vol.4 『高校球児応援プロジェクト』と社長個人をメディアに売り込み。〜京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。
こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。
今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社がいかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。
同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。
前回のまでの流れはこちらです▼
2020年6月26日 『高校球児応援プロジェクト』スタート
パンデミックにより中止となった選抜高等学校野球大会(春の甲子園)に出場予定であった高校球児へ、高校野球のシーズンにしか買えないお菓子を届ける『高校球児応援プロジェクト』を開始しました(夏は『2020年甲子園高校野球交流試合』として無観客にて開催されました)。
中止のニュースを耳にした時、私も2人の子どもを持つ親として、幼い頃から純粋に甲子園に出場する将来を夢見て、一生懸命練習に取組んできた球児のことを考えると胸が痛みました。無論、日本高校野球連盟の決定に異論があるわけではありませんし、感染の心配が大きい以上、思い出のために開催すればいいというわけにもいきません。
「お菓子屋の私に、何かできることはないか?」
また、お菓子屋らしい視点で考えると──高校野球商品を製造するライセンスを持った菓子メーカーでは、毎年、甲子園の季節限定の商品を発売します。しかし、2020年は春夏ともに甲子園が中止になったので、それらの商品が発売されることはありません。
こうした、今まで目指してきた甲子園が中止となり落胆する高校球児を応援したいという気持ちと、甲子園限定商品を販売する菓子メーカーを救いたいという2つの想いが重なり、もしかしたら甲子園で買えたかもしれない高校野球限定商品を、春のセンバツに出場が決まっていた野球部に届ける『高校球児応援プロジェクト』を行う決意をしました。
このプロジェクトのスキームは、以下のようなものです。
製造メーカー3社の商品を弊社で購入
1の商品を一般のお客様にお買い上げいただく
2の売上により各高校に3セットずつ、応援メッセージと共に商品をお届けする
弊社は高校野球関連商品を製造するライセンス契約をしておらず、販売はできませんので、この応援プロジェクト限定で野球ボールをイメージしたお菓子『純米ぼーる』をつくり、3社のお菓子に加えてプレゼントすることにしました。
弊社のお菓子はプレゼントですから、この応援セットは売るたびに赤字となるのですが、応援(お買い上げ)くださった方へ私からの感謝の気持ちをかたちにしたかったのです。同時に、応援セットを買わないと食べることができないプレミアム感と限定感を出す狙いもありました。
春のセンバツは中止に、夏の甲子園は無観客開催となったので、甲子園限定商品が製造販売されることはありません。そのため、このプロジェクトのためだけに甲子園限定の商品を販売する菓子メーカーに製造してもらう交渉からスタートしました。
生産ロットに届かずも、プロジェクト完遂
結果、一般のお客様からのご注文は各メーカーから最初に伺っていた最低ロットには届きませんでしたが、みなさまからのご支援を無駄にするのもしのびなく。
メーカー3社にお願いして、注文数を減らして製造していただけることになりました。
また、大阪道頓堀のお土産店「いちびり庵」様が150箱を購入くださり、弊社も自費で312箱を購入。さまざまな困難もありましたが、プロジェクトを完遂。そして卒業アルバム制作会社の「夢ふぉと」様がオリジナル応援メッセージを文集にしてくださり、296名様の熱い応援とお菓子を32校の球児に届けることができたのです。
『高校球児応援プロジェクト』を終えて変わったこと
多くの方々のご協力もあり、おかげさまでプロジェクトを完遂し、ほっとひと息ついた頃、驚くべきことが起きました。なんと、応援セットをお届けした高校からお礼として直筆のお手紙やサイン、メッセージが入ったボールやタオル、さらには地元の銘菓が次々と弊社に届いたのです。
まさか、こんなことになるなんて!あまりに嬉しくて胸が熱くなり、働き手みんなで涙を流しました。
この頃から、社内の雰囲気が少し柔らかな空気に変わったのを今も覚えています。
そして、この応援プロジェクトで一番救われたのは、パンデミックからの経営困難で疲れきっていた私の心であることにも気づいていました。
不況時、社内のムードを少しでも明るくするための施作
『製造メーカー救援プロジェクト』や『高校球児応援プロジェクト』によって、社内は少しずつではあるけれど、あたたかな雰囲気に変わってきました。しかし、売上はまだほとんど戻っていない苦しい状況です。
『製造メーカー救援プロジェクト』については、vol.2『菓子メーカー救援プロジェクト』で乗り切ったフードロスの危機。 /京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』をご覧ください。
私は『すべての働き手を守りきる。経営状況を理由とした解雇を出さない』と朝礼や社内イントラを使って言い続けていました。
しかし、働き手の心中は「本当にこの会社は大丈夫なのか?」「全く工場も稼働していない。倒産するのでは?」といった不安でいっぱいだったことでしょう。事実、当時の社内は重い空気が漂っていました。
そして、私はその空気感を打破する方法を探していました。
前回の記事でも記したように、『部下に任せている』つもりで放りっぱなしにしていた経営方法の反省と放任のお詫びをしたのもこの頃でした。
「どうすれば、会社を、私を、信じてもらえるだろうか?」
「何か動かなければ!」
そこでまず講じたのは、自分自身を世に売り込むことでした。
お陰様で弊社の商品や店舗は、多数のマスコミに取り上げていただいています。それらとは別に社長紹介のようなスタイルでマスコミに登場することが、信頼のきっかけになるのではないか?と考えたからです。
すぐに自分のこれまでの人生を文章にまとめ、知人に紹介いただいた新聞記者に売り込みをしました。
正直なところ、自分の半生をマスコミに出すことは、私自身かなり抵抗がありました。しかし、当時は倒産するかしないか、生き残れるかどうかの瀬戸際です。そんな甘いことを言っている場合ではありません。
当時の私は、どんな手を使っても、少しでも明るい空気を社内に送り込みたかったのです。
そして、『日刊ゲンダイ』にて2週にわたって、私の歩んできた人生を取り上げていただきました。
さらにその記事は、前編・後編としてYahoo!ニュースにも取り上げられることになります。
私の紹介記事は、働き手(スタッフ)だけでなく、取引先や金融機関の方々にまで広く届く話題となりました。結果として、弊社への対応が悪くなっていた金融機関への信頼回復に繋がるという嬉しい誤算もあり、経営状況の好転にも影響を及ぼすこととなったのです。
次回のnoteでは、グループ3社をワンチームにするため、見よう見まねの戦略会議で、KPI(重要目標達成指標)や行動指針などを作り上げた工程について書き記します。
最後に少しだけお知らせ!
4月13日、宗禅のカフェ『京町家茶房 宗禅』をリニューアルオープンいたしました
『体験できるカフェ』という新たなコンセプトを掲げ、各テーブルでお客様に焼き上げていただくメニューをご用意しました。
体験できるメニューのほか、ヴィーガン対応メニュー、従来からの人気メニューも再構築し、みなさまのご来店をお待ちしています。
築130年の歴史を持つ京町家ならではの空間で、ゆっくりと流れる時間をお過ごしください。
本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。
ゆっくり更新にはなりますが、またお付き合いいただけますと幸いです。
ではまた。
山本宗禅
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