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vol.6 社運をかけた新商品『串わらび』の完成と商品事故。/楽しい職場であるための施策。〜京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。

こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。

今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社が、いかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。

同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。

前回のまでの流れはこちらです▼


2020年12月初旬 初期型の常温『串わらび』完成

約3年に及ぶ研究の末、遂にこの常温『串わらび』が完成しました。

『串わらび』とは、これまではお土産には向かなかった京都の本格わらび餅を、弊社の独自製法によって日持ちする常温品として長く美味しく楽しんでいただけるようにした新感覚のわらび餅。今では宗禅の看板商品のひとつとなっている商品です。

常温品にするにあたって特にハードルが高かったのは、離水を止めることと食感のバランスです。

通常のわらび餅は日が経つと離水し、水分が出てきます。この水分が原因となりカビが生えるのです。そこで離水を止めるために餅米を用い、わらび餅とお餅を掛け合わせました。しかし、餅は日が経つと硬くなり、そのままでは食べることができなくなってしまいます。

そこで、辿り着いたのが酵素を用いること。酵素には餅のデンプンの老化を抑制し、硬化を抑える効果があります。
わらび餅と餅米を合わせることで離水を止めて硬くし、同時に硬くなるわらび餅を酵素でやわらかくモチモチに仕上げるという化学のような製法が完成しました。

さまざまな素材を用いての試行錯誤を重ね、思い入れもひとしお。完成したときの喜びも大きなものでした。

試作中のようす

2020年12月末 商品事故発生

ようやく完成した常温『串わらび』ですが、完成早々に商品事故が発生しました。百貨店でプレゼントしたお客様から「串わらびを入れている袋が膨らんでいた」とクレームが入ります。原因は、暖房で室温が上がり、酵母菌が活性化したためです。結果として、百貨店の自社店舗では販売ができなくなってしまいました。

常温『串わらび』は、1億円の売上が90万円となった経営状態から会社を立て直すための商品と位置付けていたこともあり、昼夜を問わず試作を続けてきた私の秘蔵っ子のような商品。その時、心がポキッと折れる音が聞こえたような気がします。

「もうこれ以上無理だ」

しかし、家族同然の付き合いをしている経営者の仲間たちが私の異変に気づき、年の瀬にも関わらず、励ましに集まってくれたのです。その優しさと想いが嬉しく、また、仲間たちのあたたかさが心強く、人前にも関わらず号泣してしまいました。

素直に気持ちを表現したことで、「まだいける。もう少し頑張ろう!」と前向きな気持ちになれました。

【ここでの学び】
気持ちを素直に表現することで、心は少しすっきりする。もう一度頑張ってみようと気持ちを切り替えることができる。

この商品事故後、より一層安全で美味しい串わらびを目指して日々改良に取り組んでいます。

2021年1月中旬 幹部離脱

売り上げアップを期待していたGo Toトラベルキャンペーンが終わり、新型コロナウイルスの感染者がまたもや急増する事態に。上向きはじめていた売上も、再び急激に落ち込んでいました。

昨年の商品事故が尾をひいて、組織内の雰囲気も悪くなり、気持ちに影を落とします。
「もう、この会社は倒産するのでは……」という働き手の不安が社内に充満し、幹部間の雰囲気もギクシャクしたものになっていました。

さらに、宗禅で一番長く働いてくれていた、当時直営店のSV(スーパーバイザー)から辞表が。「宗禅を超一流にする」と長年一緒に歩んできた幹部のひとりでした。

しかしその頃の私は、彼女が戻ってくると信じて待つ以外に何もできず、ただ自分を責めるばかりでした。

2021年2月2日~14日 初のCAFEでの催事イベントに挑戦

緊急事態宣言発令の最中でしたが、私たちは宗禅初となる百貨店のバレンタインデー商品販売と茶房宗禅Cafeの催事に挑戦しました。当然ながらお客様の来店は見込めません。

しかし、この出店には「苦しい時だからこそ、宗禅は守りに入ることなく新しいことに挑戦する」という働き手へのメッセージを込めていました。また、この催事では数十年ぶりに私自身も百貨店の売場に立ちました。

同業からは社長が百貨店などの催事に立つと「あの会社はあぶない」と風評されることが多々あります。
私自身もどこかで「ここまでグループを大きくした」との虚栄心がありました。

だけど、今は見栄やプライドなどと言っている時ではない。初心に帰ろう。はじめは製造から販売、納品に事務作業まですべて夫婦ふたりでしていたじゃないか!と自身を奮い立たせていました。

そして、開催初日。
何よりうれしいことがあったのです。2週間、音沙汰もなかったSVが店頭に立ってくれていました。私は彼女が接客する姿をみて、店頭にも関わらずまたもや涙が止まらなくなりました。

【ここでの学び】
逃げ場のない、どうしようもできないような壁にぶつかったときは、恥も外聞も捨てて初心に帰るチャンス。

業界内で当たり前となっている通説や風評を恐れず第一線に立ち、その戦う姿をスタッフに見せることで、組織は息を吹き返す。

催事イベントのようす

2021年3月25日 明るい会社職場の認証

催事が終わって少し落ち着いた頃、昨年の幹部合宿で『自分たちが決めたこと』の中で最重要課題としていた『明るく楽しく働ける職場をつくる』の達成に向けて動き出しました。

とはいえ、短時間に作り上げた標語ありきの“明るく楽しい職場”では、幹部にも働き手にも楽しさを感じてもらうことはできないと分かっていました。

それならば、「外部からそのような会社だと認めてもらうのも、ひとつの道筋になるのでは?」「明るいニュースがある方がいい」と考え、『日本一明るい経済新聞』を発行している、明るいシステム倶楽部様が主催する『明るい会社職場AKS0041認証』に挑戦しました。

結果、認証組織♯48として認定され、表彰式には幹部も一緒に参加。全員で表彰台に立ちました。そしてその日は久しぶりにみんなで祝杯をあげました。

この明るいニュースによって、社内の雰囲気が少し柔らかなものになったという実感が何よりの収穫です。

このことで私たちは明るい組織に変革できたと全働き手に発信し、目標を立てて挑戦し続けると必ず成就することを伝えました。

【ここでの学び】
内部からの意識調整が難しい場合は、外部機関に頼り、認めていただくことが起爆剤となります(多少強引ではありますが)。

表彰式

2021年4月25日 京都駅店閉店

催事や表彰といった華やかなことがありつつも、売り上げが上がったわけではないという現実に向き合う日々は続きます。
パンデミックを恨んでも仕方ないと、さまざまな挑戦をしても売上は戻ってこない……。

そんな中、京都駅に出店していたモールが閉店となり、同時に弊社の京都駅店も閉店に追い込まれました。

売り場が減るということは売り上げが減るということ。何より、売り場がなくなればそこで働いてくれていた働き手の雇用をどのようにして守っていけばいいのか……

次回は、2020年度の3社の営業赤字が1億5千万円を越え、すべての会社が累積赤字に転落。日本政策金融公庫の資本性ローンへの挑戦や、クラウドファンディングなどについて記します。


本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。
またお付き合いいただけますと幸いです。

ではまた。
山本宗禅

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