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人生の固定費

#いい感じにはたらくTipsアドベントカレンダー2019
10日目担当曽和です。

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若い頃、人事コンサルティング業界の超大物の方に、「自由なキャリアを歩みたければ人生の固定費を低く保っておくべきだよ」とアドバイスを受けたような気がする。おぼろげに。

どんなことをしていてもかかる費用=固定費が低ければ、お金が足りなくて背に腹は変えられない、みたいなことがなくなる。そうすれば、変に我慢することなく、自分が思った通りに生きることができる、と。

若かった自分は、ピンと来なかったので、明るく「人生の固定費ってなんですかねー」と聞くと、すぐに「そりゃあ、一番は家族だよ」と答えてくれた。嗚呼。確かに。そりゃそうだ。家族か。

尾崎豊ファンだった僕は自由に生きて熱くなりたかったので、なるべく重荷を背負わずに軽やかにしなやかに生きていこうと決意をしたものだ。一人で自由に生きていくのかなあとか思っていた。

・・・

それから20年以上の月日が経った。結局自分は、その超大物の方のアドバイスを聞かなかったばっかりに、人生の固定費を山ほど抱えて生きている。

誰かが「自分のさみしさを癒してもらうものが、一番お金を奪っていく」と皮肉げにつぶやいていたが、そうだなあとしみじみと思う。それで、固定費を抱えることになった。

妻子もいるし、東京・京都の二重生活をしているので、家や交通費などすごくかかる。会社経営までしてしまって、社員とその家族に対する重い責任を背負っている。転職とかもできるはずもない(社長が転職してどうする)。

自由に仕事を選べるのが独立だというのは、天才的なすごい人のことであり、僕のような凡才にとっての独立は、むしろ誰も守ってくれないので、自分で身を守るしかなく、結局、どんなオーダーでもNOと言えないことなのだと気づいた(まあ、性格の問題ですが)。

ある意味、自由ではないのかもしれない。

・・・

しかし、じゃあ、そういう人生の固定費を全部なくした人生を考えてみるとどうだろうか。確かに身軽かもしれない。

明日、ブータンに行きたいと思ったら、なんの躊躇もなくいけるだろう。今も行くには行けるだろうが、かなり仕事を調整しなくてはいけない。でも、ブータンとか別に行きたくないので(あの猪木さん似の格好いい王様には憧れるが)、そもそも前提がおかしい。

自由になってやりたいことがあるのか。

・・・ない。

むしろ、人生の固定費と呼ばれた、家族や社員や会社などがなくなったら超さびしい。それこそが生きがいだと言える。それがなくなって、自由になったとしても別にそんなに良いことなどない。

だったら、なんで自由なんて求めていたのだろうか。尾崎的なファッションなのだろうか。自由になることなんて大事なことなのだろうか。

それは僕が貧しい心性の持ち主だからだろうか。もっと年末に第九を歌いに行ったり、市民マラソンを完走してみたり、料理に凝ってみたり、ライトアップを見に行ったりと、自由な時間を謳歌した方がいいのだろうか。

そうかもしれないが、人は結局主観の世界の中に閉じ込められて生きているわけで、誰かが仕事だらけでがんじがらめの自分のことを、不自由な状態に甘んじて生きている犬が!バカが!とか貶めたとしても、自分自身が不自由に満足していたら、それでも別に構わないのではないだろうか。

・・・

昔、B'zが「ギターキッズなんちゃら」という歌で、「譲れないものを一つ持つことが本当の自由さ。束縛されないことが(Baby)自由じゃない」と言っていたのを思い出した。

これだ。さすが稲葉さん。

自由の定義が違ったのかもしれない。束縛されないことをが自由じゃないのだ。今の「働き方改革」的文脈では、ややもすると「どうやって束縛から解放されるのか」という問いばかりになっているような気がする。

でも、「束縛から解放」されて一体どうするのか。まさに解脱。解脱か?解脱ならしてみたいな・・・でも、おじいちゃんになってからでいいけども。

話を元に戻すと、僕が求めていた自由とは「束縛されないこと」ではなかったのだろう。むしろ、縛って欲しい。縛られることに幸福感がある。どMか・・・。

だから、「人生の固定費を低く保つ」という超大物のアドバイスは当たらなかったとも言える(家賃とか車とかを安く、というのは実践しており、そういう意味では参考にさせていただいている)。

「譲れないものを一つ持つ」

それさえ持っていれば、肉体的にどれだけ束縛されていようが、精神は自由だ。

いい感じにはたらくためには、束縛から逃げて自由な孤独を味わうのではなく、愚痴をこぼしながら、「あー疲れた」とか「まったくもう」「本当にあいつってやつは」とか言いながら、自分が大事にしている「譲れない」何かの部分で、誰かに貢献しているという実感を持つ努力をした方が近道かもしれない。

やりたい放題の自分の価値を認めてくれて、束縛してくれる人や仕事に感謝したい。



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