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vol.14 経営困難からのV字回復が成功した要因まとめ。/京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。

こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。

今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』
コロナ禍の経営困難を京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社が、いかにして乗り越えてきたかを振り返るシリーズも、今回でラストとなります。

ストーリーとしては前回で完結しており、今回の記事では、V字回復を遂げた要因であろう事柄を整理していきます。

コロナ禍というある意味では特殊な環境下の事例ではありますが、同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。

前回のまでの流れはこちらです▼


コロナ禍の経営困難からV字回復を果たした要因を分析

新型コロナウイルスの影響により経営に翳りが見えはじめた2020年から、実にさまざまな困難がありました。都度、解決の策を講じ、ようやくなんとか回復を遂げたと実感できるようになるまでの時間は、本当に長いものでした。

今になって思うのは、V字回復を果たしたと感じられるまでの道のりは、悩みと苦しみの道であり、同時に、グループ3社の働き手と私自身の成長の道であったということです。

京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社が、コロナ禍の経営困難からV字回復を遂げるまでを記したnote全13記事を振り返りながら、その要因を整理していきます。

① 商品供給を止めない

パンデミックが発生して以降、何度も発動された緊急事態宣言や蔓延防止措置などにより、土産物を扱う菓子メーカーは、商品を製造しては販売する場所がなくなる、また返品で戻ってくるという厳しい状況を繰り返しました。

そのため多くの菓子メーカーは駅や空港、サービスエリア、土産店といった販売店への商品の供給量を止めたり、品数を減らすなど縮小方向へシフトせざるを得ない状況です。

そうなると販売店では並べる商品が減り、困ることになります。もちろん、菓子メーカーも販売が止まると困ります。

そこで、弊社ではまずはお客様(この場合は販売店)の困りごとを解決し、喜んでいただくことを優先しました。具体的には、コロナ禍の厳しい状況の中でも廃棄ロスを顧みず、販売店へ欠品することなく商品供給を行ったのです。

これが思わぬ誤算を生みました。他メーカーから供給されない商品が多く、その棚を埋めるために弊社の商品を置いていただけました。

当然ながら、店頭の販売棚は有限です。通常であれば新規の商品を店頭に置いていただく際には、従来並べられていた他社商品と比較して「入れ替える価値がある」と判断される必要があります。

しかし弊社はお客様(販売店)の困りごとである「陳列する商品が足らない」を解決することにより、コロナ禍で販売スペースを増やすことに成功したというわけです。

②他社が守りに入る時こそ攻める 

3年も続くコロナ禍の危機により、弊社を含め多くの菓子メーカーは懐と心を痛めました。特に、駅や観光地に出店するメーカーを苦しめたのは、店舗を維持するための賃料です。

そんな中、私は常に「どうすればコロナのおかげだと言えるようになるか」を考え続けていました。

2022年に入ると京都観光の玄関口となるJR京都駅中の販売店に空き店舗が出はじめます。しかし、駅中は家賃が高く、出店されるメーカーがなかなか決まりません。

そこで弊社では、自社内クラウドファンディング(前受け通販)により、JR京都駅ポルタへの出店を成功させました。

この新店舗が脚光を浴び、弊社に他の店舗への出店依頼が舞い込んできました。

「このパンデミックはいつ収束するのだろう。もし出店した後もこの状況が長く続き、再び緊急事態宣言などが発令されれば、家賃が負担となり倒産に追い込まれる可能性がある。今は資金が乏しい。どうすればいいのか?」……悩みに悩みました。

しかし、2022年の5月に京都駅中央改札前の京小町店への出店を決意。
「他の人が守りに入る時こそ攻める。逆張りをする。コロナ禍の危機をプラスに変え、逆転できるチャンスはこれしかない」という考えに基づく決定でした。

また、2022年秋には八条口に出店し、京都駅に3店舗目を構えることができました。

そもそも平常時のJR京都駅への出店は大変人気で、他社が退店しなければ出店する余地はありません。しかし、パンデミックの環境下という特殊な状態によって、空き店舗が発生したからこそ弊社の出店がかなったのです。

店舗を運営される企業も、なかなか出店メーカーが決まらず、空き店舗が増えて困っておられましたから、弊社が出店したことを喜んでくださいました。

これら全ての出来事は受け取り方次第で、良くも悪くも、プラスにもマイナスにも変えることができます。全ては自分次第です。嫌な出来事、辛い出来事がある時こそ、目の前の事実をポジティブに受け止める方法を見つけることが大切です。

③経営困難な時でも働き手を守ると決める

コロナ禍で職人が退職したり、パートさんやアルバイトさんを解雇された菓子メーカーが多くありました。相当に苦しい状況が続いていましたから、それもまたひとつの経営判断です。

私は当初より「働き手を全員守る。みんなでひとつとなってコロナ禍の危機を乗り越えよう」と社内で言い続けてきました。

また、守りに入る企業が多い中、1億円を越える機械投資を行いました。

2022年11月に日本全国旅行支援がはじまると、京都や大阪では一気に観光客が訪れます。しかし、これまで製造を止めていたメーカーや、職人や製造スタッフが退職したメーカーは、商品の生産が間に合わず欠品で販売店に迷惑をかけることになってしまいます。

しかし、弊社には守ってきた働き手がいます。さらに、倒産した仲間の会社から雇い入れた働き手も入れ、製造人員は増えていました。

その上、1億円の投資により導入した最新鋭の袋詰めや包装機械が稼働し、商品を切らすことはほとんどありませんでした。

こうして、人流が戻ると他社が軒並み検品を起こす中、徹底的に欠品ロスを無くしたことが、さらなる売上アップに繋がったのです。

④社外との絆を大切にする

パンデミックの影響で商品が売れないため、他社メーカーの多くは販売店への営業にも行かなくなっていました。

しかし弊社では「こんな時こそ、販売店様に顔を出し、困りごとがあれば、お役に立てることがあれば積極的に動こう」と営業に回っていました。
販売店でも困りごとが多い時期だったため、ともに対策を講じ、販売店との絆が生まれました。

