珈琲店から夢は咲く 第7話「純喫茶モネ」
カフェ。それは文学や写真、絵画、映像作品など、様々な芸術作品が生まれてきた場所。仕事で疲れた身体と心を休める場所でもある。
この『珈琲店から夢は咲く』では、クリエイターの卵である夢咲すずがカフェに行って創作のインスピレーションを受け、その様子やカフェを紹介していく。
創作活動をしている人、カフェが好きな人、そして偶然この記事を目にしてくれたそこのあなたにも、少しでも「面白い」「参考になる」「自分も行ってみたい」と思っていただけたならば光栄である。
戸塚の純喫茶
ここは神奈川県横浜市戸塚区。横浜市の歴史ある主要都市のひとつ、東海道線と地下鉄の交わる主要駅。そんな戸塚の駅前にやってきた。
戸塚といえば、駅直結の大きな商業施設がたくさんあるのが印象的だ。人通りも車通りも溢れ返るほどに多い。まさに大都会というべきだろう。
アンテナのようなモニュメントのある東口のデッキを進むと、今回の目的地はすぐそこにある。なんと駅直結なのだ。
今回訪れたのは純喫茶モネ。このお店は戸塚モディの2Fにある。大型商業施設に入っているカフェというとチェーン店のイメージが強いが、ここは一味違う。昭和のレトロな雰囲気がする喫茶店が暖かく出迎えてくれる。
さて、レトロな喫茶店といえばやはりナポリタンだろう。そんなわけで今回はコーヒーとナポリタンをいただくことにする。
昔ながらのナポリタン
今回注文したメニューは、ナポピザとブレンドコーヒー。どうやらナポピザはこのお店の名物のようだ。
たっぷりとろけたチーズがナポリタンを包み隠している。そして、どことなくレトロな雰囲気がある。とても美味しそうだ。
チーズがよく伸びる。そしてとても美味しい。ナポリタンは昔ながらの味つけに、玉ねぎやピーマン、ベーコンが入っている。シンプルだがそれがいい。
そして、そんなナポリタンを包みこむたっぷりチーズ。これがまた相性抜群だ。ケチャップとチーズの組み合わせなので美味しいのは当然なのだが、実際にこうして食べてみるとやはり美味しい。ナポピザの名前のとおりピザっぽい味だが、イタリアンというよりも日本の洋食屋の味という感じの雰囲気だ。
タバスコとごま辣油をかけて味変をすることもできる。今回はタバスコを少しかけてみたが、これもまた相性が良い。
調べたところによると、この純喫茶モネは日本ナポリタン学会の認定店とのこと。なるほど、これは納得の味だ。私個人の感想だが、ここのナポリタンは今まで食べてきたナポリタンの中でも特に美味しい。
食後にブレンドコーヒーをいただく。外は真夏でも、空調の効いた屋内で飲むならやはりホットコーヒーだ。
コーヒーもとても美味しい。苦味が強く、反対に酸味はあまり感じない。私は苦いものはあまり好きではないのだが、このコーヒーの苦味は不思議と癖になる。こだわりを感じる味わいだ。
ミルクを入れると苦味や美味しさはそのまま、マイルドになって飲みやすくなる。ブラックもとても美味しいが、これもなかなか良い。
50年の歴史
ここ純喫茶モネは50年以上の歴史を持つ名店のようだ。およそ半世紀もの間、戸塚の街を見守り続けた純喫茶モネ。変わりゆく戸塚の街で変わらない美味しさを提供し続け、今では多くの戸塚区民に愛される名店となったのだろう。
快く撮影を許可してくださったので、店内の様子もたくさん撮影した。木目調のテーブルと椅子、そして茶色のソファ。まさしくレトロな喫茶店。優しさのあるとても居心地の良い空間だ。
「特に変わったところのない普通の喫茶店ですよ」
お店の人はそう言っていたが、それこそが良さだと私は感じる。私はこれまで独特で面白いカフェをたくさん巡ってきたが、この純喫茶モネのようにいかにも普通の喫茶店らしいお店には、ここでしか感じることのできない安心感と良さがある。
「そこのピンクの電話機も撮ってみたら?」
視線の先にあったのはダイヤル式の電話機だ。すごい、実物は久しぶりに見た。
私が最後にダイヤル式の電話機を見たのは5歳くらいの頃、祖母に連れられて訪れた古びた宗教施設のエントランスに置いてあったのを見たきりだ。
まだ使えるのだろうか……、とはいえ私はダイヤル式の電話機の使い方を知らないのだが。
「この前、お母さんに連れられて来た小さい女の子がこの電話機見てね、なにこれ!って言ってたのよ。」
私もたまたま見たことがあっただけで、同年代の人でもダイヤル式の電話機を見たことすらない人も少なくないだろう。さらに下の世代となればなおさらだ。
美味しいナポリタンとコーヒーをいただけて、ここでしか聞けないかわいいエピソードも聞けたので、感謝の言葉を告げてお店を後にした。
夜の戸塚の街は賑やかすぎでも落ち着きすぎでもない。人通りも多すぎず少なすぎず、明かりも眩しすぎず暗すぎず。こういう街は嫌いじゃない。むしろ私には住みやすい環境だろう。そんなことを考えながら、駅前のデッキを歩く。
行き交う人々の会話の音、ストリートライブのピアノの音、通過する貨物列車の音。私にとっては、どんなASMRよりも聴き心地の良い音たちだ。ずっと聴いていたいが、さすがに夜も遅くなってきたので、そろそろ帰宅することにしよう。
そして……
帰宅。かつてのような汚部屋から一転、少し片付いて綺麗になったワンルーム。ここがいわゆる夢咲音楽館だ。おやすみ前に1杯、コーヒーでも飲もうか。
スーパーで買ったドリップコーヒーを淹れる。これも悪くない。
しかし、最近はこの味では満足できなくなってきた。いろいろなカフェや喫茶店を巡り、そのお店のこだわりの味を飲み続けてきた。だから私は知っているのだ。この世にはもっと美味しいコーヒーがたくさんあることを。
そうと決まればやるべきことは一つだ。今回訪れた純喫茶モネや、これまでに訪れたお店の中にもコーヒー豆の販売を行っているところがある。行かないわけにはいかない。
夢咲音楽館プライベートカフェ化計画、始動。
『珈琲店から夢は咲く』は隔週または毎週火曜日に更新。次回も神奈川県のカフェを訪れて、1杯のコーヒーから1%のひらめきを得たいと思う。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは、またお会いしましょう。
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