建築における「代理表現」という重要な概念について

建築の様式を語る上で、歴史を知る上で、重要な概念のひとつである「代理表現」について今日は少しだけ触れてみようと思う。

これは、意識しなくても建築を学んで行くとある程度、身につくことでもある。設計するには必ずそれを踏まえている。それは無意識だとしても、歴史を知る上ではその代理表現は意識的に見ないといけないので歴史を語ったり、歴史的建造物を見る上では必須の概念である。

ドイツの著名な建築史家フリッツ・バウムガルトによる説明を引用してみると、

いずれにせよ、建築の様式学や歴史を知るには代理表現(レプレゼンテーション*)の概念を欠かすわけにはゆかない。なぜなら、保存されてきているか、あるいは復元解明することの可能な、全ての注目に値する建築は、そもそもその誕生の時以来、代理表現的である、と言う属性を備えているからである。
* ここでは、あるものの内容、属性、地位などを、別の手段で外面的に視覚表現すること、といった意味で用いられている。
建築芸術の意味と本質 より フリッツ・バウムガルト著、杉本俊多訳『西洋建築様式史(上)』SD選書、鹿島出版会、p10

住居群からは区別される建築群:社会的、国家的、宗教的なもの=つまり公共の建築物には、それらに対する共同意識や共通の解釈が反映されると言うことである。

誤解を恐れずかなりざっくり言うと、公共の建築物が立つ時、「それが何を表しているか」なのである。

どのようにそれが理解されているか。宗教建築なら神がどのように位置づけされているか、建築物の対象(目的)となるものがどう扱われているか。何を重要視されているのか。何が象徴されているか。


また、バウムガルトはこの後続けて重要なことを説くので、こちらも引用してみるとことにする。

代理表現的な建物にはほとんど常に、彫刻や絵画が、「美的趣味」による添付物としてではなく、それぞれの意味付与における本質的な構成要素として活用されたのであり、したがって、人間の秩序意志を表すことのできる表現形式を造形芸術の領域内で総括する、総合芸術作品が誕生していたのだ、と言う点である。
同著p11

かなり抽象的な書き方だが、理解できるだろうか。

基本的にはこのような概念が西洋建築様式史の核心をなすわけだが、それは19世紀から新たな展開を迎えることになる。

また、その「建築芸術」の起源は遡ればエジプト、古代オリエント、クレターミケーネから端を発しているのであり、通常その辺りから見て行くのが通例となっている。


とりあえずの紹介にとどまったが、また時間あれば少し掘り下げて見たいとは思う。



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