これは「①商品供給を止めない」で記した「商品が納品されずに空いてしまった販売棚を埋める」にも繋がります。

人々が動き出し、観光客が戻ってきてから営業に動いても、それほど都合よく成果は出ず、「困っているときに商品を納品せずに、今さら営業に来ても遅い」などと言われてしまうのです。

その頃、弊社はすでに多くの販売棚をいただいていました。
この時、改めて「一度失った売場、そして信頼は簡単に戻すことはできない」を学ぶことになりました。

⑤心理的安全性のある職場に変革した

この3年間、幹部みんなで組織の問題を洗い出し、解決してきました。

幹部みんなで予算を立て、それぞれが売り上げ目標などのゴールを決めて、毎週の進捗管理で共有していく。これを繰り返すことで、数字に強い組織へ変革したことは大きな成果です。

また、このプロセスをともに歩むことで、互いに助け合い、励まし合える組織に変わっていきました。

向かうべきひとつの目標に向かって、みんなで力を合わせて販売に集中することができたのも成功の要因と言えるでしょう。つまりコロナのおかげで心理的安全性のある組織に変革できたのです。

これらの成果により、卸販売店舗数もコロナ禍以前と比較して大幅に拡大。その数は、長寿堂恵佳は120店舗から174店舗、京西陣菓匠 宗禅は104店舗から470店舗となりました。

いかに未熟な組織だったかは、この辺りの記事に記しています。
vol.3 業務の見直しと働き手へのお詫び、社長としての覚悟。
vol.5 見よう見まねでも戦略を練る。幹部合宿でグループ3社をワンチームに。

⑥トップが持つべき「諦めないチカラ」

様々な施策や努力により、弊社はV字回復を遂げることができましたが、同じように10年間一緒にやってきたメーカーのいくつかは倒産しました。

その要因のひとつに、社長の心が折れたこともあるのではないかと考えています。トップが「もうダメだ……」と諦めた時点で、倒産の色が濃くなるという考察です。

また倒産した社長は常に「コロナのせい」にして動くことを止めました。しかし弊社ではどうすれば「コロナのおかげ」と言えるようにできるかを考え行動し続けました。

トップ(社長)は常にしっかり明確な目標を掲げ、決して諦めないこと。
また、前向きな心根を持ち、経営に邁進することが大切だと痛感しました。

⑦誰かのために時と手間を使う

私は、自社が瀕死の状態となり倒産危機に陥っている中、起業家団体のトップや立ち上げ理事、また、学生や起業家へのアクセラレータープログラムのモデレーターなど、「誰かのお役に立てそうなこと」に多くの時間を注ぎました。

時には自分に負けそうになって「今こんなことをしている場合じゃないんやけどなぁ……」と思うこともしばしば。

それでも振り返れば、自分の会社にいない時間が多かったからこそ、自分の会社を俯瞰してみることができた。

また、社長(私)がほとんど会社にいないからこそ、幹部が育ち、組織化がスムーズに進んだ。

外に出るからこそ、多くの人々に出会うことができ、多くの学びをいただくことができた。

そして、最も大きなメリットは、他者のために飛び回っていると、自分の辛いこと、苦しいことから少しはなれることができる。

これは現実逃避と呼ばれるものかもしれません。だけど、自社にずっと引きこもっていたならば、不安でおかしくなってしまったのではないか、会社も倒産していたのではないか、という想像は難しくありません。

さまざまなプロジェクト
vol.2 菓子メーカー救援プロジェクト
vol.4 高校球児応援プロジェクト
vol.7 地域活性化のためのお菓子開発

弊社の経営理念『人様に喜んでいただく』

この根本にあるのは、私の祖母からの教えです。
祖母はいつも「困っている人を救けたら、必ず自分がたすかること(よくなること)に繋がる。“情けは人の為ならず”」と、まだ小さな私に言い聞かせていました。

今思うと、このコロナ禍の経営困難からの脱却、そして連鎖倒産危機からのV字回復は、祖母の教えを経営理念として変換し、実践し続けた結果だと痛感しています。

コロナのおかげで組織は大きく変わり、京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社は筋肉質になりました。

不謹慎な表現かもしれませんが、この危機がなければ、組織のあり方や体制を見直す機会を得られないまま、数年後には倒産していたんじゃないかとすら思えるのです。

どんなことが起こったとしても、目の前にある事実は良い方(プラス)にも悪い方(マイナス)にも受け取ることができます。それは、自分自身でどのような事実にするかを決められるということです。

決定の連続が人生であるならば、私たちは人生(未来)を変えることはできなくても、創ることはできると考えます。逆に過去は自分の思うように、良いように変えることができると考えています。全ての過去を全て良いように変換できると人生はHappyでしかありません。

これからもできる限りの現実を明るく、ポジティブなものとして受け取り、生きていきたいと思うのです。


京西陣菓匠 宗禅 
店主 山本宗禅


最後までお読みいただき、本当に有難うございました。

『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。〜泣き虫社長の大奮闘記〜』はこれで全てとなります。
 私自身が悩み苦しみながら過ごした経験が、誰かのお役に立てば幸いです。

手段や思考方法に特化するため、今回のシリーズでは端折ることにした「宗禅が自社クラファンをするときにした工夫」や「売り場の種類を増やした際にしたこと」などについては、今後、別記事として少しずつ書き進めて参ります。

引き続き、お付き合いいただけますと幸いです。

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