見ているような内容は単なる芸人ばなしではないのかもしれません。
ただレビューをチェックしてみると、「純文学的でよかった」という人もいれば、「つまらなかった」、「賞をとったのはまぐれ」という人もいるようです。
内容に、う~ん…といい反応を見せない人も多いのも事実です。
これだけでは、作者の思いをすべて出せなかったのかもという気もします。
今後は全く違った内容の物語を書いてほしいなと思います。
それはまた純文学でももちろんかまいません。
一番近い世界である芸人の世界ではない、別の内容で。